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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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15 魔境の刺客(2)

 リーユエンが、ウラナによって磨き立てられていた頃、巽陰大公カーリヤの屋敷には、震家工作部隊の元隊長レムジンと、捕縛を免れ市中に潜伏中の、震家工作部隊の生き残りが集まっていた。

 巽陰大公は、庭先で跪拝する彼らを睥睨し、厳しい表情で、

「お前たち、今日は復位の式典だ。ドルーアが現れ次第、捕縛するのだ。明妃には、決して近寄らせるな」と、命じ、「お前たちが甲羅破りの刑に処されるか否かは、今日の働きにかかっているのだ。心して働け」と、続けた。

 最前列で跪いていたレムジンが立ち上がり、巽陰大公へ

「ドルーアの作る毒薬は、強力で危険です。手に負えない場合は、すぐさま殺してもよろしいですか」と、尋ねた。

 巽陰大公は眉をしかめ、

「やむを得ない場合は、そうせよ。しかし、ドルーアは兌陰大公の指揮のもと、要人暗殺に関わっているので、取り調べる必要がある。できるだけ、生捕りにせよ」と、命じた。


 ドルーアの隠れ家に、再び男がやって来た。床板をめくり階段を下りた男は、ドルーアへ女官服を渡し、

「それに着替えて、俺についてこい。宮殿の内官をひとり買収して、奥庭から入り込めるようにしておいた。案内する」と言った。

 ドルーアは、女官服に着替え、凡人の宮殿付きの女官へ変装した。男は、彼女が着替えたのを確認すると、

「その裾の長い裙だと、梯子階段が上がりにくいだろう、先にゆっくり上がれ」と、階段を先に上がらせた。

 ドルーアが、階段を上がり始めると、男は背中側に忍ばせていた短刀を引き抜き、玄武の弱点である盆の窪へ一気に突き立てた。その刃は、盆の窪を突き抜け、反対側まで突き抜けた。ドルーアは、悲鳴ひとつあげず、階段からずり落ちて、息絶えた。男は、階段にもたれかかって倒れたドルーアに近寄り、絶命していることを確かめた。

「悪く思うな。おまえに生きていられたら、震家と兌家で行った謀略、謀殺がすべて明るみになってしまうし、俺がやった事も全部バレてしまう。そんな事になったら、俺は処罰を免れない。あの法座主は、たとえ明妃が取りなそうとしたって、許すはずがないんだ」

 糸のように細い目を、手を触れて閉じさせた、その男は、震家工作部隊長のレムジンだった。レムジンは、そのまま階段を上がり、部屋を出た。


 レムジンが部屋を出てしばらく経つと、突如、ドルーアの口がパカッと開いた。目もカッと見開かれ、緑色がかった浅黒い肌が、細かくひび割れ、身体中が煮えたぎる溶岩のように熱を帯び、ドロドロに溶融し始めた。

 ドルーアは、確かに一旦絶命したのだ。生命活動はすべて停止し、生の状態へ戻ることは二度となかった。ところが、その意識は、一千年以上前から思い焦がれる、自身の思いが受け入れてもらえなかったドルチェンへの執着と、そのドルチェンの寵愛を独占する明妃への深い恨みにあまりにも強く囚われ、肉体から魂が離れなかったのだ。

 ドルーアは、齢千数百年の、法力を蓄えた玄武だった。死によって、彼女の意識は薄れ、自我は消え失せようとしていたにも関わらず、ただ恨みと執着と瞋恚(しんに)だけが残され、煮詰まっていき結晶化した。それが死んだドルーアの意識に成り変わり、玄武の原身に蓄えられた法力を歪め、変質させた。

 やがて、人型の体の中から、醜怪な魔物が現れた。分厚い甲羅の上には無数の亀裂が走り、そこには、無数の腐肉を漁る蟲が蠢き、甲羅から伸びる首と手足は、不気味な燐光に縁取られ、見開かれた目は、腐血のように赤黒く鈍い光を放った。そして蛇のように長い首を伸ばすと、床に転がった毒薬入りの瓶を嘴型の口で咥え、何ということだっ、解毒薬のない毒薬を、ガラスを砕き、すべて飲み込んでしまったのだ。ドリーアは、再び口を開け、赤黒く腐臭のする霧を吐き出した。それは、周囲のものをすべてを腐食し、ドロドロに溶かした。

「レムジン、よくも裏切ったな。私は死んでも復讐を果たすのだ。おまえも、明妃と一緒に血祭りにあげてやる」

 息絶えたドルーアは、深い恨み、執着、瞋恚によって法力が妖力へと変わり、ついに、魔境へ堕ちた。首をのけ反らせたドルーアの全身から、黒い汚泥のような血が噴き上がった。体はみるみる縮まり、凡人の姿、さきほどの女官の姿となった。そして、ドルーアは、何事もなかったかのように階段を上がり、外へ出た。

 ドルーアはそのまま徒歩で宮殿までやって来た。悠然と正門から中へ入ろうとした彼女へ、玄武軍の門衛が

「そこの女、どこへ行く」と、誰何してきた。ドルーアは、その門衛に視線を向け、その瞬間、目が赤く光った。妖力を飛ばして、門衛の意識を奪ったのだ。凍りつき動きを止めた門衛の横を、ドルーアは通過した。

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