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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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13 香車ナイナイ(1)

「ナイナイっ」

 リーユエンは立ち上がり、叫んだ。取り払われたヴェールの下から、波打つ漆黒の髪を高髷に結い上げ、翡翠色の釣り上がった猫目、つんと上向いた小さな鼻に、左側に小さなホクロのある紅い唇、年齢不詳の妖艶な美女、惜春楼の香車ナイナイが現れた。ナイナイは、猫目を細め、リーユエンへ微笑みかけると

「久しぶりだね、リーユエン、随分女っぷりが上がったね。そうそう、ゲオルギリーから、七万デナリウスも取り立ててくれて、ありがとう。私は、せいぜい五万デナリウス取り立てれば上出来だと思っていたのに、さすがだよ」と、話しかけ、リーユエンの真正面に腰掛け、その隣には、一緒に入って来た巽陰大公が腰掛けた。婀娜っぽい妖女と尊大酷薄な面構えの巽陰大公、二人の美女?が揃って、リーユエンと対面して腰掛けた様子は、恐ろしいほどの迫力があった。さながら、(さそり)(まむし)の入った壺に投げ込まれたようで、ダルディンは、一刻も早く部屋から出ていきたくなった。けれど、巽陰大公は、

「ダルディン、おまえも、後学のために、ナイナイのお話は、よく聞いておきなさい」と、言われ、逃げ出せなくなった。

 侍女たちがお茶を給仕し終え、部屋から出ていくと、すでに妓女を引退し、今は妓楼を管理する香車の立場であるナイナイは、地味な色目の仕立てのよい着物の胸元の、派手に飾り立てた瓔珞を指先でいじりながら、リーユエンへ

「あんた、最近、また新しい旦那ができたそうだね」と、言い出した。それを聞いたダルディンは、危うくお茶を吹き出しそうになった。リーユエンは困惑顔で、

「旦那って・・・・」と言ったきり、うつむき黙りこんだ。

 ナイナイは、身を乗り出して、リーユエンの膝を軽くたたき

「責めてるんじゃないよ。あんたは遣り手だって誉めているんだよ」と、言った。隣では、巽陰大公も大きくうなずき、

「ダルディンから事情は聞いた。記憶がなくなっている状態で、関係してしまったんだろう。それは仕方ないよ」と言った。

 リーユエンは頬をほんのり赤らめ、ふたりから視線を逸らし、

「ええ、気がついたときには、高祖さまは、私のことをもう妻扱いなさっておられて」と、恥ずかしそうにささやいた。ナイナイは笑みを深め、

「あんただって、あの男のことは満更でもないんだろう」と、遠慮なくずけずけ言った。リーユエンは、目元を潤ませ、

「満更だなんて・・・そんな・・・私には猊下がいらっしゃるのにー」と、ささやいた。けれどナイナイは、容赦なく

「あの男と記憶が戻ってからも関係を続けたんだろう。それなら、満更でもないってことだろう、違うのかい?」と、さらに追求してきた。

 ダルディンは困り切っているリーユエンを助けてやりたいけれど、そんな事をしたら矛先が自分にも向きかねず、恐ろしくてできなかった。すると、巽陰大公がリーユエンへ、

「及ばずながら、私の力で結界を施しておいたから、短時間なら、大帝の目を眩ませておける。言いたいことがあるのなら、早く本音を言っておしまい」と、うながした。

 リーユエンは目を伏せたまま、

「高祖さまは、換骨変易法を用いる際に、私の体のどこかに紋を焼き付けたそうなのですが、その影響なのか、あの方が法力を送ってこられると、体中がおかしくなって、あの方の求めを拒むことがどうしてもできなくなってしまって・・・」と、ささやいた。

 それを聞いた巽陰大公とナイナイは顔を見合わせ、大きくうなずいた。ナイナイは、

「やっぱりそうだ。あいつ、急所へ刻んだんだよ、そんな事をしたら、リーユエンなんてひとたまりもないよ。私は、この子に、殿方を楽しませる術は色々教えてやったけれど、女の急所のことなんて、ほとんど教えていないからね」と、言った。

 リーユエンは顔を上げ、憂鬱そうな表情で、「女の急所?」と、不思議そうにつぶやいた。

 ナイナイは、お茶を飲み干すと、

「玄武が凡人を縛り付けるときは色々な方法があるんだよ。その高祖とかいう旦那も、相当なワルだね。おまえを絶対逃さない気だよ。さあて、おもしろい事になってきたね」と、ニヤリと凄みのある笑みを浮かべた。

 巽陰大公もお茶菓子をひとつつまみ、もうひとつをお皿にとり、リーユエンへ

「そんな陰気な顔をしていないで、これを食べてごらん、美味しいよ」と言って勧め、

「これは、ドルチェンには解決できないね。だから、私たちが乗り出して来たんだ。安心おし、ドルチェンはおまえを見捨てたりなんか絶対しない。いや、逆に、見捨てられやしないかとビクビクしてるのが、本心だよ」と言い出した。リーユエンはお皿を受け取りながら、目を見開き、「見捨てるなんて、私がそんな事をするなんて、ありえません」と言った。

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