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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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11 波乱の帰還(6)

 闇の中を進みながら、高祖がドルチェンに

「玄武の国は、いまだに瑜伽業を行っているそうだな」と、話しかけた。

「そうだ。魔導士へ太極石を供給せねばならんし、この北荒の気候の中では、太極石の熱源がなければ、玄武はともかく、凡人の生活は立ちいかぬ」と、ドルチェンが答えた。すると、高祖が、

「東海では、瑜伽業は四千年余前から行っていない」と、言ったので、ドルチェンは驚き、

「瑜伽業をまったく行っておらぬのか?それで、民の生活は立ちゆくのか?」と、問うた。

 高祖は暗闇の中で、笑いをにじませた声で、

「瑜伽業など行なわずとも、常春の国の民は、特に不自由はしておらぬ。魔石を適当に使って、それなりに生活しておる。もちろん、魔導士はもういなくなってしまったし、魔導の技もほとんどが絶えて久しいが、それで困ったという声もない。今では、魔導の技を学ぼうという者もいない。日々の生活を送るのに、魔導の技などあってもなくても変わりはないのだ。法座主よ、そなた、リーユエンを明妃にするまで、ひとりで瑜伽業を行ったそうだな」

「この者以外、誰も明妃位につけたくなかったのだ」ドルチェンは無愛想に言った。それをおもしろがり、高祖は、さらに質問した。

「瑜伽業は、陰陽の役目を分けて行うものだ。それを一人で行い続けて、よく法力が尽きなかったものだ。だが、質の良い石はできなかったであろう?」

「必要最小限の石を作り続けたのだ」

「まあ、太極石の質など、陰極を務める者次第で、変化するものだ。実際、瑜伽業は、陰極の役目が過酷すぎるのだ。だから、蜃市では思い切って瑜伽業をやめたのだ。大切に育てられた玄武の姫に、瑜伽業の陰極の役目を務められる者が見当たらなくなったし、親もそれを望まなくなったのだ。お陰で、そのような荒業をする必要がなくなり、私の法力は貯まる一方だった。このたびは、リーユエンの体を換骨変易法で作り替えるために、三千年分ほど使い切ったが、法力を大量に使う機会は、青玄武にはほとんどなくなった。いずれ、法力も弱まり、ただの青亀になってしまうかもしれない」

 ドルチェンは、話を聞き終えると、

「凡人のリーユエンのために法力を三千年分も差し出したのか」と、畏怖さえにじませて尋ねた。高祖は、

「ああ、差し出したとも、畳地連結二点法をたったひとりでしてのけた魔導士に敬意を表したのだ。それに、胎包を開けた時に現れたあの美しさと麗しさ、三千年分差し出しても惜しいとは思わない」と、恍惚とした口調で言った。ドルチェンは、内心、まずい、非常にまずい、高祖は、リーユエンにすっかり入れ込んでしまっている、千年前の自分と一緒ではないか、と、思った。

「高祖、リーユエンは明妃であり、私の配偶なのだ。あなたの妻とするわけにはー」と、話しかけたドルチェンの言葉を遮り、高祖は、

「リーユエンは、私を受け入れた。正気に戻ったあとも私を拒まなかった。私とは深い契りを交わした間柄だ、私は妻にしたいし、添い遂げたいのだ。本気なのだ」と、真剣に訴えた。

(リーユエンめ、またやらかしおったのか。どうして、いつも、いつも、男を本気にさせてしまうのだ。一体、この決着をどうつければよいのだ)

 ドルチェンは、両手が空いていたら頭を抱えこみたいところであったが、リーユエンを抱き抱えているためそれもできなかった。抱き抱えたリーユエンはさっきから大人しく眠っているようだった。たとえ、面倒事を持ち込んできたにしろ、帰ってきてくれたこと自体は、大層嬉しく、じわじわと込み上がる喜びを噛みしめずにはいられなかった。今すぐにでも、二人きりになりたくてたまらなかったが、その前に高祖の問題を解決するため、金杖王国に行ったあと、一体何が起きたのかを調べる必要があった。

上へ上がってくるに連れ、周囲は明るくなった。そして、洞窟の入り口の一つに近づき、外の曇り空が見えた。すると、突然リーユエンが目を開け、ドルチェンヘ

「ここで下ろしてください」と、声をかけてきた。言われるままドルチェンが彼女をおろすと、リーユエンは揖礼し、「それでは、私はここで一旦失礼させていただきます。高祖さまの御休み所のお世話をお願いいたします」と、言い出した。てっきり離宮へ帰るものと思っていたドルチェンは、

「リーユエン、離宮へー」と、言いかけると、彼女は首をふり、

「明妃位返上文書が公になりましたから、私は現在無位無官の凡人でございます。離宮へは入れません。ここで失礼いたします」と、いうや、洞窟の入り口へ駆け出し、そこから飛び降り、六尺棒を現出させてその上に立つと、「後は、乾陽大公殿下からお聞きください。殿下を叱らないでくださいね」と、言い置き飛んでいってしまった。 

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