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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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10 覚醒(2)

 アスラは、リーユエンを見上げ、

「リーユエン、我のことがわからないのか」と、悲しげに訴えた。

 リーユエンは、椅子に座ったまま、膝に頭を擦り付けてくるアスラを撫でてやりながら、

「ごめんなさい・・・あなたの事は、たぶん知っていると思う。でも、思い出せない」と、ささやいた。アスラは、

「リーユエン、早く思い出して、生気をくれないと、我はもう動けないよ」と、訴えた。

 リーユエンは、ふいに身を屈め、アスラへ顔を近づけると、その口に軽く口づけした。一瞬、アスラの体全体が強い光を帯び発光した。

「リーユエン、ありがとう、、もう、大丈夫だ」と、アスラは人形となって立ち上がった。その時、庭を横断してデミトリーがやって来た。日差しを受け、黄金の巻毛は燃えるような輝きを放った。

「リーユエンッ」

 デミトリーは叫び、人目も憚らず駆け寄ると、彼女へ抱きついた。高祖の顔に怒りが現れ、目の前の茶碗が砕けた。けれどデミトリーは、そんな事などお構いなしで、

「リーユエン、リーユエンッ、会いたかった。ずっと心配していたんだ。もう、王太子になれ、なんて言わないから、もう苦しまなくていいから」と、叫び続けた。

 ダルディンは、デミトリーを見て、(確か、リーユエンは、デミトリーを張り手一発かまして気絶させてやったとか、話していたぞ。それでも懲りないなんて、やはり、あの度厚かましいゲオルギリーの倅だけのことはあるな)と、呆れた。ところが、次の瞬間、(えっ、リーユエンが反応している)と、驚愕した。

 しがみついてきたデミトリーへ、リーユエンは両腕を背中まで回し、彼の胸に頬を寄せたのだ。それを目にした高祖は、立ち上がり、恐ろしい形相で、

「私の妻に手を出すなっ」と怒鳴り、右手を振り上げた。ダルディンは法力で撃たれると思い、それを止めようと動きかけたが、それより早くリーユエンがデミトリーを突き飛ばし、高祖の腕につかまり、

 「やめてっ、この人を撃たないでっ、私が罰を受けますから、この人は許してっ」と、涙声で叫んだ。

「・・・・・この凡人のことを覚えているのか?」

 高祖は、振り上げた手を止めたまま尋ねた。リーユエンは、首をふり、高祖へ取りすがりうなだれたまま

「いいえ、わかりません。でも、この人は、私にとって大切な人、私の宝物・・・」と、ささやいた。

 高祖は瞑目し、振り上げた腕をゆっくり下げた。リーユエンの言葉を聞いたデミトリーは、背中側から彼女を抱きしめ「リーユエン、私の大切な人」と、ささやき返した。

 ダルディンには、デミトリーの体から黄金のオーラが溢れ、それがリーユエンを包み込むのが見えた。同じようにその光景を見た高祖は、

「陽気を受け取った相手か・・・厄介な奴が現れたな」と、つぶやいた。

 高祖の関心をデミトリーから逸らさねば危険だと考えたダルディンは、デミトリーへ、

「一体どうやってここまで来たんだ」と、尋ねた。

 デミトリーは、今初めて、リーユエン以外の者たちの存在に気づいた様子で、

「長い旅だった。密林を越えて、圏谷を越え、氷雪の大地も越え、砂漠も横断した。でも、リーユエン、氷雪の大地で襲撃されたんだろう?ヨークの亡骸を見つけたんだ。一体、何が遭ったんだ?」

 ダルディンですら、悲惨すぎると思い、その話を避けてきたのに、デミトリーは全く遠慮することなく尋ねた。すると、リーユエンの顔から、一切の表情が抜け落ち、

「ヨーク・・・そうだ、ヨーク」と、ささやいた。

 高祖は、「まずい、記憶が戻ってしまうぞ」と、いい、リーユエンへ手を伸ばした。けれどその手が触れる前に、リーユエンは椅子から立ち上がり、

「あいつは許さない、あいつだけは絶対許さないっ」と、いきなり叫んだ。そして、目を見開き、全身を戦慄かせ、突然胸を抑え、身を折り曲げて苦しみ出した。

「ウウッ・・・ウワッ・・・」

 高祖は、苦しむリーユエンを抱き抱え、

「術を受けた記憶が戻ってしまった。今日は休ませるから、明日、神廟に皆で来い」と言い残し、その場を慌てて去った。

 「リーユエンを、どこへ連れて行く、待てっ」と、デミトリーは叫んだが、無視された。

 ミレイナ王女は、デミトリーへ近づき、

「ねえ、ねえ、あなた、リーユエンとどういう関係なの?」と、目をキラキラさせ、興味津々の様子で尋ねた。デミトリーは、身をのけぞらせながら、それでも

「私は、彼女のことを愛しているんだ」と、はっきり答えた。そして、状況がわからないまま、ただ勢いだけで動いたデミトリーは、ようやくダルディンへ

「あなた方や、ヨークの身に何が起こったのか、教えてくれ」と、言った。

 ダルディンは、そういう事は、行動する前に言ってほしかったと思いながらも、リーユエンを、瞬く間に目覚めさせたデミトリーの手際に感服した。

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