表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/105

10 覚醒(1)

 ミレイナ王女は、お茶会を開いた。

 白や黄色、ピンク、赤、色とりどりの芙蓉花が咲き乱れ、爽やかな薫風に吹かれてそよぐ中庭に、真っ白なテーブルと椅子を用意し、そこへ、女官がお茶と茶菓子を運んできた。

 そして、午後の明るい日差しのもと、リーユエンは高祖に付き添われて現れた。胸元の開いた桜色の衫に、裙は細かな銀糸で草花紋様を織り込んだ青磁色、袍は透き通る白い薄絹だった。ごく内輪の茶会で、出席者は主催者のミレイナ、そして乾陽大公、それから招かれた二人だった。ミレイナ王女も、お付きの侍女たちも、リーユエンの姿に見惚れた。春らしい淡い色合いが、彼女の白金に輝く長い髪と、抜けるように色白の肌を引き立たせ、人形めいた表情もあわさり、神秘的な装いとなり、地上に降り立った天女のように見えたのだ。

 そのように深く襟ぐりが開いて、胸元が見える衫を着た姿を見るのは初めてで、ダルディンはおもわず胸元に目をやり、そして、玄武紋も神聖紋もあるはずの場所にないことに気がついた。ダルディンの視線の動きで、高祖は彼が何を考えたのか気がつき、笑みを浮かべ、

「法力が通れば、紋は光って浮き出してくる。しかし、普段は見えないように隠してやった。紋など見えては、せっかくの美しい肌が台無しだ。もう、見えなくしたことだし、若い女なのだから、このくらい胸元が見える衫を着せてやるべきだろう」と、言った。

 ダルディンは、以前より胸元が膨らみ、女らしくなったリーユエンの体に戸惑いながらも、確かに、若い女人なのだから、このくらい華やかな格好をするのは当然だと思った。

 二人を迎え、ミレイナは立ち上がると、

「大お祖父様、リーユエン、ようこそお越しくださいました」と、丁寧に揖礼し、それから、

「もうご存知でいらっしゃるでしょうけれど、あらためてご紹介しますね。こちらは、高祖ミグレイ様、そしてリーユエン、乾陽大公ダルディン様よ」と、、ミレイナは、リーユエンへ優しく話しかけた。リーユエンは、深々と揖礼し「リーユエンでございます」」と挨拶した。その揖礼姿をみて、ダルディンは、玄武の国でウラナから行儀作法を厳しく躾けられていた頃のリーユエンを思い出し、懐かしくなった。そして、記憶を失っていても、身についた作法はそのままなのだと気がついた。

 リーユエンは、虚ろな目で、ダルディンを、じっと見上げた。記憶は失っていても、乾陽大公が気になるようだった。ただ、その顔は美しい人形のようで、感情の揺らめきすら現れなかった。しばし様子を見ていた高祖が、彼女の細いウエストへ腕を回し、「さあ、席に着こう、おいで」と言い、ダルディンからさりげなく彼女を引き離した。高祖を見上げる紫眸には、優しい煌めきがあった。「はい」と、返事をし、リーユエンは高祖の後に従った。


 お茶を飲みながらも、ダルディンは、リーユエンへ、玄武国の話や、魔道士学院の話など色々話題をふってみたが、反応は悪かった。とうとう伯父であるドルチェンのことも話題に出したが、彼女の目は虚ろで心を動かした様子もなく、ただ、自分が当然知っていることとして話しかけられて、戸惑いの色を深めるばかりだった。

 ダルディンは、自分が知っている限りのリーユエンのことを、彼女へ伝えようと努力したのだが、何か話題にするたびに、高祖が横から、リーユエンに話しかけて注意を逸らしてしまうのだ。高祖が、声をかけるたび、リーユエンの意識は彼のほうへ移ってしまった。高祖は、リーユエンにお茶を勧めたり、茶菓子を分け与えたりして、巧みにダルディンの話題から彼女の関心を逸らし続けた。ダルディンは内心、リーユエンの関心を、自分の話へ集中させるには、一体どうすればいいのだろうと焦るばかりだった。

 ダルディンが手詰まりとなっていたとき、庭の向こうから禁護衛軍総大将のチェンガムがやって来た。王女つきの侍女が、彼のそばへ行き、話を聞くと、王女のもとへもどって来て膝を曲げて簡易にお辞儀し、

「先ほど、蜃市上空より城内へ降り立ったものがありまして、その者は、リーユエンを訪ねてきた、自分は金杖王国王太子デミトリーだと名乗っているそうでございます」と、伝えた。ダルディンは驚き、思わず椅子から立ち上がった。

「デミトリーと言ったのか」

 乾陽大公の勢いに、侍女は少し引き気味になりながらも、

「左様でございます」と答えた。ダルディンは、王女へ

「その者は、私とリーユエンの知り合いだ、どうかここへ連れてきてもらえないだろうか」と、頼んだ。ミレイナは、チェンガムへ、すぐその者をここへ連れてくるように伝えよ、と侍女へ言った。ところが、侍女は、

「飲まず食わずで、ここまで来て、そのうえ、ひどい身なりなのだそうです。少し、身なりを整えさせてから連れてまいります」と言った。

 一時間近く待たされて、ようやく、中庭へデミトリーがアスラもつれて現れた。アスラは、金眸三眼の獣姿で、リーユエンへ駆け寄り、

「主、会いたかった」と、叫び飛びついた。けれど、リーユエンはただアスラに抱きつかれても、無反応だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ