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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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8 捨心(4)

 「そんな・・・私は、伯父上へ、何と言って申し開きをすればよいのだ」

 ダルディンは、呆然とつぶやいた。

 ミレイナ王女は、ふたりのやり取りに聞き入っていたが、ダルディンの苦悩する様子を見かねて、

「大お祖父様、何とかならないのでしょうか」と、声をかけた。

 しかし、高祖は、端正な顔にいかなる感情もなく、ただ冷厳に、

「記憶など不要だ。私は、リーユエンがどれほどの傷を負い、痛みに苦しんだかを知っている。そして、どれほど猊下とやらに、助けを求め、呼びかけ続けたかも知っている。それでも、お前の伯父とやらは、彼女の呼びかけにまったく応えなかったのだ。彼女は、絶望し切った状態で、捨心したのだぞ。そこまで絶望した者に記憶を戻して、おまえたちの猊下のもとへ戻れと言うのか?最も助けを求めたその時に応えない無情な者に、なぜ、この女を戻さなければならない?私ならば、決して見捨てなどしない。愛する者から助けを求められて、無視するような事は決してしない。記憶を戻すことなど不要だ。私の妻として、この蜃市において、新しい思い出を作っていけばよいのだ。今までの記憶など、きれいさっぱり忘れて、やり直すことが彼女にとっての幸せなのだ」と、言い切った。

 ダルディンは、もうどうしていいか分からなくなった。ただ、リーユエンが離れていってしまうことなど、耐えられなかった。伯父の妻、明妃であるリーユエンがいなくなるなど耐え難かった。

(リーユエンを失うなんて耐えられない。たとえ触れてはいけない女であっても、伯父上の妻であろうとも、傍にいてほしい。高祖の妻になるなんて、私には耐えられない)

 突然、リーユエンが椅子から立ち上がり、ダルディンへ近寄ってきた。そして、彼の肩へ手を乗せ、

「あなたの事を思い出せなくて、ごめんなさい。どうか、悲しまないで、私を許して」と、ささやいた。

 ダルディンは彼女を見上げた。見下ろす彼女の紫眸から、涙が雫となって伝わり落ちた。彼女は、ただ、「ごめんんさい、ごめんなさい」と言い続けた。

 ダルディンは、肩に乗る彼女の手へ自分の手を乗せ、

「リーユエン、泣かないで、私はあなたを責めたりはしない。猊下もあなたを責めたりはしない。だから、泣かないでくれ」と、言い、続けて「私も猊下も、どこかで間違ったのかもしれない。けれど、あなたのことを愛していることに偽りはないのだ」と、言った。

 そうは言ったものの、記憶を取り戻せない彼女をどうすればよいのだろう。ダルディンは進退窮まった。ふたりの様子を見ていた高祖は、ダルディンへ

「写しを彼女へ戻すことは認めないが、彼女自身が自分の記憶を取り戻そうとすれば取り戻せるようにはしてある」と言った。そして「半年猶予をやろう、その間に彼女が記憶を取り戻したら、彼女の決定に従おう。けれど、半年すぎたら、彼女が何と言おうとも、この蜃市に留め、私の妻として添い遂げてもらう」と宣言した。そして、ダルディンへ「私はこの女の再生に、溜め込んだ法力の三割を費やしたのだ。ざっと三千年分だ。彼女は、いかなる凡人よりも長い期間を生きられる。私は、彼女と残りの人生をともに過ごしたいのだ」と、言った。そして、高祖は、リーユエンに近寄ると、彼女の手をダルディンの肩から持ち上げ、涙を拭い取ってやり、

「神廟へ戻ろう。また、今度、ミレイナとでもお茶をすればよかろう。王よ、王妃よ、すまないが、彼女は疲れたので、今日はこれで失礼する」と、いい、高祖は、リーユエンを連れ、神廟へ帰ってしまった。

 

 高祖が、新しい妻を迎えるという噂は、瞬く間に宮殿中どころか、蜃市全体に広まった。見目麗しい高祖は、高齢にも関わらず、いまだに女人の間では人気が高く、大青亀と呼ばれる彼ら一族の貴婦人やそのご令嬢たちは、自分がその相手に選ばれなかったこと、そして相手が凡人であることを、大層悔しがった。そして、そのお相手とやらを一目見ようと色々手を尽くしたが、高祖は彼女を神廟へ隠し、衆目にさらすことはなかった。ダルディンは、心密かに、これでは、リーユエンを離宮に迎え入れた頃の伯父とやっている事が同じではないかと皮肉に思った。

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