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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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7 換骨変易の法(1)

王女に引っ張られ神廟前の大広間へ来たダルディンは、彼女へ

「高祖とは何者なのだ?」と、小声で尋ねた。

「東海大青亀一族の中で最も長命の大長老よ。私からだと六代前かな?大お祖父様なの。いつもは、神廟の中で眠っていらっしゃって、最近お目覚めになったのは、私が百歳になって人型を披露した時で、それ以来ずっと眠っていらっしゃったのに、今日、急にお目覚めになったようね」と、説明した。

ダルディンは驚き、

「六代前だって・・・一体お幾つなんだ?」と、尋ねた。

 玄武は長命の一族だが、それでも北荒の玄武で存命なのは、四世代までが限度だった。六世代前の玄武など聞いたことがなかった。

 王女は首を傾げ、「お幾つなのかしら?たぶん、一万歳以上だと思うわ」と、答えた。

 ダルディンは無言で首を振った。大伯母のカーリヤの二倍以上生きていることになる。

 青大亀の一族が集合し、粛々と待ち受ける中、神廟の巨大な扉はついに開いた。そこから、白い長衣姿、足元へ達する白金の長髪を後ろで束ねた、長身の男が現れた。肌は、うっすら青みがかり、目は、ミレイナと同じ青みがかった翡翠色、非常に端正な顔立ちで、六世代上の高祖だとは信じられない、若々しい姿だった。現れた高祖を見た瞬間、ダルディンは危うく飛び出しそうになった。理性が辛うじて走り出すのを止めたが、叫ぶのは止められなかった。

 「リーユエンッ」

 高祖は、水が滴り落ちるほど濡れそぼった、黒外套にくるまれた凡人を抱えて現れた。フードが脱げ落ちて、白蠟のように白い顔が現れ、ダルディンはそれがリーユエンだとすぐ気がついた。

 高祖が現れるや、皆は一斉に跪拝叩頭し、

「高祖に、ご挨拶申し上げます」と、一斉に挨拶した。すると、高祖は、よく通る声で、

「礼儀は不要だ。それより、この者を調べたいので、部屋を用意せよ」と、指示した。

 ミレイナは立ち上がるや、ダルディンへ

「大お祖父様のところへ行きましょう」と言い、まだ跪いたままの臣下の列をすり抜け、神廟へ続く(きざはし)を駆け上がった。

 禁護衛兵が行手を阻もうとしかけたが、高祖は、ミレイナ王女に気がつき、

「ミレイナ、少し見ないうちに随分成長したな」と、声をかけた。

 ミレイナは丁寧に揖礼すると「大お祖父様、その方はどうされたのですか?」と、尋ねた。

 高祖は、真っ白で形のよい眉を吊り上げ

「西の氷雪大地で、空間を歪め畳地連結を行った者に気がついたのだ。そのような術を使うものは数千年ぶりだ。つい、珍しく思って、こちらへ引き寄せてしまった。それに、この者は術を使ったはずなのに、自分自身は移動しなかったようなのだ。ひどい内傷を負って死にかかっておるし、生きている間に事情を調べようと思った」と、話した。

 ミレイナは、高祖へ近寄り、

「リーユエン、死にかかっているのっ!大お祖父様、お願いですっ、この人を助けてください。この人は、私と乾陽大公を助けるために術を使ったんです」と、涙目で訴えた。

 

 部屋が用意されて、リーユエンは寝台へ横たえられた。ダルディンは、脈を診て、もう絶望的だと悟った。体の中は、無数に生じた内傷でぼろぼろの状態だった。これでは、治療を施しても回復する見込みはなかった。

「どうして、こんなになるまで、術を使ったんだ。使うなといっただろう」と、涙声で話しかけた。けれど、もう意識のないリーユエンからは、反応がなかった。

 高祖は、リーユエンの額に手をかざし、

「何もしなければ、今すぐにでも心の臓が止まりかねん。とりあえず、法力で心の臓は守ってやろう。だが、それでも半日が限度だ」と、宣告した。

 ミレイナは、高祖へ、川辺で自分を拾い上げ、割れた甲羅を直してくれたことや、追っ手にみつかり襲撃を受けて、自分と乾陽大公を蜃市へ術で移動させてくれたことを話した。

 高祖は、黙って話を聞くと、ミレイナの肩のあたりを手で触れて

「なるほど、そなたの甲羅は継いであるな、それも、これは珍しい龍の心臓石ではないか。この者は高度な錬成の術をも、ものにしておるのだな」と、感心した。

 ミレイナは、高祖を見上げ、「大お祖父様、リーユエンを助ける方法はありませんか?」と、尋ねた。高祖は、眉尻を下げ、リーユエンを見下ろしながら、

「おまえの恩人なのだから、恩返しをせねばならんな。方法はないこともないのだが、凡人に耐えられるかどうか・・・凡人で良い結果となったことがないのでな」と、顎に手を当て考えこんだ。それから、「体が冷え切っておるから、着替えさせた方がいい。氷雪の下の谷底へ落ちていく途中で、この者を捕まえ、法力で引き寄せたのだが、岩場にぶつかり体中傷だらけだ。先にざっと手当してやるがよい」と、言った。

 王女は、召使を呼び、着替えをもってこさせた。リーユエンの衣を肌けた召使が、思わず

「ヒッ」と声を上げたので、何事かとのぞき込んだ王女も「エッ」と声を上げた。

 高祖は、「どうしたのだ」と声をかけながら、肌けられた体を無遠慮のぞき込み

「何だ、これは?刻印の上から刻印を焼き付けたのか」と(いぶか)しげに言った。

 乾陽大公は、まさかと思いながら、リーユエンの胸元をのぞき、そこに、玄武紋の上から焼き付けられた震家の紋様に囲まれた「震」の刻印をみつけ、怒りのあまり眸が糸のように細まった。

 高祖は、乾陽大公へ視線を移し、「随分腹を立てておるな、そなたの女なのか?」と、尋ねた。思いがけない質問に怒りが冷めたダルディンは、首をふり、

「いや、違います。この方は、私の伯父の妃です」と答えた。

 高祖は、眸を光らせ、「玄武が、凡人を妃に迎えるとは、物好きな奴だな」と、おもしろがった。そして、「玄武紋の内側の円陣は何だ・・・神聖紋か。随分念入りな破邪の呪をかけたのだな」と、言った。

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