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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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5 襲撃(10)

 吸血カメムシの襲来に気がついたとき、ダルディンは、リーユエンとミレイナに自分が身につけていた大きなマントを被せ、その上から隠形術をかけ、岩場の陰へ隠れさせていた。そこへ戻ると、リーユエンがマントを持ち上げ姿を見せた。立ち上がったリーユエンは、ダルディンが近づいてくると、その顔色を見て眉をひそめ、

「大公殿下、明日は一日、どこかに留まり、瞑想なさいませ」と、言った。

 ダルディンの目も、肌も、緑色が抜けて、黄色がかった白い色に近づいていた。それは、明らかに法力の不足が原因だった。法力を補うには、瞑想し、体内の経絡に法力をじっくり循環させることが必要だった。けれどダルディンは首を振り、

「ダメだ。奴ら、いくら撒こうとしても、山犬のようにしつこくつきまとってくる。法力の循環を始めたら、私は、まる一日身動きできなくなる、そんな所を急襲されたら、もう一巻の終わりだ」と、断った。さらにリーユエンが

「でも、殿下の法力は、もう・・・」と、言いかけたのを遮り、

「大丈夫だ。まだ、なんとかなるから、心配しなくていい」と、制した。そして、

「それより、リーユエン、あなたは顔色が随分悪くなっている。もう、休みなさい」と、逆に気遣った。そのやり取りを見ながらミレイナ王女は、

(乾陽大公は、本当にリーユエンのことを大切に思っていらっしゃるのね・・・羨ましい・・・エッ、私、今、羨ましいって思った・・・どうして、どうしてよ・・・いくら乾陽大公が素手で大水蜥蜴を叩き殺すほどお強いからって、いくら、法力で、襲いかかってくる毒蟲を蹴散らしてくれるほど頼もしいからって・・・それだけのことで、私って、ちょっと安直すぎないかしら・・・)と、自問自答して悩んだ。(やっぱり、乾陽大公はリーユエンの事が好きなのかな・・・顔に傷があるし、凡人なのに、あの女が好きなのかしら・・・)

 考えれば、考えるほど、胸の中には、訳の分からないモヤモヤしたものが増えていった。

 

 工作部隊が密林中を駆け回って集めた毒蟲も、十数回の攻撃に使い切ってしまった。レムジンは、部下に遠方から時々彼らへ毒矢を射るよう命じ、実行させた。副官のひとりが、

「こんな遠方からでは、手傷を負わせることもできません。矢が勿体無い」と、言うのへ、「あいつらに、俺たちはずっと追跡を続けていると圧力をかけるのが目的だから、これでいいのさ。乾陽大公は、瞑想する時間も取れないから、法力を回復させることができない。あとは、弱る一方さ」と、説明した。

 実際、毒矢がいつ、どこから飛んでくるのか予想できない状態で、ダルディンはずっと攻撃に意識を集中し続けて、瞑想ができないでいた。ある日、山の中腹で洞窟をみつけたリーユエンが、洞窟の中に目眩し陣を張るから、その中で瞑想してほしいと頼んでも、

「ダメだ。いくら道筋を変え、隠形しても、あいつらは追跡し続けている。こちらの位置を把握する手段が何かあるのだ。いつ、攻撃してくるか分からない以上、瞑想することはできない」と、却下した。けれど、リーユエンは、

「これから氷雪の高原越えですよ。法力が下がったままそこへ行くなんて、危険すぎます」と、食い下がり、「攻撃があっても、ヨークと私とアスラで防ぎますから、お願いです。瞑想して、法力を回復してください」と、訴えた。

「しかし・・・」

 ダルディンは、リーユエンを見下ろした。彼女の方こそ、もう血の気の失せた顔色で、ずっと咳が続いていた。その消耗した姿は、亡くなる前の父にあまりに似ていて、不吉な予感しかなかった。リーユエンは、そんなダルディンの顔の表情を見ながら、彼の腕をつかみ、

「大公殿下、法力を回復しないと、誰も守ることはできません。膂力だけで、毒蟲を放ってくる連中に勝てるはずがないでしょう。法力が尽きたら、私たちはどうやって身を守ればいいのです?あなたの法力が、どうしても必要なのです」と、きらめく紫眸で彼をまっすぐ見つめ、強い口調で再度訴えた。

「分かった。だが、あなたが、陣を保てなくなったら、瞑想はただちに中止するぞ」と、いい、結局ダルディンが折れた。

 崖の上へ、ヨークに見張りへ行ってもらったあと、リーユエンは、洞穴の入り口に、携帯用の墨を指先につけて隠形陣を作成し、その中へダルディンを入れた。そして、真言を唱えて発動させた。すると、円陣全体が一瞬発光し、ダルディンの姿は見えなくなった。

 術を発動させると、リーユエンは肩を上下させるほど荒い呼吸で、苦しそうに岩に間にうずくまった。

 ミレイナは側にしゃがみ、「大丈夫?」と、尋ねた。

 リーユエンは、ミレイナをみつめ、微笑んで

「大丈夫、大公殿下が、法力をせめて七割回復するまで頑張るつもりだから」と、言った。

 ミレイナは、顔色の悪い彼女を見ながら、

「乾陽大公は、どうして命を狙われているの?どうして、あなたと一緒に行動しているの?」と、尋ねた。

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