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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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5 襲撃(6)

  亀に見つめられたリーユエンは、「どうしたの?」と尋ねた。

 亀は、首をゆるゆると振ってみせた。

「川へ帰りたくないの?」と、尋ねると、今度はうなずいた。

 ダルディンは、

「この亀は、人語が分かるようだな。まさか、玄武の子供なんてことはないな」と、笑った。一瞬そうなのかもしれないと思いかけたが、玄武の姿とはほど遠い、ただの亀にしか見えなかった。けれど、亀は目を細め、不機嫌な表情になった。その表情に

「えっ、俺の言葉に反応した?この不機嫌な顔、大伯母上が拗ねた時の顔にそっくりだな」と、つぶやいた。

 突如、亀は体の向きを変え、ダルディンへ猛然と近寄るや自分の前右足を持ち上げ、彼の太ももを何度も叩いた。

 (何よっ、私のことを馬鹿にしてるのね、悔しいっ!大水蜥蜴に騙されて法力を盗られさえしなければ、私だってちゃんと人形を取れるのよっ)

 「エッ!」

 驚愕したダルディンが突然立ち上がったために、亀はひっくり返り、腹側をみせてじたばた暴れ出した。リーユエンもダルディンの様子に驚き

「どうしました、殿下?」と、尋ねた。すると、ダルディンは亀を指差し、

「今、この亀が俺に話しかけてきた」と、言った。

 もとの姿勢に戻してやると、リーユエンは亀を持ち上げ

「大公殿下、さあ、どうぞ」と、言いながら亀をその懐へ押し付けた。

「な、何だ」と、慌てる彼へ、リーユエンは薄ら笑いを浮かべ、

「声が聞こえたのでしょう?せっかくですから、その亀とじっくり語らってみてはいかがですか」と、ささやいた。

「・・・・・・」

 ダルディンは、亀を抱いたまま呆然となった。ところがまた

(さっきから、亀、亀ってばかり呼ぶけれど、私には、ちゃんとした名前があるんですからね)と、また声がした。

 「亀から声が聞こえるなんて、俺の頭はおかしくなったのか?」と、つぶやくダルディンの懐で、亀が四足を出して、じたばたと暴れた。

(もうっ、本当に失礼な男ね。私には名前があるのよ。私の名はミレイナよ。東海青大亀王の娘よ)

「東海青大亀王の娘、ミレイナ・・・王女なのか?」

 ダルディンは亀を両手で持ち上げ、顔を見ながら尋ねた。

(そうよ、私は王女なの。失礼な真似は許しませんからね)と、亀は青みがかった翡翠色の目を輝かせ、何となく偉そうな様子をみせた。側で見守っていたリーユエンは、ダルディンへ

「その亀が自分でミレイナと、東海青大亀王の娘だと、名乗ったのですね」と、話しかけた。ダルディンはうなずき、

「確かに、そう聞こえた。だが、どこから見ても亀なんだが、ミレイナ王女、あなたは海に棲むものなのだろう?それが、どうして、こんな川辺の岩の間にいたのだ?」と、尋ねた。すると、ミレイナはちょっと気まずそうな様子を見せながら、

(東海で色々やらかしてしまって、お父様に罰として、ウマシンタ川一帯の天候の見張り番をしなさいって、東海から追い払われしまったのよ。それで、このあたりで雨を降らしたり、洪水になりすぎないよう法力で調整したりしていたのだけれど、大水蜥蜴の奴が力比べを挑んできたので、やっつけてやろうと法力を飛ばしたら、反転鏡を持ち出してきて、自分の法力が当たって気絶しているうちに、甲羅を切られて、法力を盗まれてしまったの)と、最後は目に涙が浮かべ、(うっ、これは悔し涙よっ、これしきのことで泣いたりなんかしないんだから)と、言い足した。

 リーユエンは、焚き火に枯れ枝を投げ込みながら、

「やはり、東荒見聞録に書いてあった青大亀は実在するんだ」と、つぶやいた。

 ダルディンは、ミレイナへ、「君は、今まで亀のふりをしていたのに、どうして急に話しかけてきたんだ」と、尋ねた。すると彼女は、(話しかけたかったけれど、できなかったのよ。でも、この人が私の甲羅の欠けたところを直してくれたから、体に残っている僅かな法力を循環できるようになって、やっと話しができたの。でも、体がどこか触れていないと、うまく伝えられないわ)と、説明した。

「なるほど、そういう事か。で、君の法力を奪った大水蜥蜴は、どこにいるんだ?」と、尋ねると、彼女は、

「知らない、気がついたら、もう姿が消えていたの。どこかに隠れたんだと思う。あいつは何でも集めるのが趣味なの。私の法力を奪っても、自分では使いこなせないはずだから、どこかに隠したんだと思う」

 それを聞いたリーユエンは立ち上がると、ダルディンの懐からミレイナを取り上げ、「あなたの法力を確認させてください」と言った。ミレイナの体の中を何かが通り抜け、彼女は身を震わせた。

(何?今の・・・法力じゃないけれど、何か強力な力だった)

 彼女はリーユエンを見上げた、顔の右側に赤く抉れた傷跡があって、恐ろしそうに見えたけれど、紫の眸は焚き火の明かりに星のように煌めいていた。

(うわあっ、目がとっても綺麗、紫水晶みたいに光っている)

 思わず、うっとり見上げていた。


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