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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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5 襲撃(5)

 ダルディンは、焚き火にあたるリーユエンの隣に座り、亀をのぞき込んだ。

「岩だらけの川岸で、よくそんな小さなものを見つけたな」

 リーユエンは、甲羅を撫でながら、

「キュー、キューって、鳴き声が聞こえたの」と、言った。

「えっ、生きているのか?」

 てっきり死んだ亀だと思っていたダルディンは、もう一度甲羅をのぞき込んだ。頭を出し入れする場所をよく見ると、引っ込んだ頭が見えた。

「冬眠しているのか?」

 リーユエンは、眉を寄せてダルディンを見上げ、

「さっきまで鳴いていたのだから、冬眠じゃないわ。たぶん、怖がって出てこないだけよ」と言い、次に不気味な薄ら笑いを浮かべ、「亀さーん、出てこないなら、焚き火にいれて、丸焼きにして食べちゃおうかな」と、言い出した。

 ダルディンは、自分の甲羅が焼かれるような気がして、思わずヒッと身を引いた。その時、

「きゃっ、痛っ」と、リーユエンが声をあげた。彼女の人差し指に首を思い切り伸ばした亀が食いついていた。

「こらっ、離れろ」と、ダルディンが声をあげ、亀の頭をつかもうとしかけたが、リーユエンは首をふり、「私が怖がらせたから、怒っただけよ。大丈夫」と言いながら、「ごめんね、生きてるかどうか確かめようとしただけよ。食べたりなんかしないから、安心して」と、亀へ話しかけた。 

 亀はギロッと目を動かし、リーユエンを睨みつけた。

 リーユエンは、痛いのを我慢し笑いながら、「本当よ、この隣の人は、あなたの親戚みたいなものだから、この人に聞いてごらんなさい」と、言った。ダルディンは、

「私は玄武で、亀じゃないぞ」と、ちょっと不服げだった。が、玄武と聞いた途端、亀はリーユエンを噛むのやめ、ダルディンの方へ首を伸ばし、彼をじいーっと見上げた。その様子を見たリーユエンは、

「あら、この仔、大公殿下に興味があるみたいね。どう、大公殿下は格好いいでしょう。あなたが玄武なら、この方のお嫁さんになってくれないかしら?」

 リーユエンのメチャクチャな発言に、ダルディンはまたもや身を引き、

「この仔は亀だろ?それに雄かもしれないのに、変なことを言うのはやめてくれ」と、叫んだ。

 リーユエンは、亀を見下ろし、甲羅を撫でながら、

「この仔は女の子よ。それは間違いないわ。だって、手足の爪が短いもの、男の子ならもっと長いはずよ」と言った。

 リーユエンは、亀の短い爪に気がついた時、昔、猊下の法力が不足していた頃、その手は鱗に覆われ長い爪が生えていの思い出した。その手で、爪が当たらないように気をつけながら、自分の頭を優しく撫でてくれたのに、今は何の連絡もくれない猊下のことを思うと、突然悲しくなった。

 リーユエンが急に黙り込んだので、ダルディンは亀からリーユエンへ視線を移した。けれど、彼女はうつむいていたので、どうして黙り込んだのかは分からなかった。ダルディンの視線に気がついたリーユエンは、彼を見上げ笑うと、

「この仔の甲羅は、青色に緑が入って宝石みたいだわ。こんな甲羅の亀は、ウマシンタ川では見たことがない。どこから来たのかしらね」と、言った。その時、ヨークが大きな虎口魚をかついで、川から上がってきた。それを見たリーユエンは、「ヨーク、大きな虎口魚を捕まえたのね、お疲れ様」と、声をかけた。

 口の中にびっしりと鋭い歯を生やし、体表は黒地に銀色の縞模様の入った凶悪な面構えの虎口魚は、身を開いて、焚き火で焼かれた。リーユエンは、焼く前にその魚から少し身をとって亀に食べさせようとしたが、亀は食べようとしなかった。

「あれ?生は食べないのかしら」と、不思議そうに言うリーユエンを、亀はジトーッと人間臭い表情で見上げた。

 リーユエンは亀を顔をのぞき込み

「焼いた方がいいの?」と、尋ねた。すると亀は微かにうなずいた。

 そのやりとりを見ていたダルディンは、

「リーユエン、野生の亀に話しかけてもしょうがないだろう」と、声をかけた。リーユエンは、「あら、そんな事はありませんよ。この仔、結構、私の話すことがわかっているみたい」と、言い「食事をしたら、その欠けた甲羅をなんとかしないとね」と、今度は亀に話しかけた。

 亀の甲羅は差し渡しが一尺ほどで、右足の付け根近くが、手のひら半分くらいの大きさが割れて失われていた。食事が終わると、リーユエンはそこへ傷用の塗り薬をつけた。

「こんなひどい怪我をしたら、水にはしばらく浸からないほうがよさそうね。この甲羅の欠けた部分は再生できるのかしら?」と、亀の傷の具合を見ながらつぶやいた。焚き火の明かりの中で、亀はリーユエンをじっと見上げた。その目は、よく見ると、緑がった青に見えて、とても綺麗だった。リーユエンも亀の顔をじっと見ながら、

「あなたが人の姿へ転身できたら、きっと美しいお姫さまだと思うわ」と、ささやき、「そうだ、私の甲あてを錬成して、甲羅にすればいい」と、言い出した。しかし、耳聡いダルディンは、その言葉を聞きつけ、

「リーユエン、体調が悪いのに錬成なんかしたら、また体力を消耗して具合が悪くなるだろう」と、注意した。けれどリーユエンは、

「ほんの少し、甲羅にくっつけるだけだから大丈夫。早く治してあげないと、甲羅の中の体を魚に食べられてしまうわ」と、反論し、自分の甲あてを外して、それを半分に割り、甲羅の欠けたところへ当てて、錬成呪文を唱えた。甲羅と黒い甲あては眩く発光し、欠けた部分に黒い甲あてがしっかり密着した。リーユエンは、亀を持ち上げ、上下左右からじっくり眺め、「綺麗に治ったわ。これで、水の中へ戻っても平気よ。この甲あては、竜の心臓石から錬成してあるから、とても丈夫なの。甲羅が再生したら、自然と外れるように錬成したからね」と、亀へ話しかけた。亀は頭を出して、リーユエンをじっと見上げた。

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