5 襲撃(2)
ルーターは復旧したのに、ネットが混み混み?なのか、全然繋がらなかったです。
繋がった時にちょこちょこ書いてます。やれやれ・・・
地面へ落ちて転がるのを目撃したダルディンが「リーユエンッ」と、叫んだ。彼女は、乾陽大公が来る前に何とか立ち上がり、騎獣へ乗ろうとしたが、腕が震え、起き上がることすらできなかった。それに胸のあたりが締め付けられるように苦しかった。
ダルディンが騎獣から降りて、駆け寄ると、
「無茶をしすぎだぞ」と、言いながら、彼女を抱き起こした。
「大丈夫です。ちょっと疲れただけだから・・・」と、ささやく彼女の手を握ると、ダルディンは有無を言わさず法力を流しこんだ。
「だめ・・・止めて・・・力を消耗させないで」
リーユエンは、ため息を吐き、抵抗しかけたが、そのまま気を失った。
カリウラも駆け寄ってきて、
「リーユエンは大丈夫でしょうか?」と、ダルディンへ尋ねた。
ダルディンは、カリウラを見上げ、
「法力を流したから、しばらくすれば回復するだろう。ひとりで八卦陣をたて続けに発現させるなんて、無茶をしすぎだ」と、言った。
カリウラは、「この隊商は、ただ穀物と岩塩しか運んでないのに、こんなにしつこく狙われるなんて、災難ですよ。こんな大規模攻撃じゃ、魔導士が何人いたって対応しきれません。まだ、妖を退治する方がましですよ」と、こぼした。
カリウラの愚痴を聞くうちに、ダルディンも、確かに、隊商を狙うにしては、組織的すぎると思った。そして、やはりリーユエンが言っていた通りで、大公の中の誰かが、自分と彼女を狙って攻撃をしてきたのでは、と考えた。
(巽陰大公からも、同じ忠告があった。狙う理由はどうあれ、明妃を守り通さなければ、伯父上にも合わせる顔がない。何としてでも、リーユエンを玄武の国へ無事に連れて帰らなければ・・・)
一方、崖の上のレムジンは、
(騎獣から落ちたな。フフッ、さすがに八卦陣を四連続で発現させたら、体力も尽きてしまったか。やはり、生捕りにするには、少しずつ力を削ぐのが効果的だな)と、遠眼鏡で観察していた。
レムジンは、副官の方へ振り向くと、
「夜になって、奴らが篝火を使い始めたら、毒蛾を放て」と、命じた。
隘路を抜け、荒野を進み続けた隊商は、日暮近くになると野営準備を始めた。天幕が張られ、篝火の明かりが周囲を照らした。隊商を追尾し続けるレムジンの部下たちは、その明かりを確認すると、命令通り毒蛾を千匹ほど放った。羽の両端に目玉模様のある赤茶と黒と白の禍々しい渦巻き模様のある毒蛾が、篝火目指して一斉に飛び立った。その羽の鱗粉は有毒で、吸い込めば喉が焼け爛れ、目に入れば炎症が起きて目を開けることさえできなくなる。皮膚に触れれば、火傷したような水脹れができる。闇に紛れ、その毒蛾が隊商へ襲いかかった。
野営地のそこかしこで、悲鳴があがった。皮膚に水脹れができた者や、目をやられた者が出て騒ぎ始めた。
リーユエンは、騒ぎを聞き、天幕からまだふらつく体のまま外へ出た。天幕に止まる毒蛾に気がつき、ただちに離震の陣を発現させ、火精を召喚し、毒蛾を焼き払った。が、またもや激しい胸痛に襲われ激しく咳き込んだ。そのまま、また天幕の中へ閉じ込もった。
「リーユエン、大丈夫か?」
アスラが姿を現し主である彼女を気遣うと、
「外で見張ってくれ、誰も中へ入れるな」と、指示し、
「乾陽大公もだ、絶対に中へ入れるな」と、厳しく命じた。そこまで言い終えると、また激しく咳き込んだ。乾陽大公は、リーユエンの体を回復させようと大量の法力を注入したのに、回復するどころか、ますます悪化していた。魔法陣を発現させるたびに、内傷が起きていた。
(おかしい・・・法力は吸収できているのに、魔法陣を使ったくらいで、どうして内傷が起こる?まさか、毒が残っているのか)
痛みをやり過ごそうと、じっと横たわる彼女の耳に、天幕の外から叫びが聞こえた。
「アスラッ、そこをどけっ」乾陽大公の声だった。それに
「リーユエン、大丈夫なのか?返事してくれ」と、カリウラの不安そうな声も聞こえた。そして、アスラが、
「主、もう限界だ。乾陽大公の奴、目が縦長になって、俺を本気で引き裂こうとするんだ。助けてぇぇ」と、叫んだ。
リーユエンはあまりのうるささに耐えられなくなり、天幕の垂れ幕を上げ、外へしかめ面をのぞかせたが、
「うるさいっ、静かにしてくれ」と、ささやき声しか出せなかった。
「リーユエンッ」
ダルディンは近寄ったが、彼女の様子に衝撃を受けた。
「どうして、あれだけ法力を流したのに、そんなひどい有様なのだ?」
リーユエンの顔はさらに青ざめ、目の下には疲労の隈が色濃く現れていた。
「殿下、法力を流し込むのはやめてください。八大公家のうちの何者かが、殿下と私を標的に襲撃をかけてきています。あなたの法力が弱ったら、敵の思うつぼです。どうか、法力を消耗させないでください」
「だが、そんなに弱っているのに、何もしないわけにはいかないだろう」と、ダルディンは訴えた。




