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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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3 噛みつきドルーア(6)

 一方、オマに抱き上げられたリーユエンは、

「オマ、大丈夫だよ。自分でちゃんと手当できるから」と言って下りようとしたが、オマはリーユエンをしっかり抱え上げたまま

「何を言っているんだい。若い女が、顔に傷なんかつけて、あんたのいい人が見たら嘆き悲しむだろう。自分で適当に手当するなんてダメだよ。私が、ちゃんと痕が残らないように、ハチミツと練った特製の火傷薬で湿布してあげるから」と、言った。

 リーユエンは、顔を引き攣らせ、

「エッ、オマ、どうして・・・」と、絶句した。

(オマは、私のことを男だと思い込んでいたはずなのに、どうしてバレたんだ?それにいい人って何なんだ?)

 疑問だらけのリーユエンに、オマは、

「カリウラとハオズィから聞いたよ。あんた、玄武の国のさる貴族の殿様の愛人なんだろう。可哀想に、そんな傷ものになったら、家から追い出されるんじゃないのかい?」と、涙声で言った。

(あのバカカリウラ、いつ、私のことをバラしたんだ。それにハオズィまで、なんてことを・・・)と、内心腹を立てながらも、声だけは落ち着かせ、

「大丈夫だよ。もともと、顔に火傷があったんだから、気にしないよ」と言って誤魔化した。

 オマは、彼女を赤天幕まで連れてきた。大量の料理をつくるオマは、うっかり火傷することもあるので、そんな時のためにと常に火傷用の湿布薬を大量に用意していた。その湿布薬を惜しげもなく、顔の右側がほとんどすべて隠れるくらいたっぷりと塗り付け、その上からそっと包帯を巻ながら、

「いいかい、三日間、湿布を続けるんだよ。そうすれば、大抵の火傷なら綺麗に治るからね」と言い聞かせ、そのまま赤天幕の中に寝床まで用意してくれたうえ、

「本当に今まで、悪いことをしたよ。あんたのことを男だとばかり思っていたから、辛く当たってばかりだったね。これからは、何でも困ったことがあったら相談しておくれ」と、優しい言葉をかけてくれた。

 リーユエンは猛烈にズキズキし出した顔の痛みをこらえながら、

「ありがとう、オマ」と小声で言うのが精一杯だった。

(女ってバレるのも、悪いことばかりじゃないな。これで、オマに食事のことでうるさく言われなくなるよ。やれやれ・・・それにしても、顔が無茶苦茶痛い。湿布薬より、強力な痛み止めがほしい。でも、毒が回っているかもしれないから、鎮痛したら、毒の様子が分からなくなる。トホホッ、この状態で騎獣に乗るなんて、明日はもっと地獄だな)

 その夜、リーユエンは痛みでほとんど一睡もできなかった。


 一方、毒薬を浴びてしまったドルーアは、解毒薬をすぐさま飲み干し、血を吐き出して事なきを得た。けれど、孫娘から報告を聞いた兌陰大公は激怒した。普段は、切れ長の目に頰高の端正な顔立ちなのに、怒りのあまり、眸は糸のように狭まり、深緑色の虹彩は朱色に縁取られ、まなじりは裂けて吊り上がり、薄い唇も耳近くまで裂けて、鋭い牙と血のように赤い舌が現れた。

「バカ者っ、あの女は生捕りにせよと言ったではないかっ、それを、誤って毒薬を浴びせたうえに、解毒もしていないとは・・・」

 通信用の魔鏡が震え、今にも亀裂が入りそうなほどの怒りだった。直接対面していたら、ドルーアの甲羅は祖母大公の法力で間違いなく粉々にされていただろう。ドルーアは、恐ろしさに震えながら、鏡に向かって平伏し、

「ご安心ください。私の使った毒は遅効性です。すぐに効き目が現れることはありません。すぐさま見つけ出し、解毒します」と訴えた。

 けれど兌陰大公は、もう孫娘の言葉を信じなかった。

「ふん、そんなことを言って、おまえは、ドルチェンが自分を選ぼうともしないで、穢らわしい魔獣つきの凡人に入れ込んだのが気に入らんのだろう。私情をはさむおまえを使い続けるわけにはいかない。私は、これから坎陽大公と作戦を練り直す。おまえは何もせず、狐狸国へ戻り待機せよ」と言い、鏡面は暗くなった。

 暗くなった魔鏡をドルーアは恨めしげにしばらく睨みつけた。

(あと、もう少しで、乾陽大公を仕留めることができたのに、あの凡人が邪魔をしおって、あいつのせいで、私は猊下から危うく甲羅を砕かれ殺されるところだったのだ。あれほどお慕い申し上げた猊下が、あのような凡人の魔獣つきに入れ込んで、正気を失ってしまわれるなんて・・・許せない、あいつだけは絶対許せない。解毒などさせるものか、あいつは乾陽大公を庇って毒薬を浴びている。それは間違いない。あの毒は、どれほど気をつけて手当しようとも、ごく微量が皮膚から吸収され、あとから効き目が出てくる。ふんっ、解毒などさせるものか、体の中から内傷を起こして苦しみぬいて死ねばいい)

 ドルーアは、玄武の誰がやって来ようとも、本物の解毒薬は決して渡さないでおこうと固く心に決めた。 

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