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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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2 刺客(5)

 乾陽大公襲撃の報は、魔導士の通信によって、玄武国の坎陽大公、兌陰大公にもたらされた。現地へ赴き、坎陽大公の部下とともに、乾陽大公暗殺の指揮をとっていた兌陰大公の孫娘ドルーアは、祖母の兌陰大公へ、魔法鏡の映像ごしに、

「魔導士風情では相手にならなかったわ。乾陽大公のそばに、誰か強力な魔導士がいるようなのよ。たぶん、明妃位から引き摺り落としたリーユエンとかいう小生意気な凡人だと思う。私が、直接出向いて、そいつを仕留めるわ」と、息巻いた。すると、兌陰大公は、

「ならぬ、その者が明妃ならば、必ず生捕りにせよ」と、命じた。

 ドルーアは、祖母の命令が不満で

「どうして?ただの凡人じゃないの?生捕りにするなんて手間のかかることをする必要がー」と反論しかけたが、祖母は、突如厳しい声で

「ならぬ、明妃は生捕りにするのじゃ。あれは瑜伽業の器として、稀有の器なのじゃ。我ら坎一族で、あの器を所有すれば、一挙に玄武国を掌握できるのじゃ。決して殺しはならぬ、よいなっ」と、命令した。

 瑜伽業の難しさなど何も知らないドルーアは、内心非常に不満ではあったものの、法力の強い祖母に逆らうことは、後でどんな罰が下されるかと思うと恐ろしくてできなかった。けれど、

「お祖母様、私が、昔、あの奴隷が明妃になる前、あいつを始末しようとして、猊下に甲羅を破られて死にかけたことはご存知でしょう。今度こそ、あいつに仕返ししてやりたいの。もちろん、殺したりしないわ。ちょっと痛めつけるくらい、いいでしょ」と、猫撫で声で頼み込んだ。兌陰大公は、

「痛めつけるくらいは構わぬ。法力であとで治療が可能な範囲であればな。けれど、あやつは、ヨーダム太師が鍾愛するほどの非凡な魔導士なのだ。決して侮ってはならぬぞ」と、注意した。

 祖母大公と通信を終えたドルーアは、切れ長の目に怪しい光をたたえ、うっそりと微笑んだ。

「魔導士に魔導術で挑んむなんて、馬鹿らしい。あの奴隷には、また、私の毒薬で痛い目にあわせてやる。乾陽大公の命を奪い、あいつを痛めつける毒薬か・・・さて、何がいいかしら、毒セリ人参に、沼毒蜘蛛、雪毒虫、風船魚の肝に・・・」

 禍々しい有毒の植物や生き物の名をつぶやきながら、ドルーアは毒薬の調合を始めようと、いつも肌身離さず持ち歩く、毒物の入った薬袋を開けた。

(ふふ、あの奴隷、あの顔をまた元通りのグシャグシャにして、目も見えなくしてやる。それに乾陽大公も、内蔵が焼け爛れて、あんたの親父が死んだ時と同じ目に遭わせてやるわ)


 翌日の早朝、ダルディンは再び巽陰大公と瞑想状態から連絡をとった。そして、深夜に起きた襲撃未遂と、その前にリーユエンから聞かされた分析の内容を報告した。 カーリヤは、「坎と兌は、もう動き出したのかい?随分露骨な真似をしてくれるねえ。ダルディン、おまえは、リーユエンの言う事が信じられないようだが、あの子の分析は、妥当だよ。いや、非常に正確だと思う。私は、あの子には、八大公家の成り立ちや、それぞれの力関係や対立関係を教えてやったし、それにあの子は、玄武国の重要な行政文書のほとんどに目を通してきているからね。おまえより、よほど理解が深い。だから、おまえは今回の件に関しては、リーユエンの言うことに従いなさい。身の危険が迫っているという点では、リーユエンだけではない、おまえも同様なのだ。それに、あの子の言うとおり、おそらく、リーユエンは生捕りしようとし、おまえは暗殺される可能性が高いと思う。リーユエンは、南荒へ出発する前の瑜伽業で、信じられないほど品質のいい太極石を十年分も生み出した。あれで八大公がようやく、あの子を認めるだろうと喜んだのに、他の連中ときたら、あの子は器として値打ちがあると言い出す始末だ。まるで、もの扱いなんだよ」と、話した。

 巽陰大公までが、リーユエンと同じ見方をしたことは、ダルディンには、非常な衝撃だった。

「けれど、大伯母上、猊下はただ閉関しただけではありませんか。それで、なぜそこまで不穏な動きが生じるのです?」

「先代の猊下は、最後の明妃が瑜伽業に失敗して亡くなった後、たいそう気落ちされ、法力が落ちてしまわれた。そして、閉関し、そのまま岩戸の奥で亡くなられたのだ。その岩戸は、今でも封印されたままだ」

「・・・そんな、ご病気で亡くなられたと、聞いていたのに」

「公式の発表はそうだね。確かに、一種の病気だからね。そして、このたびのドルチェンの閉関だ。法座主の閉関なんて、通常はあり得ないからね。誰よりも法力の強い存在が何のために閉関する?通常そんなことはしない。それに、中で衰弱死せず復活するにしても、外から他の大公たちが結託して、封印してしまえば、ドルチェンひとりの力で突破できるかどうか分からない。他の連中は、器として優秀なリーユエンさえ抑えておけば、瑜伽業で太極石を生み出すことができると考えている。だから、ドルチェンを恐れ敬う気持ちが薄れてしまったのだ。そこまで事態は深刻なんだよ」

 ダルディンは話を聞くうちに不安感が増してきた。

「では、俺は、自分自身とリーユエンを守りきらなければならないのか」

「そうだよ。覚悟を決めておくれ。それに、私も、他の大公の動き次第では、雲隠れするからね。通信が途絶えても、心配しなくていい。とにかく、おまえ自身とリーユエンの安全を考えて行動しなさい」と言い残し、通信は途絶えた。

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