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千年妃(異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須ですのつづき)  作者: nanoky


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18 炸裂 玄武十式(2)

 尸蟲は、羽化の呪文さえ唱えなければ、体内に数年間卵のままで眠り続ける。尸蟲を産み付けられた者の一覧表に基づき、ヨーダム太師は金杖王国内の被害者のもとへ直接赴き、自身で卵の摘出にあたった。一方、フォンダンとリーユエンは、王国以外の国での被害者について、その者たちのところへ直接赴き、事情を説明し、フォンダンが尸蟲の場所を特定し、リーユエンが術でそれを摘出した。産み付けられた直後なら、服薬で術の効果を無効にできたのだが、産み付けられてから数年経過した被害者が多く、摘出するしかなかったのだ。被害者の多くは玄武国を商用あるいは観光で訪れた者が多く、尸蟲の寄生を告げられときの反応もさまざまだった。


 狐狸国にも数人被害者がいた。ある赤狐は、事情を聞かされるや、

「エエッ、俺の体の中にそんな変な蟲がいるのか、さっさ取り出してくれ」と、叫び、取り出された後は、案外平気な顔をして、

「勝手にこんなことをされて、玄武の奴ら、俺に賠償金くらい払ったらどうなんだ」と、金にならないものかと粘り出した。

 リーユエンは、

「ハオズィの商会が取次ぎして、あなたには、見舞金が後日支払われるでしょう」と、説明した。赤狐は実利的なので、大方はこの説明で納得した。狐狸国では、そんなやりとりがほとんどだった。

 けれど、蒼馬国では勝手が違った。蒼馬の被害者は、大人しく、気味悪がりながらも、フォンダンの診察には協力的だった。ところが、痛みはないからと説明したうえで、リーユエンが摘出しようとすると、蒼馬は神経質で臆病な性格の者が多いためか、施術をされる瞬間、恐慌状態となり、いきなり転身して逃げ出そうとしたり、酷いのになると、転身するや、後ろ足でリーユエンを蹴飛ばそうとする者までいた。リーユエンは、仕方なく、術で縛して摘出した。さらに最悪だったのは、蒼馬国に滞在中の黒熊族の被害者だった。猛烈に腹を立て、フォンダンとリーユエンに食ってかかった。

「俺の体にそんなもの勝手に産み付けやがって、おい、こらっ、この落とし前どうつけるつもりだ、ああっ!」と、凄んできた。リーユエンは、そんな態度に動じることなく

「私たちは、魔導士協会から派遣されてきました。尸蟲を至急摘出しなければ、孵化して成長しはじめると、非常に危険な状態となります。命に関わるのです。お腹立ちはごもっともですが、ます摘出をさせてください」と、説得し、怒り狂う黒熊族の男から、何とか卵を摘出できた。けれど、その後も怒りの収まらない男から、散々罵られ、唾まで吐き付けられた。

 フォンダンは、ハイネルからリーユエンの本当の身分を聞いたので、罵られたり、つばを吐きつけられたりするのを見て、やめろと怒鳴りつけそうになった。けれど、リーユエンは、フォンダンを止めた。リーユエンは、決して感情的にならず、黒熊の男を時間をかけてなだめ、納得させた。フォンダンは、リーユエンの忍耐心は大したものだと感服した。

 

 中央大平原の最も東に位置するバイジャン公国では、バイジャン大公の一族のひとり、大公の甥であるガリアムが、玄武国を遊学中に尸蟲を産み付けられていた。ヨーダム太師の名代として、バイジャン大公に謁見を願い出、事情を説明し、許しを得て、ふたりはガリアムの屋敷まで出向いた。

 ガリアムは、大柄な若者で、頭には青い硬玉のついた白いダーバンを巻き、白いクルタ(丈の長いシャツ)と金色のドウティ(襞の多い下履き)、そして光沢のある真っ青な生地に金色の縁取りのあるシャルワニ(長袍)姿で現れた。あらかじめ、大公から知らせを受けていた彼は、落ち着いた態度で、フォンダンの診察を受け、リーユエンの摘出手術にも素直に応じた。ただ、フォンダンは、施術する間中、ガリアムが、舐めるような目つきで、リーユエンを凝視し続けるのが気になっていた。

 ガリアムは、卵が摘出されるや、リーユエンへ腕を伸ばし、いきなりその髪をつかんだ。そして、匂いをクンクンかいで、

「砂埃の匂いがする。せっかくの綺麗な髪が台無しだ。風呂に入って帰れ、そうすれば疲れもとれる」と、言い出した。リーユエンは、ガリアムを振り返り、術で髪をその手から取り払い、

「ありがたいお言葉ですが、私たちはまだ施術を行わねばなりませんので、これにて失礼いたします」と、挨拶もそこそこに、フォンダンとともに、足早に屋敷を去ろうとした。ところが、屋敷の中から外に出るや、屈強な下男たちに取り囲まれた。リーユエンとフォンダンは驚き、顔を見合わせた。

 ガリアムは、下男に囲まれたふたりを屋敷の中から見下ろし、

「フォンダンとかいう奴、そいつは帰らせろ。リーユエン、おまえは、たいそう綺麗で、俺の好みだ。気に入ったぞ。この屋敷にとどまって俺に仕えろ」と、言い出した。

 フォンダンは、心の中で、大変なことになった、こんな事が猊下の知るところとなったら、呪殺されてしまうぞと思った。

 リーユエンはガリアムを見上げ、

「私はすでにお仕えする主がおりますので、ご容赦ください」と、断った。けれど、ガリアムは大公の甥であり、自身の望みは必ず叶い、それが当たり前のこととして育ってきた若者だった。

「主など替えてしまえ。そんな卑しい魔導士稼業などさっさとやめて、私の側妃になれ」と、言い出した。

 あまりの自分勝手に、さすがのリーユエンも眉間に皺がより、下男を押し除け、屋敷を出ようとした。けれどガリアムは、

「言うことをきかないなら、フォンダンの首を刎ねてしまうぞ」と、凄んだ。フォンダンはあっというまに、下男二人に肩を押さえつけられ、三人目から、首筋に大きな青龍刀の刃を押し当てられた。

 ガリアムは、尊大な顔でリーユエンを見下ろし、

「言うことを聞け、私は、おまえの美しい容姿が気にいったのだ。そんな地味な服は脱いで、我が側妃に相応しい格好をしろ」と、横柄な調子で言った。

 

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