カツ丼で自白なぞはしない
連続投稿です。褒めなさい
ガシャン、と音がして扉が閉まる。
俺たちは牢屋に閉じ込められていた。
牢屋は四畳半ほどでベッドであろう藁と布団が置いてある。光は窓から差し込む陽の光しかなく夜になればなにも見えなくなりそうだ。まあ、俺は夜目がきく方だけど浅緋はどうかはわからない。
金属の格子はがっちりとしていて揺らしても何もならなそうだ。南京錠はダイヤルではなく鍵式らしい。
もともと何も持っていないため物を取られるということはなかったが、精神的なものが一気に無くなった気がする。
俺は小さくため息をつく。すると隣でドサっと音がした。俺は今度はどうしたと急いで振り向いた。
「悠、僕もう疲れた…おやすみ……zzz」
「いや、ねるな……よ」
一番張り切って休まずに歩いていた浅緋がいきなりこの状況下で寝てしまった。
大きな声で叫びかけたいが睡眠を邪魔されることの辛さはよくわかっている。
俺は声のボリュームをだんだんと下げると、近くに置いてある布団らしき物をかけた。
(薄いなぁ、今が冬じゃなくてよかった。そもそもここにも季節はあるのか?)
その布団は厚さ1センチもなかった。ペラペラとした布というわけでもないが布団としてはいささか心もとない。
(それにしても……どうしてこうなったんだ……)
俺は数時間前の出来事を思い出した。
___________________
ついに、後何メートルかの所に門が見えた。
遠くで見た時にはわからなかったが近くで見るととても、とても、カッコいい。
シンプルさがいい味を出していた。取っ手の装飾は花?でも彼岸花に似てる。縁起があまりよくなさそうだが門の取っ手としてどうなんだろうか。俺は歩きながらも取っ手を重視して見ていた。
だから気付いていなかった。門番と浅緋がお互いに警戒し合っていることに。
「そこの門番さん。よければ僕たちに向けている武器をおろしてくれないかな」
先んじて浅緋が口を開いた。それにより俺はようやく気づく。警戒の目に。
さっきから背筋がぞわぞわすると思ったらこういうことか。これは警戒?いや、それよりも殺気に近い?
気配を感じるのは得意だ。大体どんな感情を向けられてるかくらいなら昔からわかってしまう。何回それに苦しめられたことか。
「浅緋、どうしたんだ?」
「僕が聞きたいくらいだよ」
俺はため息をつくと小さく浅緋に耳打ちする。すると浅緋も小さな声で返してきた。
(あの超人の浅緋がわからないなんて)
俺は心底驚きながら門番をよく観察した。
(なんかデカくないかな!?)
門番は2メートル以上あった。それだけなら数少なくとも日本にいそうだが、実際3メートルはありそうだ。
え?なんなの?これが異世界平均?嘘だろ。流石に巨人にしか見えないよ?というかあれれー?おっかしいな〜。………明らかに腕が4本あるように見えるんですが。
観察するまでもないじゃん。違う種族だよ。だから敵対されてるんだよ。
「オイ!オまmエラ!ナニをaしテイル!!怪しい奴め!」
最初は雑音混じりで聞こえた声がだんだんとクリアになって聞こえてくる。
怪しい奴ですか。そうですか。やっぱ人と魔族?って対立してんのかな。
俺はどこか他人事のように浅緋と門番のやりとりを見つめていた。
「僕たちはたしかに怪しい奴に見えるかもしれませんが何かする意思はありません」
「では、何故ここにやってきた。」
「……その、始まりの村がここにあると聞きまして」
「何故その名を知っている!!それは我が王、魔王様がつけた物だ。お前ら人族が知るものではない!」
ここがどこかも知らず、ただ一つわかる情報を使うがどうやら悪影響だったようだ。
浅緋はどうにか言葉を絞り出すがそれも無駄に終わる。
「風の噂で少し……」
「そもそも魔族の言葉を人族が話せているという時点でおかしいのだ。……まさか、スパイか」
スパイ容疑をかけられてしまった。何ということだ。って俺もかかってんじゃん。ヤバ、俺は傍観者として見てただけだけど入ってなかったらしません?
「いえ、俺はスパイなどではなくただの一般市民でして」
「アの隊!コイツらを牢に連れて行け!」
ですよね。知ってたよ!!
門の隣の扉からわらわらと同じように腕が4本ある人が出てきた。
「「「ラジャァ!!」」」
そして俺と浅緋を拘束すると牢屋に投げ込んで古き良き鍵で扉を閉めたのだ。
___________________
はい、回想終わり。本当に予想外過ぎる。
何なんだよ、始まりの村は魔族の村でしたって。ラスボスの近くじゃん。こういうのは最終章で辿り着くものじゃないかな?というか始まりの村ってつけるくらいなら初心者育成用にでもしといてよ………。
「おい、飯食え!急げよこのオレが来てやってるんだからよぉ」
人は絶対に通らないような小さな隙間からお盆にのったカツ丼が牢屋に入ってきた。
刑事ドラマかよとこんな状況なのに笑ってしまう。
「へーへー」
俺はゆっくりとご飯を口に運ぶと口角を上げた。
なぜかカツ丼のあたりが日本人が関わっていそうだと実感させられる。味付けも日本だな。
「そんなゆっくり食って、舐めてんのかぁ!?兄貴が黙っていないぞ!?」
いや、兄貴かよ。俺は心の中でツッコミを入れながら顔を上げた。
よくアニメとかでもいそうな三下風の顔をしている。大変だ、吹き出しそうになる。
「それはこわいな、わーこわーい(棒)」
「そうだろ?そうだろう?兄貴を敬え!」
敬うの兄貴でいいんだ。というか棒読みを信じるとは、さてはコイツ純粋だな?詐欺られるタイプだな?可哀想に。
「なんだ?その目は!」
「何でもないでさー」
ふん、と鼻を鳴らすと回れ右をして帰っていく。残ったカツ丼は浅緋の分なので布を被せると朝日の隣に置いた。
俺は背中が見えなくなるまで待つとそっと起こさないように浅緋の髪からピンを抜き取った。手に金属の冷たさが伝わってくる。
(さーて、努力は報われるかな?)
1、2、3、4と頑張ってます。もちろんもう一個の方も書きますよ?本当ですよ!?