「先生、それって本当に正しいんですか」
「あの……」
「はい。いらっしゃい! どういたしました?」
「ここに来れば罪が消えるって聞いたのですが……」
「ええ! お客様ですか? どうぞどうぞ!」
「えっと、本当に消えるんですか?」
「それはもう勿論! 代金さえ支払ってくだされば!」
「結構高いですよね……」
「でも罪が消えるんですよ?」
「――それもそうか」
「ええ。さて、前払いなのですがよろしいでしょうか?」
「はい。よろしくお願いします」
***
「あの……僕、なんでこんなところに居たんでしょう?」
「ですから、急に倒れていたんですよ。ここで」
「うー……申し訳ありません」
「いえいえ。気になさらず! それではお気をつけて」
客を見送る後姿に私は告げた。
「先生……そろそろ催眠術を悪用するのはやめませんか?」
「なんで? 悪用なんかしてないよ? なんでそう思うの?」
「いや、罪が消えるなんてことはないでしょう? あれはただ催眠術で記憶をなくしているだけじゃないですか」
「? つまり罪が消えているってわけでしょ?」
本気で理解出来ないという顔をする先生に私は黙りこくるばかりだった。