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神話篇  作者: ココロ
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第四章  戦う血脈

英雄の死から始まった物語は、ついに新たな局面を迎えます。


命の欠片として生まれた十ノ同胞――その誕生と覚醒の瞬間を、どうか見届けてください。


戦いはまだ始まったばかりです。


虚空が裂けた。

その裂け目から、十の影が歩み出る。


それは、かつて英雄が命と引き換えに遺した――魂の欠片だった。


捧げられたのは、頭蓋、眼球、声帯、両腕、両脚、骨盤、心拍、臓腑、毛髪――そして、陰影。

それぞれが祈りと意志を宿し、十の姿となって地に降り立った。


 


人の形をしながらも、人ならざる存在。

彼らの身体を包むのは、羽衣のように揺れる蒼白の霊気。


歩みの一つ一つが燐光を散らし、荒廃した大地に痕を刻んでいく。


 


黒き奔流――夙罹が、彼らを呑まんと襲いかかる。

だが、十ノ同胞は一歩も退かない。


いや、恐れなど、はじめからその胸の内にはなかった。


 


それぞれが異なる力を抱え、異なる形で命を受け継ぎながらも、

彼らを貫いていたのは、たったひとつの想い。


 


「護る」こと。


英雄が守りきれなかった命を、今度は自分たちが繋ぐ。

その静かで、揺るがぬ誓いだけが、彼らを動かしていた。


 


雷鳴が空を裂き、大地が震える。

同胞の剣が振るわれ、掌が闇を払う。

声が響き、光が迸る。


そのたびに、夙罹は悲鳴を上げ、黒き霧となって空へと消えていった。


 


十ノ同胞の一歩が、鼓動となって大地に響き、

その連携は、まるで一つの命が戦場で舞っているかのようだった。


呼吸は風のように重なり、動きは音楽のように調和する。

まるで、一つの生き物が戦っているかのようだった。


 


やがて、戦いの中に確かな祈りが生まれる。

泣き声も、叫びも、懇願も――すべてを背負いながら、彼らは立ち続けた。


絶望の中に差す光となり、命なき地に色を取り戻す存在として。


 


十ノ同胞は、ただ敵を討つために生まれたのではない。


「護る」ために戦い、「託された想い」に応えるために、舞い降りたのだ。


 


戦いはやがて静けさを取り戻し、祈りとなって天へと還っていく。


そのとき誰もが、遠く揺れる空を見上げていた。


そして気づく――


この戦いは、終わりではない。

始まりなのだ。


英雄の意志を継ぐ者たちの、真なる物語の幕開けにすぎないのだと。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

十ノ同胞が初めて地に舞い降り、想いと力を示す章でした。

次回からは、彼ら一人ひとりの内面や力、そして「夙罹」という存在の真の姿にも迫っていきます。


彼らの歩みがどこへ向かうのか、よければ引き続きお付き合いください。

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