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お面のセカイ 6話

▪️セカイの今

次の日、俺はおカルマから、アジトの案内と町と災厄のことを簡単に説明してもらった。

この町は、10年ほど前までは、この付近では大きく、そして栄えている町だった。



しかし、その頃から災厄の兆しが始まったとおカルマは、説明してくれた。

最初は、町の周辺に住んでいた野生動物の町への襲撃。

そして、少しずつおかしなことが積み重なりあの日がやってくる。

この地域の冬は、どんよりと曇り、太陽を見かけることもあまりなく、雨もほとんど降らない。

しかし、その日は、雲ひとつない晴れ渡った日だった。そして次の日は季節外れの大雨。その季節外れの天気が、彼らの怯えを引き起こし始めた。

はじめに声を上げたのは長老だった。

「この異常な天候は、おそらく災厄が再び襲ってくる前兆に違いない。」と。

長老の声に導かれるように数人の男たちが声を上げ、災厄を止めようと行動を始めた。

不思議な事に、それ以降天候の不順や獣たちの暴走は減少したのではあるが、災厄に対しての怯えは、増えることはあっても減ることはなかった。

男たちの意外に賢明な調査の結果、町から少し離れたところにある館が怪しいという事になる。(俺からすると、これは誘い以外の何物でもないのだが。)


男たちは町へ戻り、長老に相談をする。

そして、ある日、町のみんなで、館を囲み、有志の数人の男たちが、館に入っていく。

館をくまなく探すが、手かがりは全く無く調査を諦めようとした時、ある男が、館の破壊を提案する。

(あー、やっちゃってんなー、と俺。)

行き場のない行動の指針を、館の破壊に向けた彼らは、1人も欠けることなく、その案に賛成をした。

そして、館を囲むように、そして館の内部の隅々まで、爆破の準備をした。そして、全員息を潜めて行く末を見守っていた。


そして、爆破が決行された。


大きな光が辺りを包み、そして時間差で爆音が空間を引き裂いた。


そして静寂が襲ってきた。


町の人々は、少しづつ立ち上がり遠巻きに館を伺ってみた。

驚く事に、館は、破壊される事なく形を保っていた。


爆破を手がけた男たちが館に向かい、そして調べるために中に入っていった。


そして、数時間後戻ってきた。

彼らは、館の内部の状況の説明と、爆破によって地下室への通路が発見されたという報告をしてきた。

長老と男たちは、しばらくの間、話し合い、長老、男たちは共に館に向かっていった。


ここからは、あくまでも想像に頼る部分があるのだが、というのも、館に向かって戻ってきたものは1人しかおらず、その男も館の出来事を全部伝える事なく、灰になって、死んでいったからだ。


男たちは、館に入り、奥で発見された地下室への階段に向かった。

そして階段を降りて、しばらく通路を歩き、突き当たりの扉をくぐった。

すると、中は眩い光に包まれた、白い空間だったらしい。

驚きながらも、彼らは中に入り、奥へと進んでいった。

広さが全く把握できない空間だったが、中心に向かって進むと、そこには、押してくださいとばかりのスイッチがあったらしい。(スイッチかぁ、、、完全にフラグにしか見えない。)

長老たちは、相談して、やはりここまできたのだから、押すべきだとの結論になり、代表して1人の青年が押すことになった。

それが、生還した青年だった。

なぜ、彼だけが生還できたかはわからないままだった。


そして、一年ほど平穏な時間が過ぎていった。

みんなの中には、やはりあの館での出来事は、災厄を起こさないために必要な行動だったということになった。


しかし、やはり事態は次第に悪化していく。


異常な天候の変化、そして作物の不作、なんとなく思いつく数々の困難。


ふたたび、館への調査が進められた。

数人の男たちが再び館への調査を行うことになった。


当然だが、彼らは戻って来なかった。


そして、次の調査隊が送られた。彼らは戻ってきたのだが、彼らはなぜか何も覚えていなかった。

だんだんと恐怖が町の人々を蝕んでいった。


話を聞いている限りは、フラグを積み重ねるだけ積み重ねている気はするのだが、、、。


そして、あの日が来た、、、らしい。


肉眼では見えない何かが町を襲ってきた。

見えない何かから逃げ惑う町の人々。

大きさも形もわからない災厄に町の人々は恐怖に逃げ惑うばかりだった。


そして、そんなある日、少女が言った。

「あそこに何か浮かんでいる。」と。

大人たちは、子供の戯言だと最初は、相手にしていなかったが、少女の指摘が破壊と一致し始めると、少女の言葉を無視することができなくなっていった。

そして、少女の父親が娘になぜ見えるのか?と尋ねた。

すると少女は、

「えっ?見えないの?お面で見れば見えるよ。」と答えた。

父親はハッとして、自らのお面を深く被り、お面を通して辺りを見渡してみた。

すると、肉眼では見えなかったさまざまなものが見えるようになった。さらには、町から遠ざかっていく災厄の形もうっすらではあるが、確認できた。

町のみんなは狂喜した!

これで、災厄から逃れられると、、、。

しかし、そんな現実は来るはずがなかった。

見えたところで、逃げることしかできない相手。

ある時は、有志が災厄に向かっていったことがあったが、存在すらなくなるほどの破壊を受け、町の人々はそれから反撃は諦めた。

その日から、見えないよりははるかにマシだが、逃げることしかできない災厄か、逃げ惑う日々を送り続けている。

ちなみに、災厄の可視化を発見した少女というのがおカルマであった。


「ふぅーー」とため息をついた俺は、おカルマを見た。

「で、これからどうするの?」


カルマは、何も言葉を発することはなかった。

沈黙と静寂と緊張がその場を支配した。それを壊したのは、おおとうさんだった。


「ニコさんには何かお考えがありますか?」と、言葉をかけてきた。

「いやないですね。今のところ。」と、俺が答えると、おおとうさんは、目を伏せた。


「ただ、俺もこのままだとみんなと同じ運命なので、足掻くことにはしますが、どこからにしましょうか?」と、言うと


「本当ですか?」と、おおとうさんの顔が明るくなった。


「ただし、情報が少な過ぎますね。調べたところで解決するかはわからないけど、何もしなければたた蹂躙されるだけなので、、、。」


「どうします?」と、おおとうさん


「館に行くことにします。」


「館ですか?」


「そうですね。今の話だと、館がポイントなのは間違いないし、何かのきっかけになっているのも、始まりがそこなのは、ほぼ間違いないでしょう。」


「、、、。」


「では、俺行ってきますね。」


「えっ?1人でですか?」


「そうですけど。ただ行き方は伺うことになると思いますが。」


「いや危険ですよ。1人なんて!」


「あっ、でも話聞く限りは人数は何の意味もなさそうなので、1人で充分ですよ。」と、俺が答えるとおおとうさんは、おカルマの方を向き、

「お前が案内しなさい。」と告げた。


覚悟をしていたのが、おカルマは、不機嫌そうに立ち上がった。


「1人で大丈夫だよ。君行くと心配だし。」と俺が言うと、おカルマは、

「足手まといっていうのか!」と叫んだ。

「いや違うよ。だって、館行った人で生きて帰ってきた人、最近はほぼいないし、君は家族いるのにそんなことしなくてもいいよ」と、俺が言った。

そこからは、「行く!」「いや大丈夫!」の押し問答がしばらく続いた。

2人が息切らしながら、言い合っていると、おおとうさんが、

「わかりました。じゃ、こうしましょう。館の見えるところまでカルマが案内する。そして、そこからはニコさんが1人で館に向かい戻ってくるのをカルマは待つ。戻ってきたら一緒に帰ってくる。戻って来なかったら、決して館に入ることなく町に戻ってきて報告する。これならどうです?」と、おおとうさんは、言った。


「いいんじゃないですか?」と、俺が息を整えながら言う。


「わかった」と、たどたどしく、おカルマが答えた。


「では、今夜はもう寝て、明日に備えましょう。」


▪️館

 館は町から離れていると聞いてはいたが、それほど遠くではなかった。

こちらから、気さくに話しかけるが、おカルマは、浮かない顔をしていた。

「どうしたのよ。浮かない顔してさー」と、俺が聞くと

「うるさい」と、小さい声で答える。

会話が続かないから、自然と言葉が少なくなる。

まぁ、特に思い入れもないので、黙って歩いていると、沈黙に耐えられなくなったのか、彼女の方から話しかけてきた。

「あのさー」とおカルマ

「なに?」と、俺。

「、、、。」

「聞きたいことあんの?」と、俺。

「、、、。」

「まぁ、いいか。」と

俺。

「、、、。」

再び沈黙が訪れる。


そのうち、館の付近にやってきた。

すると、おカルマは、立ち止まった。

「もう近くなんだろ?ここでいいよ。」と、俺が言うと

「アンタはなぜ、見ず知らずの私たちのためにそこまでやるのよ?」

「え?」

「なぜ、わたしたちのために命かけてるのよ?」

「あぁ〜、そういうことね?別に命かけてるわけじゃないよ。やらなきゃいけない事をやってるだけだよ。強制力があるかわからないけど、やらなきゃいけない感じにはなってるしね。」

「だって、誰だって死にたくないでしょ!」

「そうだね。痛いのは嫌だね。」

「痛い痛くないの話してんじゃないよ!生きる死ぬのはなし!」

「う〜ん、そこはちょっと込み入った話がありまして、、、一言では説明できないのですよ。」

「何で、急に敬語!」

「試した事ないけど、このまま、この世界で言うと災厄から目を背けて逃げて、それでどうなるかの契約の確認をしてないんだよね。」

「じゃあ、逃げればいいじゃん!」

「あっ、そうか!」

「ふざけてないで!」

「ふざけてないよ。例えば、俺みたいに違う世界から送り込まれたヒトが、このセカイのために自分を犠牲にする。というのは、約束事ではないから、ヒトによっては、最初から逃げる奴もいるんじゃないの。人それぞれでしょ。」

「あいつはそうだった!」

「あいつ?」

「そう、あいつは逃げた!私たちを置いて。」

「そいつのことを憎んでるの?」

「わかんない!でも、見知らぬ私たちのために命をかけるのもおかしいし、逃げたところで私たちには責めることはできない。だって、私たち自身で解決できないのが悪いんだから。」

「まぁ、その辺はさ、役割とかスペックとか、色々と必要なものがあるし、、、。」

「ただ、あいつには逃げてほしくなかった。それだけ。」

「信じてたんだね。」

カルマは、うつむいたまま、何も答えなかった。

(俺の前任者〜、逃げるならもっと上手くやってよ〜。めんどくさいじゃん!)

「まぁ、俺は命かけるつもりもないし、逃げる時はちゃんと話をしていなくなるから、そんなに俺に感情移入しなくて、適度な距離感で接してくれればいいからさ。」

カルマは、こちらの方をキッと睨むと、いつもと同じようなきつい口調で、

「アンタのことなんて心配してないから!自惚れんな!」と言った。

言ったし、蹴ってきた。

(これで良い。俺に気を許すな。)


「もう館だろ。ここでいいよ。」

「何言ってんだよ。ちゃんと送るよ。」

「そう?じゃよろしくー」

「あのさー、気にならないの?」

「何が?」

「アンタの前にここにきたやつ。」

「うーん、難しいな。この状況を打破するための何かの情報が含まれてるなら、聞く価値あるけど。そうじゃないなら、いらないかな。」

カルマは、再び唇を噛み締めて、下を向いた。


2人は少し小高い丘まで来た。眼下には、少しひらけた牧草地のようなものが見えた。

その先に、館と思われる建物が見えた。

「じゃ、わかったから。気をつけて帰りなよ。」

「あんた、本当に1人で行くのか?」

「特に考える必要もないな。そうだな。」

「わたしが行ってやろうか?」

「いや、いい。足手まといだから。」

再び唇を噛み締めるおカルマ


さっさと館に向かうことにした。

近くに見えた館だったが、意外にも距離があった。やっと館にたどり着くと、まずは館の周りをぐるりと回ってみた。

これといって、おかしな雰囲気はない。

一周して、再び玄関まで来た。

扉を一瞥した僕は、躊躇うことなく扉を開けて、中に入っていった。


それを少し離れたところから、カルマはじっと見つめていた。


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