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1-2:最初に経験したインパクトのある出来事って結構後を引くよね。



 今、私の目の前には、信じられない光景が拡がっている。

 波打ち際から徒歩15歩、普通に潮風で枯れ散らかしそうな距離に、マングローブでも何でもないふっつーーーの林があって、その林の地面の上で今、十人十色なサイズとカラーリングの魚の大群がビチビチと跳ねている。

 これが異世界と言うやつだろうか。いや異世界にしてもおかしいだろ!!


 「.....り、陸まで飛んでくるピラニアとかじゃないよね...?」


 さっきまでは感動が勝っていたが、”ここは異世界”。地上まで飛んで追ってくる肉食魚がいても不思議じゃないし、そもそもこの林にジャガーみたいなハンターが居ないとも限らない。

 こう考えると私はとっても怖くなって...でも直ぐに怖く無くなった。だって私、あのフリーフォールから生き残ったし。体の頑丈さには(1回分しかデータないけど)自信アリです。

 そう結論が出たら気持ちが楽になって、


 「。。。よし!焼き魚パーティーだ!!」


 目の前の魚達が美味しそうに見えて来た。

 今の私のこれの認識は、スーパーの鮮魚コーナーだ。今の私の脳内では、ててーて♪ててて♪ててーて♪ててて♪と呼び込み君のあの音楽がノリノリのビートを刻んでる。


 さて。


 「火起こしします(泣)」


 ....私の記憶の限りでは、必要な物は3つ。

・木の板

・木の棒

・綿

 木の板を削ってちょっと凹ませて、その凹みに木の棒の先端を合わせてドリル大回転させて、煙が出てきたら綿を突っ込んで、息を吹きかければボンファイアー!あとはそれを事前に組んでおいた薪に突っ込めば、火起こし完了!っていう感じだったはず。

 ちなみに普通に火の前で寝落ちしてもう一度火起こしする羽目になった。前は。


 で、問題はそれをどうやって用意するか。

 木の棒は(1度も使われなかった)銛を乾かせば行けそうで、仮に使えなくても探せばなんか見つかりそう。綿は...環境が環境だし、枯れてカピカピの葉っぱとか見つかりそう。で木の板は....................


 「....取り敢えず、ここ拠点でいっかぁ..」


 私は自分の落下地点の砂浜を、”仮拠点”にする事にした。魚の山はその後ろの林の入口にあるし、真っ二つのココナッツの殻を置いておけば目印になりそう。

 (1度も使われなかった)銛をこの砂浜に突き刺した私は、ひとまず砂浜を散策する事にした。


 ...さっきは凄い勢いで走り抜けてしまったが、こうやって歩くと案外色々見落としてるものだ。

 砂浜の林側の方にはいくつもの流木が落ちていて、その大半が丸太とかそんなサイズのやつだが、たまに小枝みたいな流木があって、私はそれを薪に使えそうと思って拾った。

 また、波打ち際の方に目をやると、たまに”現代ゴミ”的なものが漂着していた。例えば紐、布、中身の入ったガラスの瓶...メンバーがその臭いに悶絶してるあのテレビの絵面そのままの事が再現出来そうなものがチラホラと落ちていた。

 ...見つけた端から小枝を拾い集めていたせいで、私の腕は小枝でパンパンになっていた。そこで一旦拠点まで引き返し、今度は反対側の探索をしようとおもう。


 ーー荷物を置いて、2度目の探索が始まったところで、私はある事に気付く。


 「...拠点周りだけなんだな〜、綺麗なの。」


 私の落下地点を除いて、この砂浜は漂着物で溢れている事に。


 「....っふ、ほんとにゲームみたい!」


 おそらくその理由は私だろう。落ちてきた時の振動でこう、砂がいい感じに震えて重いものが下に埋まって、逆軽い砂が浮いて来た的な。砂が水みたいになってる動画がそんな感じだったし、多分そんな感じのことが起きて、そこだけ最強の砂浜になってたんだと思う。多分。そんな感じ。



 「しゃあっ!デカすぎた!」


 約30分の探索の末に私が持って帰ってきたのは、ココナッツの殻が縦に4つ横に6つ並べられるくらい巨大な板だった。見つけた時は「これだ!」とテンション上がってたのだが、いざ持って帰ってそこに置いてみると、テーブル並みにデカかった。まな板とテーブルの機能を兼ねてそう。

 この板を見つけるまでの道中にあったガマっぽい草もちぎって持って来たし、身体がガマの種まみれな点を除けば準備は万端だ。....海入ってこよ....。


 ...さて、ここからが地味だ。


 「やるぞ!」


 木の板を一通り触り、1番いい感じの凹みに棒を刺し、あとはひたすら人力ドリル。

 こういう時は無心で、目の前のそれをボーッと眺めながらやると体感時間が短く感じれていい(?)のだが.....私は、さっきの”黒い衝撃波”の事を考えていた。


 ちょっとよそ見をしてさっき寝そべっていた所を見てみたけれど、放射とか波紋とか、それっぽい形の痕跡は無かった。あるのはふつーの砂浜だけ。凄い爆発っぽかったけど、ただ見た目だけって事...?それともあのゲームで黒い床の上で爆弾を起爆したみたいなこと?にしては大層仰々しいエフェク...”エフェクト”?


 <シュリシュリシュリシュ......

 「...........。」


 ....えもしかしてこの魚、私がなんかやった結果だったりする?

 そう言えばなんか天の声が、[浮遊][愛され者]...とかなんとか言ってた気がする。私が遮っちゃったけど......あれもしかしていちばん重要なところ聴き逃した?嘘でしょ?

 ...まぁそこはもうしょうがない。それより今はこのパワーの考察が先だ。


 さてまずこの魚達。さっき私はこの魚達を「飛んでくるピラニア」と一括りにしたが、よく見ると1匹1匹に個性がある。アンコウみたいな平べったい族、カサゴみたいな華やか族、カキみたいな岩付き族、タイのような高そう族に、アジみたいなよく見る族、言語化が難しい姿の魚も多く、現代風に言えば”多様”な魚達。

 つまり何が言いたいかと言うと、この中に「飛んでくるピラニア」は居るかもしれないけど、それにしたって関係ない奴多いよね?って事。

 って事はやっぱり、この魚たちは”自らの意思で飛んで来た”のでは無く、”私が引き寄せた”という可能性が高い。

 でも音的にはそのまま”引き寄せた”って感じだけど、エフェクト的には”押し出した”の表現の方がしっくりくる。けど、その表現だと砂浜や水面に異常が無いのも不思議なところだし、じゃあ”魚に作用する力”だとして、この魚達が群れを成していたとは考えづらい。

 記憶を辿ってみると、魚達の影が海面に現れた時、その影は横に広がっていた。って事は多分この力は、デカイシャボン玉の様に”広範囲に作用する力”では無く、小さい無数のシャボン玉みたいに”1匹1匹に作用する力”って....こと?


 「ん〜........ふぁっ!?煙出てる!綿っ!!」


 とそうこうしているうちに火種ができた。手早くそれをガマの綿に移し、ふーっと息を吹きかけるとポッと小さな炎が生まれた。それを綿が焼け消えないうちに、事前に組んでおいた薪の中の小枝に突っ込むと、火が小枝に移って、”焚き火”の完成だ。サッと石を積み上げて作った壁もあるから、どっちかというと”竈”かな?

 折角つけた火が消えない様に気をつけながら、一番最初に焼く魚を決めようと思う。力の考察は後だ。


 「....うーん!」


 という訳で魚の山の前にやってきた訳だが...


 「ふふ、色ヤバ(笑)」


 ここまでやっといて今更あれだが、魚の色が全部ケバすぎて食欲消えた。まだ鯛とか蛸みたいな赤は許容できるけど、キンキラキンのゴールデンサカーナとか、ショッキングピンク&タイガーイエローみたいな色の魚は本当になんか、美味しく無さそう。

 しかも私の認識的に”この色はまぁ食べれそう”っていう奴に限って見た目が深海魚。

 ....何?ほんとに。何がどうやったらそんな姿や色になるんですか?


 ...でもせっかくここまでやったんだから、1匹くらい食べてみたい。

 そういう訳で選ばれたのは、


 「どんな味かなぁ....いやほんとにどんな味だろ。」


 このミニマグロみたいな魚だった。

 選んだ理由は勿論”マグロだったから”。正確には、マグロ”っぽかった”からだが...

 それで見た目だが、超簡潔に説明すると、”小さくスリムな体型で、鰭と尾鰭が超マッシブになって、顔面に衝角みたいな突起がある、正面から見るとてゃんでぃ!って感じのつり目のマグロ”。

 魚の山からまな板まで持ってくる時、ドルン!ドルン!と大型バイクがエンジンを吹かした時みたいに凄く強い力で暴れられたので、そこから察するに身が硬そうなのが懸念点。

 というか魚に”衝角”って....シャチが鯨の子に体当たりしてる動画を見た事があるけど、ああやって狩りをする魚って事?....異世界怖〜。


 さてまな板の上に乗ったまではいいが、どうしよう。

 私さっきこれをミニマグロとか言ったけど、ニジマスみたいに串に刺すとか絶対無理なサイズだし...そういえば魚ってなんかこう、頭に針を刺して〆るんだっk.....ミスったらめっちゃ不味くなるとかあるかな。

 ....ありそう〜


 「......でも踊り食いはなぁ...私ちりめん派だし(?)」


 ....ええい!頂きます!!!


 「たぁっ!!!!」


 覚悟を決めた私は、ミニマグロの額に手刀を振り下ろした。

 さっきの[浮遊][愛され者]の後をちゃんと聞けばよかった!の時に思い出した記憶の中で、私は[究極の肉体]という能力を持っているという事を知った。その能力の名前を直前の記憶と照らし合わせると、”とにかく頑丈で疲れと病気知らずの体”という能力だと思うのだが....探索の時のあの身軽さを考えると、多分基礎的な身体能力とかも底上げしてくれているはず。

 もう片方の[器用万能]の効果がどんなものかは知らないけど、名前的になんか行けそう!って言うことで、手刀で〆てみた。


 「しゃあっ!」


 結果は、多分成功。失敗してたらごめんなさい。

 さてここからどうやって食べるかだが、まず生は無い。魚は寄生虫とか怖いし。という訳で今の状況だと残るは”焼き”一択なのだが、身を捌くための包丁が無い。かといって、さっきのココナッツみたいに手でブチっていくのは何か抵抗がある。

 .....そういえば、石って割ったら鋭くなるかな?


 <ガチィン!

 「上手!わたし!」


 なった。

 でえっと確か、背びれと胸びれの真ん中にある頭から尾鰭に向けて走る線を目印に刃を入れる....だっけ?動画アプリで見た事ある気がするけど、多分そんなだったはず。

 プツ...と音が聞こえる程に分厚い皮を切り裂き、同じ始点、同じ終点に何回も刃を入れていると、カリカリと音が鳴った。刃が骨に達した証だ。

 次に、頭と尾鰭から身を切り離す為に、鰭の後ろと尾鰭の付け根を縦に斬る。

 こうすれば多分身が外れ.............腹切ってないじゃん。えー魚の肛門から刃を入れて腹を裂きます。

 はい身がはず...骨から身を切り離してないやん。最初に入れた切れ目にもう一度刃を入れて、アボカドとかキウイの身をスプーンですくい上げる様にして身と骨の間に刃を入れて、切り離します。


 「しゃぁっ!!!おわった!!!」


 ※終わってない。

 あまりにも分厚い皮を手でベリベリと剥がすと、そこに顕になったのは桜色の白身。

 高級牛肉の様なきめ細かいサシと、ツヤツヤの白身...テレビから引っ張り出しましたってくらい理想的なビジュの腹身だ。


 「......あそうじゃん。」


 クソデカハラミを目の前にして、私の脳内には、”数本の鉄串を刺して焚き火で炙る”という、うなぎの蒲焼に似た調理法のビジョンが浮かんでいた。

 が、ハッと我に返って「鉄串ねぇよ」と気がついた私は、仕方なく”焼きマシュマロ(キャンプ場Ver)”みたいな調理をすることにした。


 「....と、溶けないかな。」


 という訳で、余った小枝を石で削って作った串に、サイコロステーキ位のサイズに切り分けた身を刺してみたのだが...なにせ私の人生上初めての高級肉。どれ位で火が通るのか、食べ頃なのか。全部わからんから不安だ。

 まずは焼きマシュマロの経験に則り、身を軽く火に近づけてみた。と直ぐに変化が起きた。さっきの解体の過程で身の表面に溶けだした油分に火がつき、フランベみたいになったのだ。

 身をコーティングしていた分の油分がもう尽きたのか、その炎はすぐに消え、代わりにパチパチと油が弾ける音と、香ばしい匂いが漂い始めた。


 「....ほほ〜」


 クルッと焼き面を変え、火との距離を調整しながら念入りに焼くこと約3分。

 体積は減ったが、代わりに完璧な焼き色のついた串焼きが完成した。

 私はそれを、一口でいった。


 「ほほほ〜」


 蒸かした鳥の胸肉の様にホロホロとほぐれる肉と、シュークリームの様に溢れ出る汁....


 「....全然想像通りだった...」


 ”クソ美味い塩ラーメン味のココナッツ”とかいうアホみたいな前例のせいで、”予想外の味/食感”とか、”想像通りの上を行く美味”的な物を勝手に想像していたが...普通に、マグロの焼肉。

 強いて言えば”鶏肉っぽい”と感じる食感だった。私が食べていた焼鮭は、箸を入れると”ブロック毎にほぐれる”というか、年輪みたいになってる所がそのまま...輪切りの焼き玉ねぎみたいな!そんな感じだったんだけど、このマグロ(?)はその年輪が超細かくて、だからその通り”鶏肉”って感じ。

 味も何の味付けもしていない焼鮭って感じで、美味しいっちゃ美味しいけど、醤油&すり大根とか、塩の下味とかが欲しいなぁって味だ。


 「虫着くの嫌だし、全部食べっ....食べよます...」


 調味料下さい。



 「けふー...よく食べた私。エラい。」


 明らかやばい臓腑と骨を残して、私はミニマグロを食べ切った。

 結局一番最初に食べたココナッツラーメンがいちばん美味しいなぁ....


 「......何しよう...」


 で、だ。サンドボックスゲームで初ログインして魚取って食って終わりは流石に楽しんで無さすぎるってことでなにかしたい気分なのだが、何から手をつければいいのだろうか?

 ゲームじゃあんな簡単に斧とかシャベルとか作ってるけど、いざ同じ状況になったらマジで何も思いつかない。しかもゲームじゃなくてリアルだし。

 なんだろう、人を探すとか?さっきやってた能力考察も一応やる事か。後は〜....まぁ今の状況がサンドボックスゲームっぽいってだけだからなぁ。どっちかというと参考にするべきはチネリ米の方なのでは。


 「...でも何すればイィっ【クラフトテーブル化しますか?】


 「....ふへっ?」


 突然、私の頭の中にそんな声が聞こえて来た。

 その声には指向性があり、その方を見ると、さっきまでまな板としテーブルを兼用し、その前は火起こし用の板として使った板の上に、【クラフトテーブルにしますか?】という角張った白文字黒背景の吹き出しがあり、その下に【YES()】【NO】の吹き出しが表示されている。

 幾ら私が今の状況を”サンドボックスゲーム”に例えたからってこんな事ある?


 「え....は、はい...。」

 【クラフトテーブル化を実行...完了。】

 【以下のアイテムが作成可能です。】

 【斧】

 「......はおっ?」


 あった。何で??

書いてわかるトリコの凄さ。絵もそうだけど声出しって本当に大事。

もうちょっと喋らせたい...けど高校までボッチちゃんだから一人だと何も喋らなそう。

週刊連載の漫画みたいなペースで書いていきます。(かといって毎週投稿は多分無理。)

※再編集中

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