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諸葛亮に転生しました。凡人が天才を真似るなんて不可能なので、そこそこの地位を得てからのスローライフを目指したい

作者: 華洛


「はぁぁぁぁぁ。どうして……こんなことになったんでしょうねぇぇぇ」


 荊州・襄陽。

 劉表が降伏した事で、その後の手続やらの承認待ちと報告の巻物の数々。

 一箇所だけならまだしも複数に積み上げられていて、とても終わりが見えない。


「諸葛亮殿。愚痴をいう暇があれば手を動かしてください」


 諸葛亮、字を孔明。

 これが私の今世での名前だ。


 もう前世の事はあまり覚えてはいないが、残業続きで意識が盲聾として、気がつくとこの世界にいた。

 所謂、転生というものだ。

 そしてその転生先は、「三国志」「三国志演義」で有名な諸葛亮である。


 はっきり言って私は凡人だ。

 特に優秀な技能や才能があるわけじゃあない。吐いて捨てるほどいるモブ。一般人。

 それが天才軍師に転生したからといって、才能が目覚めたりするような事はなかった。


 そもそもだ。ゲームや漫画ぐらいの知識しかない私にできることなんてない。

 しかし、なにかしなくては「三国志」という乱世の世界で生き残る事はできない。

 下手に平民であれば徴兵されて死ぬ可能性が高い。

 だから、ある程度は士官して出世することを目標とした。

 

 目指せ定時上がり。ノー残業。自由時間がある仕事。幸せな結婚生活。


 曹操による徐州大虐殺を止めるため、当時、放浪していた呂布に利を説き、曹操の父親である曹嵩を助けた。


 ファザコンである曹操に恩を売ることで、私は曹操の下に幼いながらも士官に成功。

 ……なぜか呂布を配下に加えることになったが、まあ、武力が高いので護衛として最強だった。


 そこからは、ほとんど正史通りに進んだ。と、思う。

 曹操軍は、呂布軍の武将、そして徐州大虐殺で散り散りになる優秀な人材を登用したりしていたので、多少の異なりはあるだろう。


「手は動かしてますよ。愚痴っても眼の前の業務は消えないのは、散々と理解してますからね」


 同様に作業をしている私に対して冷たく言い放つのは、司馬懿、字を仲韃。

 凡人たる私にはキツイぐらいの要求をしてくる曹操。

 だから、それに対処するため、副官を欲した私は司馬懿を登用することにした。


 仮病を使い士官要請を断り続けていた司馬懿に対して、私は司馬懿の家に火を放った。

 もちろん延焼しないように細心の注意はした。

 曹操は人材確保のために山を焼き払ったエピソードからすれば、私は家一件。たいしたことはない。


 無事に士官をさせた司馬懿は、私に対して嫌がらせをしてきた。

 平凡な私には一般女性との結婚が望ましかったのだが……。

 なんと董卓の孫娘の董白と、呂布の娘である呂玲綺を、私の妻としたのだ。

 いつの間にか曹操と呂布の許可を得ていた、私も承諾する旨のサインをしていた。

 ……司馬懿に急かされて承認した中に紛れ込まされていたようだ。


 お返しにと張春華と司馬懿の仲を取りなしてやった。

 司馬懿はいやいやそうだが、しったことじゃあない。

 精々、尻に敷かれるがいい。


「……孫権攻めですが、諸葛亮殿の兄君が孫権に仕えていると聞いてます」


「ああ、瑾兄さんのこと? 長年会ってないですが、聞いた話だと、私が曹操様の下で不本意にも名をあげているにも関わらず、出世しているようなのですよ」


 諸葛瑾、字は子瑜。

 互いに仕える主君が違うので、手紙のやり取りなども全く無い。

 万が一、私になにかあったとしても家は瑾兄さんが引き継いでくれるので、私は早く隠居したいものである。


「ならば、久方ぶりに会いに行ってるか、諸葛亮」


「……これはこれは曹操さま。見ての通り書類が溜まっており、お相手することは」


「ふん。お前なら作業をやりつつ、相手ができるだろう」


 できますが、作業効率は落ちるんですよ。

 まあ、言ったところで意味がないので受け入れる。


「孫権に対して宣戦布告の使者として向かってくれ」


「……わかりました。司馬懿も連れていきますが、宜しいですね?」


「構わん」


「あと、宣戦布告の内容に、江東の二喬を妾にしたいとか書いてないでしょうね」


「書くわけないだろう――」


「なら、いいです。曹操様は美人だと人妻だろうと娶る悪癖がありますのでね。また宛城のような事があっては目も当たられません」


「――……」


 正史において宛城の戦いでは、曹操の長子である曹昂と、猛将の典韋を喪った。

 ただし私が参軍したことで、呂布もいたこともあって、曹昂も典韋も生きている。

 しかし、曹操が張繡の義理の叔母に当たる鄒氏を妾にした事は変わらない。

 ……全く人妻NTR趣向とか良い趣味をしている。

 まあ手を出すのが敵勢力で、味方からはやらないだけマシなのだろうか。


「そうだ。玲綺と白も連れて行きます」


「なに?」


「瑾兄さんに会うのなら妻二人を会わせてあげたいのです。……もしかして、妻二人を連れて行くことから、亡命をするかもしれないとお考えで?」


 ジッと曹操様と向き合う。


「いや、今の情勢でお前が孫権の下に士官する理由はない。連れて行くといい」


「ありがとうございます、曹操さま。二人も新婚旅行で喜ぶことでしょう」


「新婚旅行だと?」


「……文字通り、新婚したての夫婦が旅行することです。中々忙しくて旅行にも連れて行ってあげられなかったのでちょうど良い機会です」


「そのような事は初めて聞いたが……」


「曹操様。諸葛亮殿の独自の言動は今に始まったことではありません。――そもそも、これから攻め滅ぼす相手の陣中に、新婚旅行と称して連れて行くこと自体がおかしいです。なら、新婚旅行なら私はついて行かなくてもいいでしょう」


「司馬懿。今だからこそ見られることもあるのです。政は治める者の特色が色濃く反映される。孫権の政を肌で感じるのも勉強です」


 なにか起きたときの知恵袋は欲しい。

 私は凡人だ。何かあった時に答えてくれる参謀は是非とも傍に置いておきたかった。




 結果。

 特に何事もなく終わった。

 瑾兄さんに妻二人も紹介できたし、美味しいものや、また中原と異なる装飾品も手に入れることができた。


 襄陽に帰ってくると司馬懿は、私とは二度と使者としてついていかないと宣言された。

 

 ただ私は聞きたかっただけだ。

 

 孫堅が長安で得た玉璽を隠匿した件。

 孫策がそれを袁術に渡して、結果、袁術を皇帝詐称を後押しとなった件。

 孫権が今も尚、献帝擁する曹操に背き続ける件。

 孫家三代は以上のことから袁紹や袁術のように献帝を廃して、新しい皇帝として立ち上がりたいのか。


 結局、孫権の周りの文官たちは色々と言っていたが、孫権からは何も聞けなかったのが残念だ。


 曹操に報告に行った際は、荀彧・荀攸といった面々は「何を言ってるんだ」とばかりの顔をされて、曹操は大笑いをした。


 それから2年後。

 江夏から廬江

 長沙から柴桑

 合わせて20万を超える大軍で、孫権へ戦争を仕掛ける事になった。


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― 新着の感想 ―
こんにちは、私は三国志が好きで特に諸葛亮が好きなので、とても面白く読ませていただきました。このような諸葛亮も新鮮ですね。とても気に入ったので長編か短編でもいいのでこの諸葛亮さんにまた会いたいです。 曹…
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