第七十一話 堕天使 ♡
微エロ
ベネディクト王都、ガーランド家の別邸。
「……ぅ……ん……」
部屋の中に、大きなダブルベッドが置かれていた。
シーツがモゾつき、クエルが顔を見せる。
軽く汗ばんでいるため、薄紫色の長い前髪が額に張り付き目元を隠していた。
上体を起こすと、ハラリとシーツが落ちる。
クエルは服を着ておらず、裸体が露わになった。
幼い身体に不釣り合いな、零れるほど大きな胸が揺れる。
大きく伸びをして、クエルはまどろみを追い出す。
眠い目をこすり頭をかきながら、同じベッドで隣に眠る少年に視線を送る。
青い髪の美しい寝顔のケインを見るだけで、クエルは目元を軽く潤ませた。
ズキンッ。
「……ッ!?」
鋭い痛みを感じ、クエルは手で額を抑える。
頭だけではない、全身が筋肉痛のようにひりつくような痛みが走った。
「くっ…………っ…………うぅ…………」
クエルは寝ているケインを起こさぬようにベッドから降りると、重い身体を引きずりふらつく足取りでテーブルに近づく。
テーブルの上には、蓋の空いた小瓶と、緑色の液体が入ったギガポーションが置かれていた。
クエルは小瓶を手に取ると、中から錠剤を一つ取り出し口の中へと入れる。
そしてギガポーションを手に取ると、緑色の液体を口の中の錠剤と一緒に飲み込んだ。
身体の中で錠剤が溶けるのを感じると苦痛が消え、代わってとろけるような快美が沸き起こる。
クエルが妖艶で淫蕩な表情を浮かべ、うっとりと幸福感に浸っていると背後から声をかけられた。
「クエル」
振り返ると、ベッドの上でケインが上半身を起こしクエルを見ている。
ケインもクエルと同じく全裸であった。
訓練で鍛えられた胸をさらけだしている。
その姿を見て、クエルは美しいと感じた。
しなやかな裸体は、まるで女神に愛された天使のように見える。
「ケイン、起こしてしまいましたか」
「……また、クスリを飲んでいたの?」
クエルの飲んだ錠剤は、魔薬であるヘブンダストであった。
普通の人間であれば、自我を失わせるほどの強い快楽を与える危険な代物である。
「えぇ、少し身体の調子が悪かったので」
クエルはテーブルの上に置いてあったヘアバンドを手に取ると、ベッドに歩み寄る。
そして、ケインに一糸まとわぬ裸体を惜しげもなく見せながら、ヘアバンドで目元を隠す前髪を上げた。
青い瞳の目元が、大きなクマによって青黒ずんでいる。
完全な魔薬中毒者の顔であった。
クエルの顔を見て、ケインは悲痛な表情を浮かべる。
「……クエル、こっちへ」
「はい」
ケインが両手を広げると、クエルは導かれるようにベッドに上がった。
クエルが腕の中におさまると、ケインは背中に手を回し優しく抱きかかえる。
「……ぁんっ……」
大きな胸がムニュッと潰れ、クエルが甘い喘ぎをもらす。
「クエル、動かないで」
耳元で囁くと、ケインは魔法を唱えた。
「『高回復』『精神治療』」
クエルの身体を淡い光が包み込む。
(温かい……それに、き、きもちいぃ……)
クエルは心地よさに、ケインに身を預ける。
しばらくすると、クエルを覆っていた光が消えた。
「クエル、気分はどう?」
「……身体が軽くなりました」
クエルは上目づかいにケインを見ると、微笑んで見せる。
その笑顔が、ケインには辛かった。
「ボクのせいで、君の身体に負担をかけさせて、本当にごめん」
「気にしないでください。 ケインがいなければ、私は二年前のように狂っていました」
魔封じの指輪を外し一時的に魔力を解放したクエルは、肉体に大きなダメージを受けていた。
それに加え、媚魔薬の後遺症が酷くなり、精神にも異常を来たしたのである。
ケインが居なければ、クエルは常軌を逸するほど性的な欲望に執着し狂っていただろう。
彼の存在は、クエルにとって肉体と精神的な支えであった。
「それに、悪いのはケインの魂を狙った連中です。 ケインは何も悪くありません」
「……クエル……」
魂を狙った者達が女神教と言う事は、セリカからケインに知らされていた。
そして、女神教から自分を助ける為にクエルが傷ついた事に、ケインは心が締め付けられる思いだった。
二年前に助けられず、そして今回は逆に助けられた事で、ケインは何かを決意した顔になる。
「クエル、君に話さないといけない事があるんだ」
「話ですか?」
「ボクは、君に隠していた秘密があるんだ」
ジッとクエルを見つめると、ケインは覚悟を決めて口を開いた。
「ボクは……『天使』なんだ」
他者を圧倒する力、宮廷魔導師を軽く超える魔力。
別の世界から転生してきた女神の使い『天使』
ケインにとって、覚悟の告白であった。
天使だと知られれば、その存在は国の脅威にもなりうる。
下手をすれば、一生国の管理下に置かれるかもしれない。
「ケインが……天使……」
驚きはなかった。
確信が無かっただけで、薄々はそんな気がしていたのである。
「急にこんな事を言って驚いたよね。 でもこれはボクの覚悟なんだ」
ケインは凛々しく落ち着きのある表情でクエルを見つめた。
「ケインが天使だと知っているのは、他にいるのですか?」
「家族にも、国王陛下にも話していない。 クエル、話したのは君だけだよ」
クエルは嬉しかった。
目を閉じ、両手を胸に置き歓喜に震えた。
それほどの重要な秘密を、ケインはクエルにだけ打ち明けたのである。
再び目を開くと、両手をケインの頬に伸ばす。
「ケインが『天使』であるなら、わたしは『悪魔』ですよ」
「え?」
「わたしはケインが思っているよりもずっと、ず~~~~っと悪い女なんです」
クエルはケインに口づけをすると、そのままベッドに押し倒す。
「わたしは穢れた悪しき魂の持ち主だそうです。 この世の為にならない女だと」
それは、女神教の神官ジヴァートに言われた言葉であった。
「そんな悪魔を、天使様はどうするんですか?」
子供っぽい無邪気さとあざとさがある妖艶な、小悪魔のような笑みを浮かべた。
プリンのように柔らかで大きな胸を擦り付けると、全身をくねらせ誘惑する。
「守るよ、君が悪魔であろうと、これからはボクが君を守る」
「なら一緒に堕ちましょう。 女神に背いた堕天使となって私と共に地獄へ」
天使を堕落させるべく、クエルは素肌を重ね合わせた。
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