肝試し
私は〇〇高校の2年生、今日は友人と肝試しに心霊スポットに来ている
友紀、由美、そして私の3人がメンバーだ
私達3人は小学校の頃からの知り合いで
いつもこの3人でつるんでいる
そんな付き合いの長い私達3人の関係に最近、亀裂が入っている
この頃、友紀の付き合いが悪いのだ
原因は分かっている、友紀に彼氏が出来たのだ
そりゃあ長年の友人だし、友紀には幸せにもなって欲しい
でも、小学校の頃から10年も付き合いのある友人をないがしろにするって、どうなの?
私達の10年って彼氏よりも軽いわけ?
そう考えると何だか腹がたった
由美と2人きりの時にそんな愚痴をこぼすと
由美も同意見だった
そんなわけで、心霊系が嫌いな友紀にちょっとしたお仕置きをする為に3人で肝試しをしようと提案したのだった
お仕置きの内容は至ってシンプル、由美と私が協力して心霊スポットで友紀を驚かす、そんな単純な計画だ
時間はだいたい0:00、3人で心霊スポットの前に来ると、さっそく友紀が青ざめている
『雰囲気あるね、いかにも何か出そう』
由美の言葉に私も同調する
『ここで見たって人、メッチャ多いもんね』
友紀の反応を横目で伺うと、無言のまま懐中電灯を両手で握りしめて震えている
立ち止まったままの友紀の手を引き、私達は歩き出した
それから友紀へのお仕置きが始まった
道端に落ちてる石を指差し
『え?なにあれ?』わざと怖がって不安を煽ったり
『待って!!』って大声を出して驚かしたり
友紀の死角で小石を投げて音をたてたり
私と由美が何かを仕掛ける度に、友紀は驚き
怖がってくれた
友紀の様子は、震えながら自分を抱きしめるように両手で両腕を掴み、目には涙を浮かべてうつむいている
『…もう…帰ろ…』消え入るようなか細い声で友紀が訴える
この辺で終わりにしようかな?そう思い由美にこっそり耳打ちする
『そろそろ帰ろっか?』『もうちょっとだけ』由美が小声で返してくる
仕方ないもう少し付き合うか、そう思い由美と友紀に付いて行く
それからも由美は友紀を怖がらせ続け、私はそんな2人を眺めていた
由美が道端の石を指差し『あれ!あれ見て!』
大袈裟な声を出した時だった
『……〜〜〜!!』友紀が何かを叫んだかと思うと両手で耳を塞いだまま走り出した
私と由美は急いで友紀を追いかける
友紀の落とした懐中電灯が空間に光の輪を映し出す
私と由美は懐中電灯を拾う事も忘れ、友紀の背中を追いかける
友紀は足がもつれたようで派手に転び、その時に『ゴッッ!!』と鈍い音がした
両手で耳を塞いで走っていたので受け身が取れず、道端の石で頭を打ったようだった
『友紀!大丈夫!?』由美が駆け寄り側にしゃがみこんだ
友紀の上半身が起きると、由美の頭がガクン!と大きく揺れた
そのままうつ伏せに倒れ、由美の体が痙攣する
…え…なに…?
突然の出来事に私は状況を理解できずにいた
ゆっくりと立ち上がる友紀の髪は乱れ、頭から流れる液体で顔まで濡れていた
友紀の手には文庫本ほどの大きさの石が握られていて、石からはポタリポタリと雫が垂れていた
膝が抜けたように力が抜け、自分でも気付かずに私はその場にへたり込んだ
痙攣が次第に小さくなり、由美の頭から粘り気のある何かが流れ出る
まるで定点カメラの映像のように、由美の頭から液体が流れ出る様子から視線が外せなかった
ジャリッ。土を踏みしめる小さな音を耳が拾い
音の方に視線を向けると友紀の足が視界に飛び込んで来る
足から体をなぞるように視線を上げて見上げて行くと
友紀が先程の石を持った両手を大きく振りかぶっていた
視界が消え暗闇が広がり、私は意識を手放した
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
目を覚ますと、由美と友紀が2人並んでそこに立っていた
そっか、私の事を待っててくれたんだね
私は由美と友紀の元へ行き、2人と並ぶ
けっきょく私達って3人一緒だね
私が並ぶと3人で一緒に歩き出す
どんな時でも私達は3人だね
3人で並んで歩を進める
こうして私達3人の肝試しは幕を閉じたのだった
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
肝試しを終えた翌朝、私達3人は心霊スポットで血塗れの遺体で発見された