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ラッキースケベを受け入れるな!

➖5月25日➖蒼穹祭前日


 明日はいよいよ蒼穹祭(そうきゅうさい)ということで準備も滞りなく進んでいる……はずだった。


「おい、お前ら!部活ばっか行ってて、クラスに協力的じゃなかったくせに、今さらじゃね?」

 

「試合が近かったからしょうがねぇやん!お前らだって、こんなときだけヤル気だしてリーダー気取りってウゼェわ!」


「今お前、なんつった!」

 

「あぁ?別に……こういうときだけ気合いが入っててカッコつけんな!って言ってんだよ!俺らべつに適当でいいっちゃいいし!」


「やめなよ」「ちょっとヤバいって……」「ケンカになりそう……」


 おぉ、青春だなぁ。いわゆる文化祭あるあるってやつか。片方は、クラスで盛り上げようぜ!ウェ〜イ!って感じでもう片方は、文化祭なんてべつにどうでもよくね?って感じのモチベのギャップにお互い腹が立つやつだな。


 そして女子はこういうときに「もう、やめなよ(可愛いらしい声)!」とアホみたいに、かよわい雰囲気を出すことで逆に双方の怒りに油を注ぐ。


 場が盛り上がったところで、ウェ〜イ派の連中の一人が殴りかかるのが目に見えている。


 だが、こういうとき巻き添えを食わないように離れることが重要だ。俺くらいになると次の行動を予測して関わらないように行動する。


 無視だ、無視。こういう時に神代がいてくれたらよかったが、あいにく実行委員で不在だ。ちっ、肝心なときにはいないだよなぁ、アイツ。


 ドンッと、亀山が部活派の男子を突き飛ばす。ほらね、言わんこっちゃない。でも大丈夫、俺は亀山側に避難したから問題ない。コイツらに興味もないし、俺は俺で仕事をやっとくか。


 争い事ほど無駄なことはない。


 だが、想定外なことが起こる。部活派の男子……名前はたしか……いそ……いその……いや、磯辺だ。ヤツがまさかの反撃!


「亀山〜!」

 亀山の胸ぐらを掴みかかった磯辺が俺のほうへ突っ込んでくる。


 勢いよく俺の背中に玉突き事故だ!


 磯辺が亀山を、亀山が俺の無防備な背中を押す。


「ちょっ!」


 ということは俺も誰かを突き飛ばすことに……ま……待て……どけ!つばき!


 目の前には「麗しきミス青蘭」がいる。この体勢はまずい……このまま突っ込むと公衆の面前でラッキースケベを披露することになる!


 オープンラッキースケベだ!


 俺も故意に突っ込むわけではないから、ラッキーはラッキーだ。


 しかしオープンはまずい!


 どうせなら、廊下の曲がり角でドンッ!イタタタタ、んっ?この感触は?ちょっとどこ触ってんの!あっ悪い、わざとじゃないんだ……みたいなイベントが発生してほしい。


 嫌われ者で役立たず、ウザい、キモいは許せても……いや、キモいはキツいな……それよりもエロいや変態は避けたい。


 その通り名は、相手を巻き込む。八蓮花つばきが俺にエロいことされたなど、あってはならない。


 あくまで俺はソロプレイヤーだ。


 ソロはソロらしく自分で責任を取るべきだ!


 ん?つばき、なんだその顔は……。


 何を待ち構えてる……。


 どうぞ、いらっしゃい……じゃないわ!


 手を広げるな!せめて胸をガードしろ!


 ラッキースケベを受け入れるな!


 ちぃ、俺を舐めるなぁ〜!脇をしめて身体をひねる。前にいく運動量を横への運動量に切り替える。1回半ひねりで背中から床に倒れた。


 グシャっと何かをクッションにしてしまったが、俺は無事に自損事故で済んだ。


 静まり返るクラス内……。そりゃそうだろう、こんなコケっぷりを見れるなんて、なかなかないぞ。


 ジャッキー・チェンが敵に蹴られて、クルクルッとひねってテーブルをぶち壊すシーンがあるだろ?あれと同じことやってるんだからな。俺の隠しきれない運動神経をこんなところで……。


「これは?……」


 俺がクルクルッとぶち壊したのは「お化け屋敷」のラストを飾る「手や顔が飛び出る仕掛け壁」……創作期間一週間の大作だ。


「……ふぅ、くだらんケンカは終わったか?」

 俺はそう言った。


「デク!お前何やってんだ!」


 絡んできたのは亀山の相棒の杉下だ。杉下は亀山同様にウェ〜イ側の人間だ。この仕掛け壁を頑張って作ってきたなかの一人。怒るのも無理はない。


 亀山の相棒の杉下なら、オラオラ系じゃなく出来れば理知的に対処してほしかったと思うのは俺だけだろうか。


「どうやら、壊してしまったようだ」


「そんなことは見ればわかるやろ!どうしてくれるんだ!もう明日が蒼穹祭だぞ!」


「壊してしまったものはしょうがない。直すか別の手を考えるしかないな」


「お前が壊しておいて、なんだその態度は!?反省してんのか?」


「杉下、たしかにお前は被害者だな。これを一生懸命に作っているところを見てきたからわかる。だが俺も被害者だ」


「――は?」


「そもそも、俺は亀山と磯辺のケンカの被害者だ。お前が注意すべきは友達であるアイツらのほうだ。それとも友達だから注意出来ないか?お前らの関係ってそういうことも言えないのか?」


「――な!……デク……テメェ」


 クラスがざわつく。「なにアイツ」「責任転嫁やん」「テメェが突っ込んだくせに」「……せっかく完成してたのに……うう……」


 険悪なムードのなか、亀山と磯辺が杉下のほうに来る。


「悪い……杉下……」

「俺もごめん……何も手伝ってないのにこんなことになって……」

 亀山と磯辺が謝った。俺にではなく杉下にだ。


「……お前ら」

 杉下はそんな二人を許し、先程までのケンカが嘘のように、三人は手を取り合っている。


「良かった……」「なんか感動……」「これは友情だな」「なんか熱いね!」

クラスは一気に青春ムードになる。

 

 青春だ……これはあれだな。殴り合う二人はお互いを認め合い仲良くなるというあれだ。「やるじゃねぇか」「お前もな」みたいな感じで肩を組む青春定番の男のケンカ。そして、俺はここであえて言おう。


「まぁ、磯辺たちもこれで仕事が出来るし、みんなでやれば終わるだろう。あと俺も被害者なんだが、詫びはいいのか?」


「「「――!」」」

「壊したのはお前やんけ!」

「ぶつかったのがデクじゃなかったらこんなに壊れてねぇよ!」

「お前マジで迷惑なんだよ」


「たしかに無駄に背が高いし」「しかもクルクル回ってなかった?マジウケる」「まぁデクだし」


 クラスのヘイトは完全に俺に向いた。


 

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