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07-03



「………録画の中でアオヤギ先生のことを話しているし、ノアボックスの疑惑のことも話している。夢なんかじゃない。現実に存在していたんだよ。そして消されて、置き換えられた」


「……なぁ、ミレイ。本当に何も知らないのか?」



「…………知らないわ」


 この揺るぎようもない証拠を突きつけられてもなお、ただの一言、「知らない」か。


 ミレイが真に何も知らないただの社長令嬢であるなら、存在していた人が消されたこと、ノアボックスの過去のこと、そしてそれらを過去の自分は知っていたのに今はその記憶もないことに対して、冷静でいられるはずがない。少なからず狼狽の様子があっておかしくないはずだ。そして、自身が持っていたはずの記憶の詳細を確認しようとするのではないだろうか。

 

 さらに、この問には、ミレイがノアボックスのしていることに何も関与していないかを問うニュアンスを含めている。「本当に」の部分だ。

 それが感じられないほど鈍くはないだろう。


 疑いの目はよく刺さる。

 特に自分が疑惑の組織と深い関係にあるなら。

 

 それにも関わらず、状況の確認でもなく、弁明でもなく、淡々と「知らない」と答えるその心は――。

 やはり何かを隠している……?

 余計な質問をされないように、あえて言葉数を少なくしている……? 自分の嘘を見抜かれそうだから? 


「本当に何も知らないなら、どうやってこの指輪の存在を知ったんだ?」


「この指輪の背景には、ノアボックスとその敵対勢力との間の攻防が隠れている。ノアボックスの疑惑を知らないお前が、どうしてこの指輪の存在だけは知っているんだ?」


 じいやからこの指輪の存在を聞いた、とミレイは言った。

 いったいどんな聞き方をしたか――どういう()()にしたかわからないが、ヒカリの両親の遺品のひとつで、元はサイカワ ミソノさんの持ち物であったこの指輪を、ミレイの母――目の前の墓に眠るサイカワ ミソノさんとは別人とミレイが言い張る人物――を見つける鍵であるというのは無理がありすぎないか。

 どう取り繕おうとも、背景のノアボックスとミソノさんの敵対の歴史は隠せない。それを知らなければ、この指輪にはたどり着けない。


 少しの間、ふっと短く息を吐き、ミレイは答える。


「…………冗談よ。誰がどこで聞いてるかわからないから、知らないフリをしていただけよ。アオヤギ先生のことも、これまで得た疑惑のことも何もかも覚えているわ。その指輪の存在を聞いたのはじいやから」


 ――やはり、な。

 これ以上しらを切るのは悪手だと思ったか?

 

 秘密の綻びが解けた今、嘘を嘘だと認めた今なら、他にも隠そうとしていること、その野望までも芋づる式に引きずり出せるかもしれない。


 ――ここが勝負所かもな。

 

 サイカワの言う野望が本当に進められていることなのか。

 ヒカリのお父さん、お母さんは事故で亡くなったのではなく殺されたのか。

 俺がこれからしようとしていることを鑑みれば、これらは必ず確かめなければならないことだ。


 サイカワの話を疑っているわけではない。

 だが、一証言でしかないと言われればそのとおりだ。

 ……だから最後に確証を得たいのだ。

 ミレイ本人からの自白を聞きたい。


 きっと端からみれば随分と意地の悪い詰問に見えるだろう。

 けれど、一連の過去と疑惑を知ってしまった者として、アオヤギ先生やミソノさん、戦ってきた先人たちのためにも、ここで有耶無耶にしてはならない。


 

「冗談を言っている場合ではないと思うけどな……それにしたって、図ったようにこいつの存在を知るんだな。……どうして俺が手にしている指輪が目的の指輪だとわかったんだ?」



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