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06-02



「いよいよ最後の段だな」


「……本当にゴメンマチ家の末裔なのって感じだね。それらしいものがなんにも見つからないじゃんね」


 かれこれ二時間は確認作業を続けている。

 棚に置かれている遺品を上段の方から順にひとつひとつ手に取り、中身を検めては思い出話に花を咲かせつつ、棚に戻していった。

 どれも事故の前に共に過ごした記憶の欠片を秘めてはいたが、諜報活動への関与を匂わせるようなものではなかった。



「でもアオヤギ先生は嘘をつくような人じゃないしな。……ヒカリのお父さんとお母さん、そういう証拠を残さないように徹底してたのかな」


「そうかも。結構マメだったからなぁ……特にお父さん」


 機械いじりの得意だった、ヒカリのお父さんのことを思い出す。

 たしかに工具箱の中とかきっちりと整理整頓されていたなぁ。


「……次のは、あー、コップかぁ。そんなのまで取っといてくれたんだね」


 確認の済んでいない遺品は残り二つ。一つはヒカリがいま述べたようにコップだ。ガラスのコップ。おしゃれな模様が掘ってある。たしか……切子、と言ったか? 骨董品の類だ。


「お父さんとお母さん、好んで使ってたから。なんか捨てられなくてな」


「……ありがと。しかしいよいよ最後の一つになっちゃったね。それは……なに? 工具箱?」


 ガラスのコップを棚に戻しつつ、隣においてあった金属製の箱を取り出す。

 ……過去に見たことあるものだ。ヒカリのお父さんが機械いじりをしているときに欠かさず横に置いてあった箱。工具箱だ。

 ガチャガチャと中で音がする。そこそこに重いから、工具がいくつも入っているのだろう。


「そのようだ。というか昔見たことあるし、十中八九、工具箱だ。開けるぞ?」


「うん。……けどさすがに工具しか入ってなさそうだよね」


「そうだけど、一応な」


 直方体の工具箱の天側、短辺方向に両開きとなるその蓋を開けると、ずらりとキレイに並べられた工具たちと、その上に、手のひらくらいの大きさで厚さが二センチくらいの缶ケースが無造作に置かれているのが見えた。


「案の定、工具ばっかりだが……何だこの缶」


「……なにそれ? 見たことない……もしかして……?」


 このような缶ケースに見覚えがない。

 これまでに確認した遺品はいずれも朧げにも記憶にあるようなものばかりで、しばらく眺めてみるか、中身を見ればどんなものだったか思い出せるようなものだった。

 しかし、この缶ケースにはそのような記憶がちらりとも浮かんでこない。

 ……ということは、ヒカリと俺の目には触れなかったものであるわけで、ヒカリのお父さんとお母さんが隠していたもの、と推測できなくもない。



「もしかするかもな。開けてみてもいいか?」


「……うん」


 得体のしれぬ缶ケース。

 心臓が高鳴るのを感じる。背筋が仄かに汗ばむ。

 右手と左手に力をかける。

 かけた力に応じて、ギシギシと摩擦しながら蓋が開いていく。

 開ききったとき、その中に入っていたものは――。


「……え?」


 血でどす黒く染まった、お守りだった。




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