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01-03



「今日もお昼は部室で食べよう!お弁当作ってきたんだ!」


 二限の講義が終わり、がやがやと騒がしくなった講義室で、ヒカリが話しかけてきた。


「……いつも悪いな」


「いいのいいの!というか今日は午後の講義ないし、サークルの活動日でしょ?部室で食べるのがちょうど良いよ!」



 電脳空間の住人も飯は食う。

 電脳空間上の食材を使って、電脳空間上で作られた料理を食べている。


 腹まで空くように世界を作ったんだから、「ボックス」の開発者は相当イカれてるよな。(褒めている。)



 多くの学生たちが友人たちと連れ立って学食へ向かっていく。

 この大学の学食は美味しいらしい。


 けれどもヒカリはいつもお弁当を作ってきて、学食に行くことはほぼ無い。

 俺が学食に行くことができないから、それを気遣ってあえて学食を利用しないようにしているのだと思う。


 俺には勿体ないくらいできた幼馴染だ。



「じゃあ、接続先を私の端末に切り替えてくれる?」


「あぁ、そうだな、じゃあ一旦切るぞ」


 そうつげて一度接続を切った。



 大学は電脳空間上に存在するが、電脳空間のみならず物理空間からも学生を受け付けている。

 未来ある学生の学ぶ機会が失われないように、という理念らしい。

 それのおかげで、俺は大学に通うことができている。


 物理空間から入学する学生は決して多くはない。

 だが、物理空間の学生が、少なくとも勉学においては不利益を被らないよう配慮がなされている。


 物理空間の学生はオンライン会議のように、バーチャルカメラと呼ばれる電脳空間上に設置された仮想のカメラからの中継を見る格好で受講をするが、バーチャルカメラは最も黒板が見やすい位置に置かれているから、下手な席に座った電脳空間の学生よりもよっぽど講義が受けやすい。

 返って優遇されてるとすら思う。飯と部活以外は。



 ちなみに講義はいつも旧型のPCで受講している。機械式のキーボードと液晶パネルを備えた、古い言葉でノートパソコンと呼ばれるものだ。


 レポート作成など多量の文字を入力するときはなんだかんだ機械式のキーボードが使いやすいから、多少型が旧くても好んでこのPCを使っている。


 バーチャルキーボードも世には出回っているが、自分には合わなかった。



 偶の仕事のときも旧型のPCの方が使いやすいしな。




 ノートパソコンを閉じて、携帯用端末を手に取り、充電ケーブルを挿した。

 ヒカリにコールして、スピーカーにする。

 1コールで出た。画面が揺れている。


「いま部室に向かって歩いてるとこ。画面酔いしたらごめんねー」


「ん、大丈夫。ちょっと飯作ってるわ」


「はーい」


 ヒカリの返答を聞いてから、キッチンに向かった。

 

 冷蔵庫を開ける。種々の食材が目に入る。

 物流が止まっても3日間くらいは生活できるように、それなりに備蓄している。


 ――開けたは良いが……あまり凝ったのを作るとヒカリを待たせちゃうからなぁ……簡単なのにするか……


 そう呟いて冷蔵庫を閉じ、冷蔵庫の隣の棚を開けて、乾麺をとる。刻み海苔と揚げ玉の袋もとる。


 うどんだ。今日のお昼はうどんにしよう。



 鍋に水を張り、火にかける。


 水が温くなっているからか、すぐに沸きそうだ。


 すでに鍋の底に細かい気泡が現れはじめていた。



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