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F-108ダンジョン

 お野菜ダンジョンの場合はギルド建物を出た先にダンジョンの入り口があった。

 だが、このF-108ダンジョンは違った。

 建物内に入口があるらしい。

 更衣室から案内を見ながら移動し、地下階の一室へと入る。

 どうやら、ここはこの部屋の中に入口があり、しかも車などが通れないような広さがあまりない洞窟型の通路のようだ。


 ダンジョン入口を入り、しばらく歩いていく。

 その途中で俺は頭につけたヘッドライトと腰につけたカンテラ型ライトのスイッチを入れる。

 同じ洞窟型の通路であるお野菜ダンジョンでは必要なかったが、ここではライトが必要であると公式ホームページに記載があったから用意してきたのだ。


 お野菜ダンジョンの場合は入口を入り、しばらく歩いたら内部に開けた空間があった。

 そこは牧歌的な田園地帯のような風景で、時間を問わずに光で照らされていた。

 しかし、このF-108ダンジョンは違う。

 ここは正真正銘、洞窟型のダンジョンだという。


 この世界に出現したダンジョンは【職業】や【スキル】といったものが存在するために、しばしばゲーム的なものであると言われることがある。

 が、これは決してゲームではない。

 その理由の一つとして、ゲームとしてなら当然あるべきであるバランス調整というものがないからだ。


 このダンジョンの場合で言えば、洞窟がずっと続くにもかかわらず、ダンジョン内に光源がない。

 地下の一室に入口があり、内部は洞窟ということで、真っ暗なのだ。

 そのため、どうしても光が必要になる。

 が、LEDを用いたヘッドライトやカンテラを使っても、そこまで遠くを見通せるわけではない。

 明らかに不親切。

 だが、これこそがこの現実に現れたダンジョンなのだ。


 もっとも、ここは国からF級であるとランク付けされたくらいのダンジョンだ。

 真っ暗闇であるという点を除けば危険度は低い。

 なかにはもっと人類に対して容赦のないダンジョンもあるらしいからな。

 一歩踏み入った瞬間に火山が見えて、溶岩が漂う灼熱の大地というダンジョンもあるらしい。

 何も知らずに入れば命に係わることだろう。

 死に戻りなどできない現実ではクソゲーとののしることすらできない。

 それと比べれば、まだ洞窟内にもかかわらず酸素濃度が減って呼吸できなくなったりしないらしいこのダンジョンは良心的なのかもしれない。


「分かれ道、か。ここまでは通路で、ここから先はダンジョン内。つまり、モンスターが出るわけだな」


 入口を入り、土と岩でできた洞窟の中を進む。

 実際にはそれはまだダンジョンというよりはただの通路。

 であるのに、真っ暗な環境ということで俺の歩みは遅かった。

 しかし、そんな鈍足移動でもついに通路は終わった。

 通路を進んだ先に分かれ道があり、そこから先はダンジョンとなっているようでモンスターが出現するのだ。


 F級とされるこのダンジョンだが、お野菜ダンジョンのように非アクティブモンスターが出てくるわけではない。

 れっきとしたモンスターでこちらを認識すると襲い掛かってくる。

 だが、ここに出てくるモンスターは人間に対しての索敵能力が低く、しかも移動速度も遅い。

 つまり、ライトを用いた視界不良のなかでの探索であっても、きちんと注意して先に進んでいけばこちらが先に相手に気が付けるし、逃げることも可能。

 なので、危険度は低いとされたようだ。


「いた。あれがスライムだな」


 そんなF-108ダンジョンのモンスターは定番といえる相手だった。

 スライム。

 それがこのダンジョンに出てくるモンスターだ。

 国民的人気を誇る青色の雫型の魔物、ではなくどろっとした粘性生物といった感じだろうか。

 俺が分かれ道を右手に曲がり、そのまま常に右手を壁にして移動する右手法で進んでいたら、そのスライムを発見した。

 壁と床の境目あたりにへばりついている。


 スライムも物語などによっては強い種類も存在すると聞いたことがある。

 ねばねばした体で、その液体は酸でできているために、相手にとりつくとジュワジュワと溶かしてしまう凶悪な魔物だとかそんな感じだろうか。

 だが、ここでは違うらしい。

 少なくとも、酸はない中性の体だと公式ホームページには載っていた。


 が、決して油断していい相手ではない。

 とくに俺のようにソロでここに来た人間にとってはそうだ。

 壁にへばりつき、ゆっくりではあるが移動もできる粘性生物に、もしも顔に取りつかれでもしたらおしまいだ。

 息もできずに窒息死してしまう。


 それを避けるために、俺はこのダンジョンの情報を集めてからすぐに用意した武器を構えた。

 【運び屋】たる俺がここでレベルを上げられるかは、このスライムを安全に倒せる必要がある。

 ここで危険を冒すつもりは一切ない。

 ここは現実なのだから、安全にモンスターを倒すことがなによりも大切だ。

 俺はその構えた武器を使い、スライムへと攻撃を放ったのであった。

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