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甘々短編集

コイントスの表と裏

作者: 衣谷強

突如短編熱が再発しました。

甘々の呪いも併発してます。

ご理解の上、お楽しみいただけましたら幸いです。

「ねー、ジュース奢ってよー」

「いいぜ。このコイントスで表か裏か当てたらな」

「よーし! 表!」


「お、ここのランチ美味そうだな」

「え、でも高いよ?」

「じゃあコイントスするか? 負けた方が勝った方の代金全額持ちで」

「う……。全額はキツいから、は、半額持ちで……」

「オッケー。じゃあ勝負だ。どっちだ?」

「うー! 表!」


「あー、遊園地行きたいなー」

「じゃあ行くか?」

「うん!」

「でも普通に行くんじゃ面白くないな。コイントスで負けた方がその日一日奢りってのはどうだ?」

「……それは流石に……。パスポート代だけで……」

「わかった。よし、いくぞ」

「裏! 裏裏裏ぁ!」


「うぃー……。もういっけん……」

「もう帰った方がいいだろ……」

「やらー! まだのむのー!」

「いくら明日休みだからって飲み過ぎだって……」

「なんらー? べーとはかえりたいのかー?」

「いや、そうじゃなくて……」

「じゃーさ! こいんとす!」

「え?」

「わらしがかったらー、もーいっけーん! べーとがかったらー、さきにー、かえっていーよ!」

「……ったく、しょーがねーな。ほいっと。どっちだ?」

「おもてー!」




「……ねぇ米人べいと……」

麗愛れいあ、どうした?」


 幼馴染の真剣な様子に、米人は顔を引き締める。


「……あんたさ、イカサマしてるでしょ……!」

「何の話だ?」

「決まってるでしょ! 何かとやってるコイントスよ!」

「それの何がイカサマだって言うんだよ」

「しらばっくれんじゃないわよ!」


 顔を真っ赤にした麗愛が、机をばんと叩く。


「これまでの勝負何回したと思ってんの!?」

「んー、大小取り混ぜて、百は超えてるんじゃないか?」

「それなのにあたしが全勝って! おかしいなって思って百回全部あたしが勝つ確率を調べたら、千穣分の七とか訳わかんない数が出たんだけど!」

「たとえ百回コインの表が出ても、次に表が出る確率は二分の一だぜ?」

「そういう話をしてるんじゃない!」

「それにお前が毎回表に賭けてるなら別だけど、お前裏とかにも賭けてるじゃん」

「そういう事でもなくて!」


 麗愛はもどかしそうに机を叩く。

 米人はその肩に手をかけた。


「べ、米人……?」

「じゃあ賭けをしようか」

「……賭け……?」

「俺が何でお前とコイントスをするのか。当てられたらお前の勝ち。今の質問に正直に答える」

「……当てられなかったら?」

「俺のお願い、一つ聞いてもらおうかなー」

「……」


 悪戯っぽく言う米人。

 しかしその瞳の奥の真剣さに気付いた麗愛は、


「……やるわ」


 真剣な表情で見返した。

 そして自分の脳細胞をフル回転させる。


(……あたしの事嫌いだったら、そもそも賭けとか言わないよね……? でも面と向かって言わないって事は、そんなでもないって事で、この賭けもあたしが『あんたがあたしを好きだから』とか言ったら、『ブブー! 不正解! 自意識過剰ー!』とか言われるだろうから、ここは……!)


 結論を出した麗愛は、キッと米人を見上げた。


「あたしと一緒にいたいから! どう!?」

「理由は?」

「え?」

「それは誰でもわかる事だろ。一緒にいたくない奴と賭けなんかしないからな。なぜ一緒にいたいと思うのか、そこまで答えてもらわないと」

「う……」


 思ってもいなかった切り返しに、麗愛は言葉に詰まる。


(え、一緒にいたい理由!? ……そんなのやっぱり……。い、いや、それはいくらなんでも……。からかいたいから? 友達だから? ……うー!)


 混乱しながらも、麗愛は答えを出した。


「……あたしがからかいやすい幼馴染だから!」

「ぶっぶー。不正解。賭けは俺の勝ちだな」

「ちょっと待ちなさいよ! こんなのあんたの気持ち次第じゃない! あたしが正解を答えたって、『それは違う』って言うんでしょ!?」

「そんな真似はしない。答えは決まってたし、正解だったら素直に負けを認めたさ」

「じゃあ答えは何なのよ!」


 勢い込む麗愛が、次の米人の言葉で凍り付く。


「お前の事が、結婚して一生側にいたい位好きだから、だ」

「……へ……?」

「お前の事が好きで好きでたまらないからだ、でも正解にしてた」

「……ぅぇ……?」

「好きすぎてお前に何かプレゼントしたいけど、素直に受け取ってくれそうにないから、賭けで負ける事でお前に貢いでた、でも良かったし」

「ちょ、待って待って待って!」


 我に返った麗愛の顔は真っ赤になっていた。

 それを見つめる米人の顔も。


「……お前、相変わらずここ一番の勝負で腰引けるよなぁ。だから勝てると思ってたけど」

「……じゃあ、あたしにお願いって……」

「……わかるだろ?」

「……」

「……」


 まるで一枚のコインのように。

 二人の顔の影は一つになった。

読了ありがとうございます。


米人べいとは中学の時に「コイントスってかっけー!」となり、何度も練習するうちに、思い通りの面が出せるようになりました。

後に伏せた後の手の下で、向きを変える技術も習得しました。

その技術を全て麗愛れいあに注ぎ込む漢気よ……!


ちなみに二人の名前は、『賭けをする』のlay a betから。

苗字はめんど……、二人一緒になるから別にいいですよね?

結婚後はイエスノー枕百回連続表達成とか目指せばいいと思います。


この作品、最初は『恋するギャンブラー』だったのですが、同名の曲がある事を知り、『コイントスの表と裏』に変更しました。

「ルパパトにそんなタイトルあったかなー」って調べて良かった……。


お楽しみいただけましたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 訓練で表裏をコントロールできるとかすげーっすね。 サイコロとかも行けそう笑 将来はギャンブラーかな!?
[良い点] お幸せに……! ( *´艸`)
[良い点] ちょっぴりひねくれた、でも甘いスパダリだー!! 糖分と潤いをありがとうございます~。
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