道端の男
同じ歩調で歩いていた2人だが、帰りの道で街の様子を眺めているうちに次第に気が重くなり、速度が徐々に遅くなっていた。
白砂の通りにはぽつぽつと店がある。そして道の端には、頬のこけた青白い顔色の者達が座り込んでいたり、死んだように横になっている。
通りすがりに2人を異様な目で凝視する者や、茫然と宙を眺めている者、2人に手を差し伸べてくる者もいる。彼らに共通するのは、痩せ細り飢えていて、いつ生を終えてもおかしくない者達ばかりで、飢餓状態にあるのは明らかだった。
「彼らに渡す食べ物を用意したいが、こんなに大勢居るとなると一部にしか行き届かないだろうな」
レミアはフードを被ったまま周囲を見渡しながら言う。人数が多く通りの先の方にまで座り込んでいる者がいる。
「食料を取り扱う看板を掲げていても商品を置いていない店が多い。もしかしたら都市全体が食糧不足に陥っているんじゃないか?」
「そう、か。宿の食事も質素なものだったし、そうかもしれない。食料が不足して一番に影響を被るのは、下層の民だからな。何とかしてやりたいけど――」
その時、レミアはふと、外套の裾を引っ張られているのに気付いた。
振り返って見ると、そこには先程まで道端で座り込んでいた男がレミアの裾を掴み、縋るような目でレミアを見上げていた。
見た所、全身汚れ切ってはいるが、そう年老いてはいないだろう男は口を開き、絞り出すように言葉を紡いだ。
「あ……何か、食べ物をくれませんか。わ、私に出来ることは何でもやりますから――。お嬢さん」
「え!!」
レミアは驚いて後ろに仰け反った。
隣で聞いていたトファはレミア以上に驚いて、大きな声を出して男の傍に近寄った。
「は!? お前、何者だ?!」