都市国家カーリエ③
そうして2人は兵士に連れられて交付所までやってきた。
交付所には3名程人がいて、左右に槍を持った兵士が立ち、中央には役人らしき人物が、両手を広げた程度の幅の机の前で深刻そうに座っていた。
兵士に案内されたトファとレミアが入ると、役人は目を輝かせて背筋を正した。
「旅の者達です。通行証の発行をお願いしたいとのことです」
案内役の兵士はそう言うと、口角を僅かに上げて役人に目配せをするとそのまま元来た道へと戻った。
一瞬、得体の知れない嫌な気分になった2人だが、役人の声高の明るい声かけに咄嗟に気持ちが切り替わった。
「良く来られた。旅人は滅多に訪れないから我々は歓迎するよ。ゆっくり都市に滞在して骨を休めてくれ。通行証は、君達がどこから来たのか、どこに泊まっているのかを聞いてから発行しよう」
「俺達は――」
トファは、レミアを弟ということにして、自分がいた国を共に出立したことにして話した。レミアの出自は滅多なことでは話せない内容だ。
役人は聞いているのかいないのか、その間も笑みを浮かべ2人の顔をじろじろと眺めまわした。
「あまり似ていない兄弟だが、両親はさぞかし美形だったんだろうね。私達、役人は、旅人が来ると宮殿に報告しないといけないのだよ。この都市は閉鎖的な都市だから他国の情報は重要なんだ。宮殿から呼び出しがあれば旅の話をしてもらうことになるが構わないだろう? 宮殿に泊まれるなんて夢のような話だからね」
「――俺達は先を急いでいるので、あまりこの都市に長居は――」
「もちろん宮殿に長居をしてもらおうとは思っていない。君達が居たいだけ宮殿にいるよう話があるとは思うがね。数年前に来た旅人も最初は嫌がっていたが、居心地がいいのか宮殿で働くようになったんだ。まあ、宮殿は常に男手が足りないから丁度良い、君達も――いや、お呼びがあった時の話だ。さあ、通行証だ」