都市国家カーリエ②
次の日、2人は換金や不足しそうな物資を調達しようと街中へと向かった。
道すがら、昨夜見た街路の様子が、朝日にはっきりと晒されていて2人は目を背けたくなった。
「酷いもんだな、死人が道端に放っておかれたままか。宮殿を見る限り、もっと豊かな都市に見えたのに様子が違ったみたいだ」
「悪臭の原因は腐臭だったのか。どれもかなり痩せ細っているから、餓死、なんだろうな。生きている人間もどこか虚ろだ」
座り込み惚けている男もいれば、覚束ない足取りで杖をつきながら歩いている中年女もいる。
健常であってもどこか疲れ果てた様子で、店といった店も少なく活気が無かった。
更に2人はゆったりとした坂道を上り続け都市の中心部へと向かった。
気づいたことに、この都市の地はどこも白砂で、見る分には雪のように白く美しいが、その細かな性質のせいか、微風でも舞う砂粒の量が普通の砂より多かった。
それにより瞬く間に腰辺りまで白いものが衣服に付着しているのを見て、昨夜感じた埃っぽさもこの白砂のせいだと2人は納得した。
そのままかなり進み日が真上に上った頃、小高い丘の上にある宮殿がより近くに見え始めた。
兵士がちらほらと立つその辺りは、街並みも普通で行きかう人々の目にも生気が見えた。
一定の間隔で植樹された背の高い木々があり、2人がいる場所とは打って変わって見栄えの良い石畳が敷かれている。しかも水が弧を描く噴水すらある。
あちら側とこちら側との境界線が、兵士との間にある距離というのは明らかだった。
こちらを見ていた兵士が訝しがりながら石畳から降り、2人に近づいて話しかけてきた。
「珍しいな。その恰好から見ると旅の者だな。ここから先は中層、更には上層民の居住区だから入れないぞ。この都市国家を過ぎて先に行くなら、お前たちの通ってきた下位層の居住区を回って北門からでるしかない。あと通行証も必要になる。発行するなら交付所に連れて行こう」






