砂漠②
暫く経つと、夕陽が沈み夜の帳が下り、空には煌めくものが見え始めた。
暑さを冷ます夕風が滑るように砂面を巻き上げていく。
「今日はこの辺りで夜を過ごすか」
トファはそう言うと、背負っていた荷物をばさっと降ろして、一夜を過ごす野宿の準備を始めようとした。
同じように、レミアも近くに荷を降ろそうとしたが、ふと遠く離れた砂丘の向こうに、星ではない赤い光が散らばって広がっているのが見えた。
「あれは……」
思わず口にして目を凝らすレミアと同じ方角を見たトファは、はっとして目を輝かせた。
「あの灯りは街の灯じゃないか? 灯が移動しているようには見えないし、一か所だけ特に浮かび上がるように灯が集中している。もしかしたら砂漠に街があるのかもしれない!」
レミアは思わず声を上ずらせる。
「えっ! 砂漠に街が?!」
「ああ! 見たところ結構広い範囲だ。街――というよりも都市? 国かもしれない。ここからなら日付が変わる前には着きそうだし野宿するよりはましかもしれない。どうする? 今から向かうか?!」
「うん、行こう! 久々に屋根のある所で眠りたいからな」
2人は荷物を背負うと再び歩き出した。昼間の暑さと疲労も吹き飛んだかのように身体は軽く足は弾む。
砂漠で見つけたオアシス、いや、それ以上の癒しと憩いを期待できる場所の発見に、2人は赤い灯を目印に真っすぐに進んだ。
今はまだ、その地こそ、魔女のいる都市国家カーリエだと気づくことなく――。