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ヒロイン!!



その後のカズトの話を省略するとこうだ。


ヒロインの名前は、ニーナ・フォーゲル。俺たちと同じクラス。

エメラルドの瞳に、胸元あたりまで伸びた明るいブラウンの髪。毛量少なめ。

そして、髪のサイドにあしらわれたピンクのリボンが特徴らしい。


俺にはヒロインを陥れる予定など微塵もないので、

とりあえず何かあった時のキーパーソンとして頭に入れておく。


それから、この乙女ゲームのシナリオにおいて、

マルク・リュカス(カズト)は、全部で3人いる攻略対象の内の1人なんだそうだ。

マルク以外の攻略対象に関しても色々話を聞かされたが、すまん。今は割愛させてくれ。

話すと長くなるからな。


マルク・リュカスは高貴な生まれにこの美貌、貴族の中では誰もが知る有名人なんだとか。

メイドや料理人が驚いた様子を見せたのは、マルクが突如として現れたからだろう。

まあ、あいつの厨二行動も一理くらい関係あるかと思うが。



カズトはティーカップを口から離すと、微笑んだ。


「どうだい。これで大体のことは理解しただろう?」


「まあな。俺はこの乙女ゲームをプレイしたことがないので、この世界についての詳しいことはまだよくわからないが」


カズトが声を上げて笑う。

「そんなに綿密に理解する必要はないさ。色々とわかり切っているよりも、未知のことが多い方が、新鮮味があって楽しいだろう?」


何を言っている。

好奇心旺盛なカズト的にはそうなのかもしれないが、俺からしたら真逆だ。

色々とわかり切っている方が、エネルギー消費は最小限で済むからな。


だから仮にカズトがこの世界のことをもっと知っているならば、可能な限り話を聞いておきたいのあるが…………。

俺が言いたいことを察しているかのように、カズトはこう続ける。


「それにね。乙女ゲームの世界と言っても、僕たちプレイヤーが見ているものはその世界のほんの一部にしかすぎないんだ。だから僕も、この世界のことについては、密に理解していないんだよ」


ほう。


「そうだね。だから僕があとマコトに話せることと言ったら、悪役令嬢、レべカ・アントゥルナの悪行の数々とそのタイミングについてだね。でも、マコトにヒロインをいじめる趣味があるとは思えない。というか、マコトにそんなエネルギーがあるとは思えない」


俺はさり気なく罵られたのだろうか。なんだか微妙な言い草だな。

でも、まあ、はい。おっしゃる通りでござんす。


「だから別にこれについては話す必要はないだろう?僕がそれを話していたならば、話が始まってすぐにマコトは切り出すね、そんなどうでもいい話はしなくていい。時間の無駄だ、ってね」


よくわかっていらっしゃるようで。

カズトの俺をわかりきっているかのような言動に返す言葉も出ない。


何も言わない俺を見ると、カズトはティーカップに残った紅茶を飲み干して、立ち上がる。


「じゃあ。今日はこのへんでお開きということでいいかな」


「ああ。今日はありがとな」


礼を言う俺を見て、カズトはグッ!と親指を立てた。


「だんないよ、マコト。僕はこの世界の全てを知っているわけではないけれど、マコトよりは幾分か精通している。なにか困ったことがあったら、また相談してよ」


「そうさせてもらう」


こうして俺たちは食堂をあとにした。


昼食を召し上がっていきますか、というメイドの問いにカズトはかぶりを振った。

俺はメイドと一緒に、マルク・リュカスを見送るのであった。


「レべカ様、マルク・リュカス様とはどどど!どういうご関係で!」

マルクが出て行くと瞬時にメイドが、胸元に握り拳を2つ作って身を乗り出してきた。


………… やめてくれ。こいつとだけは絶対に誤解されたくない。

ただ、今後何かあった場合、俺はまたカズトをここに呼び出すことになるだろう。

俺は色恋沙汰話に疎いのでわからないが、今ここで、

「た、ただのお友達ですわ!」とか言っても、後々面倒になることは容易に想像がつく。


すっかり頬を紅潮させたメイドの顔が、さらに俺の顔に近づく。

む。近い。


最善の言葉を考えた結果、俺は

「さあ。どうでしょう」


「ええーーーー!!!!!!!ま、まったく!レべカ様ったら!!」


はは。こいつこんな顔もするんだな。

今後の面倒を避けるための、この解答だが、

メイドさんを少しからかってみたくなった結果でもあるというのは、まあ。秘密だ。



◇◇◇



翌日も俺は、モーリスの率いる馬車に乗って学校へ向かっていた。


今日も風が心地よい。風に身を委ね、移り変わる景色をぼんやり眺めていると、

俺の目に、昨日見ていた景色とは明らかに何か違うものが映った。


それは、道の脇で脚を押さえて座り込んでいる少女の姿だった。


その少女は、俺たちの通うベーロ・ラビーヴァ学園の生徒の証である、

あの開けるのに一苦労な革製の鞄を横に携えている。



そしてなぜか俺はその少女の姿に既視感を覚えた。

見たことのない姿であるはずなのに。


風に吹かれてなびく淡いブラウンの髪、

うつむく虚ろなエメラルドの瞳。そして、サイドにあしらわれたピンク色のリボンーーーーーー。


俺はその瞬間、既視感の正体に気付く。

それは、カズトから告げられたある人物の特徴だった。


そう。

この世界におけるヒロイン、ニーナ・フォーゲルの風貌、そのものであると。




本日もお付き合い頂き、ありがとうございまし担々麺大盛り!!!!いっちょアガりィィィ!!!

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