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俺に恋愛なんてあり得ない  作者: 詩野聡一郎
第二巻
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「よお」


 球技大会がある日は、体調不良の場合を除いて全ての生徒がグラウンドか体育館に集まっている。

 だから、普段通い慣れた教室は必然的に誰もいない空間となっている。

 D組。そこに村上の姿を見つけた俺は、いつもの朝のような気持ちで声をかけた。


「突然だからびっくりしたよ」

「そりゃ悪かった」

「いや、いいんだけど……それでなに?」


 滝川と別れた俺は、真っ先にスマホで村上に連絡を取った。

 これまで一度も送らなかったメッセージを、今日になって初めて村上に送った。

 もはや規則なんてものはどうでもいい。村上からの返信は思いの外すぐに来た。

 そして、わずかなやり取りでこのD組に集まることを決めた。


「村上に聞きたいことがあってさ」

「…………」


 村上の表情が固くなる。こりゃ図星だな。

 別にこのまま帰ってもいいけど、一応本人の口から聞いておきたい。


「悪い噂が流れてるんだって?」

「……え? 何のことだか――」


 近くにあった椅子を無軌道に蹴り飛ばして、大きな音で村上の発言を遮る。


「あ、悪い」

「…………」


 おいおい、そんなに怖がらないでくれよ。

 俺がこの程度の存在だって、村上は知ってるだろ?


「で、悪い噂が流れてるんだって?」

「…………」


 俺が二個目の椅子を蹴り飛ばす前にさっさと教えて欲しい。

 あんまりやってると、村上と絶交することになってしまいそうだ。

 それは、嫌だな。


「……流れていないと言えば、嘘になるかな」

「そう」


 二個目の椅子を蹴り飛ばした。

 席の主には本当に悪いことをしていると思う。

 できることならば、直接会って謝りたい。


「それって、七瀬を襲うとかそういうやつ?」

「…………」


 三個目の椅子を蹴り飛ばすフリだけをする。

 それだけで、村上はビクッとしてくれる。


「………そう、だね」

「そっか。ありがとう」


 望んだ回答が確認できたので、蹴り飛ばした椅子を掴んでそそくさと元の場所に戻す。

 村上はこの異様な光景に、わけのわからないものを見るような目をしているけれど、これが俺なんだからしょうがない。

 何にせよ、蹴り飛ばした椅子の表面が割れたりしていなくて安心した。

 なるべく音が大きくなっても壊れないように加減してはいたけど、自信はなかったから。


「じゃあな」


 お決まりのお別れの挨拶で、D組を後にする。

 村上が何か言っている気がするけれど、俺の心脳はそれを認識する気がないらしい。

 ただのガヤガヤとした喧騒のようにしか聞こえないよ。

 やることは決まってるんだから、もう誰の言葉も聞く気はない。

 もう、誰の言葉も――――


「……ん」


 スマホの振動音が、塞ぎ込みかけていた心の岩戸の隙間を開けた。

 せっかく聴覚をシャットアウトできていたのに、触覚は間に合わなかったらしい。

 画面を見る。


『今日、桜井の家に行く』

『パス』


 何言ってるんだ? こいつは。

 そんなことに何の意味もない。

 むしろ悪意噂を生み出すだろ。


『借り、返して』

「――――――」


 こんなことでそのカードを切るのか。

 まあ、確かに最適な場面かもしれないな。

 最適だからといって、有効とは限らないけど。


『わかった』


 でも、俺はお前の話を聞く気はない。

 この気持ちは、誰にも譲る気はない。


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