火曜日
火曜日。
瀬戸は何も聞いてこないので、俺は気楽に一日を過ごすことができた。
帰宅したあとはお湯を沸かして、カップ麺を食べ、ライトノベルを読むだけの生活。
悠々自適な一人暮らしというやつだ。
いつかは偏った食生活の反動を受けるかもしれないが、今だけは許して欲しいと思う。
食後のコーヒーに舌鼓を打つ一方で、昨日から読み始めた本については、既にだいぶ読む気が失せていた。
田中先生のことだから、どうせ途中でファンタジー要素を入れて風呂敷を広げると思っていたのだが、今のところはほとんどただの恋愛小説だ。
確かに田中先生は以前から必ずといって良いほど自著に恋愛要素を入れていたが、それはコーヒーに砂糖を一杯入れる程度の話。
これじゃあまるでカップ一杯分の砂糖を飲まされてるようなものだ。
しかも、目次をサラッと見た限りでは、なんとこれは短編集。
つまりファンタジーが大好きな俺が、「等身大の」という謳い文句の下で繰り広げられる非現実的でご都合主義的な恋愛模様を、中毒になりそうなほどに過剰摂取するということ。
うわ、想像しただけで吐きそう。コーヒーが不味くなってきた。
そもそも、よりにもよって今の俺に恋愛なんて――
「――あり得ない、よな」
幼馴染とか偽恋人とか、そうした要素を散りばめた美しい恋愛を見ても、今の俺には到底感情移入できそうにない。
こういう恋愛小説は滝川や村上、瀬戸といった普通の人が楽しむためのものであって、俺にはファンタジー小説が関の山。
俺に、恋愛小説の登場人物の心理は理解できない。
そういう星の下に、生まれている。




