買収
「まずは、魔法について教えてくれ!」
「赤子でも分かることを聞くのね」
嫌味を言わないと教えられないのか、こいつは。
「まず全ての生物には魔力と呼ばれる力が宿っているの。
そして魔力を変換して外に出したものを魔法と呼ぶわ。
魔法には5つの種類があって、それぞれ火、水、風、光、そして治癒と呼ばれているわ」
「火、水、風は分かるけど、光と治癒ってなんなんだ?」
「光は魔力を変換させずに放出した魔法よ。
形をイメージすることで、剣にも盾にもなるわ。
治癒はその名の通り生物を回復させるのよ。
でも、これは選ばれた人しか使えない魔法なの。
治癒魔法は自分の魔力を人に与えて回復させるのだけれど、普通の人がやると拒絶反応を起こしてしまうの。
だから治癒魔法を使える人は、それを活かすだけで食べていけるわ」
「治癒魔法って珍しいんだな」
「そうよ! あと、あなた魔力還元は使えるようになりなさいよ!」
でた! 魔力還元!!
「これが使えないと外で魔力を使っちゃいけないことになってるんだから」
そうだったのか。
つまり俺は未成年でタバコを吸うようなことをしたのか。しかも俺の場合、火事になりかけたし。
そりゃ連行されるわけだ。
「魔力還元は魔法の発動と逆なのよ」
「魔法は自分の魔力を変換して放出するんだよな。
ということは、魔法を自分の魔力に変換して体内に戻すってことか?」
「そうよ! 理解が早いのね」
褒められると悪い気はしない。
「魔法に関してはこんなものかな」
「じゃあ冒険者ランクについて教えてくれ!」
「ああ、冒険者ランクね。
ギルドっていうところで登録すると冒険者になれるの。
冒険者は魔獣を狩って素材を売ったり、新種の動物を見つけたりと活動は多岐にわたるわ。
冒険者にはランクがあって、下は10から、上は1まであるの。
これはギルドや街への貢献度、その人の強さを表しているわ。魔獣が出た時はその魔獣にランク付けがされて、そのランクに見合った冒険者が手配されるってわけ。
ちなみに私はランク3よ! ランク1は世界に3人だけらしいわ。
ほとんどの冒険者がランク7以下ね。
ランク5からは一気に数が減るわ」
「シャルルって実はすげぇ奴だったんだな」
「なっ、なによ! 褒めたって何も出ないわよ」
不意をつくとツンデレがでるのか。
「俺も冒険者になれるのかな?」
「なれないわよ」
えぇっ!!
「なんでだよ⁉︎」
「あなた剣闘士じゃない。忘れたの?」
忘れてたーーー!
「え、でも剣闘士って自由なんだろ?
実際、俺は今ここにいるし」
「自由じゃないわよ。
剣闘士は1番厳しい職業と言っても過言ではないわ。ほとんどの剣闘士は奴隷なのよ。自分からなろうとする変わり者なんていないわ」
「もしかして本当は俺、今ここに居たらいけない感じ?」
「当たり前でしょ。本当はダメよ」
「じゃあなんで俺はここにいるんだ?」
「異世界料理を作るためじゃない」
「それはお前の私情じゃねぇか!!」
「そうよ、悪い?」
「悪いだろ!」
とんだわがままお嬢様だ。じゃあ俺はこれから剣闘士として一生を過ごすのか!?
「なんとか剣闘士をやめられないのか?」
「剣闘士を辞めるには、闘技場で勝ち続けて貯めたお金で自分を買うか、他の人に買ってもらうしかないわね。
前者はおすすめしないわ。闘技場で勝てば勝つほど自分の価値も上がっていくからシステム的に一生無理なのよ」
それって絶望的ってことじゃねぇか。
「あなた、他にも異世界の料理は作れるの?」
口を拭きながらシャルルが聞いてきた。
「ああ、一応作れるぞ」
「例えば何が作れるの?」
「そうだなぁ、ハンバーグやエビフライ、それに・・・」
「エビフライ! それって美味しいの?」
シャルルの目が輝く。
なんだ! このエビフライへの食いつきは。
「美味しいぞ。
エビに薄力粉、卵、パン粉をつけて揚げた料理だ。
外側はカリッと、中はプリッとしていて、俺の弟も大好きな料理だったなぁ」
あいつ元気にしてるかな?
「分かった」
シャルルは突然立ち上がり、俺の目を真っ直ぐ見つめる。
「私があなたを買ってあげる」
えっ! 急にどうしたんだ?
まさか・・・
「そのかわり私にエビフライをご馳走しなさい!」
俺に向かって指を指しながら命令するシャルル。
やっぱり。こいつは食べ物が全てなんだな。
呆れて言葉も出ない。
しかし、ここで了承すれば、俺は晴れて剣闘士という束縛から逃れられる。だが、シャルルに買われて平穏な日々を過ごせるのだろうか。
悩む。俺は一体どうすればいいんだ・・・
チラリとシャルルを見る。
今までいろいろなことがあって、シャルルの顔をしっかり見れていなかったが、改めて見るとかわいい。
大きな目に長いまつ毛。小顔に適したサイズのふっくらとした唇。サラサラとしたピンク色の髪からはいい匂いがする。
だが、性格は最悪だ。
「で、どうするの?」
俺の返事が遅いからか、シャルルは少し不機嫌そうになる。
剣闘士として一生を過ごすよりも、多少、性格が悪くてもかわいい子と冒険をした方がいいよな。
「分かった。俺を買ってくれるか?」
「もちろん。そのつもりだったから」
えっ、それってどういう意味? すっごい気になる!
問いただしてみたかったが、きもがられるのは嫌だったのでやめた。
はぁ、俺ってちょろい奴だな。




