ノザキヒロト
あの日から1年。私はテンザキユウヤと初めて出会った場所に来ていた。
少しずつ不安が増していく。
本当にこんな森の中に人が突然現れるのだろうか?
もし、誰も現れなかったら? あいつの手がかりは本当に無くなってしまう。
言い知れぬ不安が私を覆い始めたその時、
「ヴァオアーーーーー!!!」
ロックベアーの鳴き声? どうして急に??
私は急いで向かった。
木々に火がついていく。
何が起こってるの?
私は無我夢中で森の奥へ進んだ。
鼓動がだんだん速くなる。
背筋には冷ややかな汗が流れるのを感じた。
茂みを乱暴に掻き分ける。
その先には、ロックベアーに襲われている1人の男の子がいた。
本当に現れた!
私は急いでロックベアーに魔法を放った。
でも待って、魔法を使ってる?
ということはテンザキユウヤとは無関係??
魔力還元を指示してみるがどうやら知らないらしい。
分からなくなってきた。こいつは一体なんなの?
とりあえず締罰隊に連れていって、素性を話してもらおう。テンザキユウヤとは無関係の可能性もある。
尋問をするのは締罰隊に渡してからでも充分できる。
その時はガルムに手伝ってもらおう。
・・・・・・
「・・・異世界から」
異世界???
やっぱりこいつはテンザキユウヤの仲間かもしれない。
もしかしたら特殊な能力を持っているかも。例えば人の生死を意のままに操る能力とか・・・
こいつの本性を暴く。
明日、もう一度ロックベアーと対戦させてやる。
・・・・・・
普通に勝っちゃった。なんの能力も使わないで。
こいつの本性を暴くには骨が折れるかもしれない。
・・・・・・
「それからもヒロトを試すようなことを沢山したわ。
ヒロトのテントに潜り込んだり、私が大食い大会に出場することでヒロトに1人で行動させたり。
でもヒロトは私が思っていたような行動はとらなかった。
いつも誰かのために行動していた。
そのうちヒロトを疑うのがバカらしくなってきちゃった。
今回の村で疑うのは最後にしようと思ったの。
わざと捕まってヒロトの反応を見よう、そう思ってたんだけど、相手が魔道具を持っていて、私の魔力の半分以上が封じられちゃった。
今回はもう駄目かと思ってたら、ヒロトが助けに来てくれるんだもの。しかも命がけで。
今まで本当にごめんなさい。
許してとは言わない。ちゃんと罪は償う。
ただ、テンザキユウヤを捕まえるまでは待ってほしい。
それだけは果たさないといけないの」
シャルルが頭を下げた。
深々と下げた頭は膝に当たりそうだった。
「いや、謝らなくていいよ」
「なんで? 今まで酷いことばかりしてきたのよ??」
「そうか? 俺は今までの冒険は結構楽しかったけど。
それにシャルルがいなかったら俺は初めにロックベアーに殺されていたし、何も知らない俺にたくさんのことを教えてくれただろ。
それでおあいこだ」
シャルルは頭を上げて、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。そして急に笑い出す。
やっぱりシャルルは笑顔の方が似合う。
「ヒロトが変わってる人だってこと忘れてた」
「そうかなぁ?」
「そうよ! だって今までの冒険が楽しかったなんて」
「本当に楽しかったぞ! シャルルはどうなんだよ?」
「それは、もちろん、楽しかったわよ」
恥じらいながら言うシャルルの顔は真っ赤だった。
よかった。
正直、ここで楽しくなかったとか言われたらショック死するところだった。
「ヒロト、ありがとう!」
少し首を傾げて、笑顔で言うシャルル。
トクンッ
なんだ今の音? なんだか顔が熱くなってきた。
「もしよかったらこれからも一緒にいてくれる?」
これって一緒に冒険しようって意味だよね?
別にプロポーズではないよね?
「テンザキユウヤを捕まえるのを手伝って欲しいの」
やっぱりそっちだよね。
よかった。早まらなくて。
異世界でスローライフを送るのも、シャルルの手伝いをしてからでも遅くないよな。
「ああ、もちろんだ!」
「ありがとう!」




