表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/49

テンザキユウヤ

一話前の「2年間お互いにあってはいけない」を3年間に変更しました。


 あの騒動から3年。

 私は闘技場のある街に来ていた。

 

 この街で1番有名な酒場に入り、席に座る。


 10分ぐらい時間が経っただろうか?

 私は後ろから突然声をかけられた。


「お姉さん1人かい?」


 振り向くと男の冒険者がいた。

 ランクは7ぐらいかな。

 派手な服がとてもダサい。

 男は私の言葉を聞かずに向かいの席に座る。

 

「俺と一緒に飲まないかい?」


 なんなのこの人。

 すごいドヤ顔をかましてるけど全然かっこ良くないんですけど。

 あとたまにみせびらかす腰の剣は一体何? 

 そこらへんで普通に買える剣じゃない!


「ごめんなさい。先約があるの」


 私はツッコミたい気持ちを抑えて言う。


「つれないなぁ。僕と飲むほうが絶対楽しいよ」


 男は私の右手にそっと手を添えた。 


 こいつはやばい!

 一体どこからその自信は湧いてくるの?

 

「俺も一緒に飲んでもいいかな?」


 後ろから声をかけられる。


 またか・・・

 

「すいません! 先約があるので」


 私はそう言って振り向いた。

 目の前にはジェシカがいた。


「ジェシカ!」


「お待たせ! シャルル」


 ジェシカが笑顔で言う。

 

「なになに、2人とも知り合い?

 俺と一緒に飲もう飲もう!」

 

 ジェシカは一つため息をついた後、急に叫んだ。


「この人、セクハラしてきます!

 誰か助けてー!」


 周りの人がざわめき出す。


 男は慌てて席を立ち、


「やだなぁ。そんなことしてないじゃないか。

 お金は置いてくから2人でゆっくり楽しんで」


 そう言って急いで店を出ていった。

 

 私の向かいの席にジェシカが座る。


「久しぶりね!」


「うん! ジェシカ、ありがとう!」


「ちゃんと追い払わないと駄目よ。

 ああいう輩はすぐ調子になるんだから」


 ジェシカに絡んだ人はかわいそうだな、そう思ったが口には出さなかった。


「ねぇシャルル。少しだけこの街に滞在してもいいかな?」


 どうしたんだろう。何か用事があるのかな?


「私は全然構わないけど」


「やったぁ! ありがとう。

 実はこの街のすぐ近くの森でホワイトウルフが出るっていう噂があるのよね。

 一度でいいから見てみたいんだ!


 よし! そうと決まれば森に行こう!!」


 そう言ってジェシカは立ち上がった。

 相変わらず強引だ。

 でもこの感じが心地よい気がした。


・・・・・・

 

 ジェシカは生物保護をメインに活動していた。

 私はグルメをメインに活動していたので、森では全く反りが合わなかった。


「シャルル、魔物を狩る時は一種一殺よ!

 生態系が壊れちゃうわ」


「ジェシカ、その部位を捨てるのはもったいないよ。

 美味しく食べられるんだから」


 こんな感じで森でホワイトウルフを探す日々が1週間続いた。



「見つからないね」


 ジェシカが呟く。


「伝説の魔物だからしょうがないよ」


「そうよね。

 よし、明日でホワイトウルフを捜すのは終わりにしましょう。明後日にはこの街を出てガルムに会いにいきましょ!」


「うん!」


・・・・・・

 

 次の日、いつも通りホワイトウルフがいないか探していると、


 ドサッ


 森の奥の方で何かが落ちる音がした。


 ジェシカと目を合わせる。

 ここは森の中だ。油断してはいけない。

 何かが落ちる音など森では聞き慣れない音だ。


 私とジェシカは周りに注意を払いながら音の鳴った方へ向かった。


 茂みをかき分けた先には1人の男の人が倒れていた。

 ジェシカが近づく。


「君、大丈夫?」


 男は私たちに気づき、立ち上がった。


「あなた達は誰ですか?」


 どうやら警戒しているようだ。

 男は一歩後ずさる。


「私たちはこの森で探し物をしていたの。

 あなたに危害を加えるつもりはないわ」

 

 ジェシカが言う。

 男は少し落ち着いたのか「分かりました」と言って警戒を解いた。


「実は僕、記憶喪失なんですよ。

 自分の名前が天崎悠也ってことしか覚えてないんです。

 ここは一体どこなのか、なぜ僕はここにいるのか全然分からないんです」


 男が言った。

 ジェシカは男に疑いの目を向けていた。

 

「ねぇジェシカ、この人かわいそうだよ」


 私がジェシカに言うと、


「そうね・・・

 街まで連れて行ってあげますか」


 そう言ってジェシカは男に手を差し伸べた。

 テンザキユウヤはジェシカの手を握る。


 私たちは街へ向かった。


・・・・・・


 宿屋でテンザキユウヤは変わった質問ばかりしてきた。

 魔法やこの世界のことなど子どもでも知っているようなことをたくさん聞いてくるのだ。

 全ての質問に答えていると知らない間に夜になっていた。


 テンザキユウヤは最後に今までで1番変わった質問をしてきた。


「もしも僕が異世界から来たと言ったら信じますか?」


「異世界? どういうこと??」


 私とジェシカは首を傾げる。


「そうですか、今のは忘れてください。

 こんな僕にいろいろ教えていただきありがとうございました。

 それでは僕はこれで」


 そう言ってテンザキユウヤは部屋を出ようとした。


「ご飯食べて行かない? シャルルの料理は美味しいんだよ!」


 ジェシカがテンザキユウヤをとめる。

 テンザキユウヤは「いいんですか」と言って嬉しそうにする。


「じゃあ私、食材を買ってくるね!」


「ありがとう、シャルル」


 私は部屋を出た。

 ジェシカのあんな顔は初めて見た。

 今日の料理はあんまり張り切り過ぎないでおこう、そう思った。


・・・・・・


 食材はこんなものかな。

 そろそろ宿屋に戻ろう。ゆっくり買い物をしたからジェシカも2人きりでいっぱい話せたはず。


 私は宿屋に入り、扉を開ける。

 部屋の中にはテンザキユウヤはいなかった。

 ジェシカはベッドの上で寝ている。


 あれ、どこに行ったんだろう?


「ジェシカ? テンザキユウヤはどこに行ったの?」


 ジェシカから反応はない。


「ジェシカ、寝てるの?」


 私はジェシカの肩を揺らす。

 それでも反応はない。


 何かがおかしい。


「ジェシカ!」


 もう一度肩を揺らす。

 ジェシカは全く動かなかった。

 まるで死んでいるかのように・・・


 私は急いでジェシカの胸に耳を当てる。

 ジェシカの心臓は動いていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ