表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/49

劇場


「思ったより早く終わったし、少しこの街を観光していくか?」


 ガルムが私たちに提案してきた。


 アブドヘルムは今まで冒険をしてきた中で1番大きな街だった。様々なお店が立ち並び、街の中心には大きなお城が建っている。


 私たちは「やったぁ!」と声を揃えていった。


 

「ガルム、あれ何?」


 ジェシカがある建物を指差して言う。

 その建物は大きな楕円形の入り口をしており、入り口の手前には横に長い階段が50段ほどあった。

 他の建物よりも煌びやかで、壮大な建物だった。


「あれは劇場だよ。中で演劇や歌などが見れるんだ」


「私あそこに行ってみたい!」


「劇場にか? それは無理だな。

 あそこのチケットは予約制なんだよ。きっと2ヶ月待ちとかだぞ。

 しかも劇場なんて行ってもつまらないぜ」


「ガルム劇場に行ったことあるの?」


「一回だけな。ここの王様に誘われて」


 王様に誘われて? そんなことってあるの??

 ジェシカも驚いているようだった。

 しかしすぐに、


「じゃあ王様にお願いしてチケット貰ってよ」


 とジェシカはガルムにお願いし始めた。

 私も興味があったのでジェシカと一緒にお願いした。


 すると突然後ろからガルムを呼ぶ声が聞こえた。

 振り向くと先程会ったギルドマスターがそこにいた。


「ガルム、やっと見つけた」


「なんだよ、もう俺は専属の冒険者にはならないって断ったはずだぜ。

 俺たちは今から劇場に行くんだ。邪魔しないでくれ。

 シャルル、ジェシカ行くぞ」


「違う、その話じゃないんだ」


 しかしガルムはギルドマスターの言葉を聞かず劇場へと向かった。

 私とジェシカは顔を見合わせて笑った。そしてギルドマスターに感謝の気持ちを込めて軽くお辞儀をしてガルムの後をついて行った。


・・・・・・


 ガルムは受付で係員の人と話をした後「ちょっとだけ待つぞ」と言って座った。私たちもガルムの横に座る。


 劇場の中にいる人はどうやら貴族が多いらしい。皆、タキシードやドレスを着ている。

 私たちだけが普通の格好をしておりとても恥ずかしかった。周りの視線が痛い。


 待つこと15分、突然奥の方から女の子が走ってきた。

 綺麗な金髪に青い瞳。誰が見ても可愛いと答えるだろう、そんな女の子だった。


「ガルム〜〜〜〜〜!!!」


「よお、ソフィア。元気だったか?」


「もうすっごい元気よ! ガルム見にきてくれたのね!!」


「まあな。ただ俺たちチケットを持ってないんだよ。

 ちょっと融通をきかしてくれねぇか?」


「いいわよ! もうタダでいいわよ!!

 特等席に案内してあげる!!!」


「本当か! 助かる。

 よし、お前ら行くぞ!」

 

 女の子はそこで初めて私たちを認識したのか顔を曇らせる。


「その子たち誰?」


 女の子の顔からは笑顔が消えていた。

 冷ややかな視線が私たちを貫く。


「こいつらか。

 まあ俺の弟子みたいなもんだ」


 ジェシカが一瞬ニヤッと笑うのを私は見逃さなかった。


「私たちは弟子じゃないって言ってなかったっけ?」


 ジェシカがガルムに上目遣いをしながら言う。


「いや、言ったけど」


「じゃあ誰なの?」


 女の子がガルムに詰め寄る。

 ガルムがたじろぐ。


 初めて見た。ガルムがたじろぐ姿。

 私とジェシカは笑いを堪える。


「まあいいわ。ガルムの妻になるのは私だから。

 あなたたちレベルなら負けないしね」


 女の子はそう言うと「ついてきなさい」と言って歩き出した。


「なにあの子、むかつく」


 ジェシカがぼやく。

 私はガルムに気になったことを聞いた。


「あの子とはどういう関係なの?」


「襲われてるところを助けただけだよ。

 その時に俺に惚れてくれたみたいなんだが、俺は年上の人が好きだからなぁ。

 だが、あいつの歌声はすごいぞ。世界一だ」


 そんなにすごいんだ。歌なんて今まで路上で人が歌っているものしか聞いたことがなかった。

 歌でこんなにも人が集まるなんて未だに信じられない。

 私は期待で胸を膨らませた。


・・・・・・


 私たちは二階席に案内された。この二階のスペースには私たちしかおらず、本当に特等席だった。周りの視線が痛かったのでこの席につけて心底ホッとした。


 ホールが真っ暗になる。

 一筋の光が舞台の中心を照らす。


 そこには先程の女の子がいた。

 凛とした出で立ちで舞台に立つ彼女は私たちと話していた時とは別人だった。

 

 彼女が歌い始める。

 その声はホール全体に響き渡る。

 時に激しく、時に穏やかに響く彼女の歌声は私を圧倒した。

 この時間が一生続けばいいのにと思うほどだった。


・・・・・・


「凄かったね!」


 舞台が終わり私とジェシカは盛り上がっていた。


「終わったのか?」


 ガルムが寝ぼけ眼で言う。


「信じられない。ずっと寝てたの?」


「ソフィアの歌を聞くと絶対に眠っちゃうんだよな。

 世界一の子守唄だよ」


 世界一ってそういうこと⁉︎


「ガルム〜〜!!」


 二階席に突然ソフィアが現れた。


「私の歌聞いてくれた?」


 ソフィアが笑顔でガルムに聞く。


「あ、ああ。良かったぞ」


 ガルムの視線が泳ぐ。

 ジェシカは呆れ顔だ。


「今から2人でディナーにしましょ!」


 そう言ってソフィアはガルムの腕を掴んだ。


「待て待て待て! こいつらも一緒でいいか?」


 ジェシカがガルムの耳元に近づき呟く。


「寝ていた罰よ」


 その後、姿勢を戻し


「ソフィアさん、とても感動しました。

 ガルムとのデート楽しんできてください!

 シャルルもいいよね?」


「もちろん。ソフィアさん今日はありがとうございました。

 明日もこの街にいる予定なので、2人でゆっくりしてください」


「おい待てお前ら。裏切ったな!」


「とてもいい子達じゃない。また一緒に食事でもしましょ!

 それじゃあね」


 そう言ってソフィアはガルムを引っ張って出ていった。

 ガルムは「覚えとけよー!」と叫んで消えていった。


・・・・・・


「私、ソフィアさんのファンになっちゃった」


「私も!」


 劇場から出た後も私たちは先程の歌の話をしていた。

 ソフィアさんと食事に行くのが楽しみだと話していた時、突然声をかけられた。


「シャルルさんだね。少しお話をしたいんだが食事でもどうかな?」


 声をかけてきたのはギルドマスターだった。


「シャルル、こんなやつほっといて行きましょ」


 ジェシカが私の手を掴む。

 ギルドマスターが言う。


「君のお父さんとお母さんについてなんだが」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ