ジェシカ
「あ、起きた!」
目を覚ますと目の前に先程の女の子がいた。
「よかった! 心配したんだよ」
「お、目が覚めたのか」
男の人が部屋に入ってきた。果物が入ったカゴを持っている。
私はこの人たちに助けられたんだ。
「助けていただきありがとうございます」
私は頭を下げた。
「頭なんか下げなくていいよ。大変だったね。
私はジェシカ。よろしくね!」
「俺はガルムだ。よろしく」
私は差し出された2人の手を順番に握った。
「でもなんであんな奴らに不覚をとったんだ?
君ならあんな奴ら、敵じゃないだろ?」
ガルムが不思議そうに聞いてきた。私は事情を説明した。お金に目が眩んだこと、レッドゴリラにダメージを与えられたことなどだ。
ジェシカとガルムは笑わずに聞いてくれた。
私が話し終わった後、ジェシカがガルムに言った。
「ねぇガルム。この子も弟子にしてあげられないかな?」
「だからお前は弟子じゃないって言ってるだろ」
「細かいことは気にしなくていいの。
ね、いいでしょ? この子も私と一緒に教えてあげてよ」
「また俺がロリコンだと思われちまうじゃないか」
「ガルムが好きなのは年上のお姉さんだもんね」
ジェシカが笑いながら言う。ガルムは「当たり前だ!」と胸を張った。何が当たり前なのかは分からなかったが、2人のやりとりは私にとってとても暖かかった。
「あはは!」
私は笑った。ジェシカとガルムはそんな私を見た後、顔を見合わせて笑った。
「分かったよ。この子だけだからな」
ガルムがジェシカに言った。ジェシカは「やったぁ!」と喜び私の両手を握った。
「これからよろしくね!」
私の両手を握るジェシカの手はとても暖かかった。
・・・・・・
「シャルルです。よろしくお願いします」
「そんなにかしこまらなくていいよ」
ジェシカが笑いながら言う。
「そうだぜ、女性冒険者は威張ってるぐらいが丁度いいんだ。そうじゃないと舐められちまうからな」
ガルムがジェシカを見ながら言った。
ジェシカが「そんなに威張ってないもん!」と言って口を膨らませる。
本当に仲がいいんだな。こんなに仲のいい2人の間に私なんかが入ってもいいのかな。
そう思っているとガルムが1つの提案をしてきた。
「そうだ。お前ら今から2人で買い物に行ってこい。
買い物リストも渡しておく。余った金は自由に使っていいからな。
俺はちょっと用事があるから出かけてくるわ。
ジェシカ、騒動を起こすんじゃねぇぞ」
「分かってるわよ」
そう言ってジェシカはガルムから買い物リストとお金を受け取った。
ガルムは「また後でな」と言って部屋から出て行った。
「私たちも行きますか!」
「うん!」
私は初めて買い物が楽しみだと思った。
・・・・・・
「ジェシカ、一つ聞いてもいい?」
私たちはガルムが渡してくれた買い物リストに書かれているものを市場で買っていた。買い物リストには様々なものが書かれていた。回復薬や解毒薬はもちろん、牛の肉などの食材も書かれていた。
今日の晩ご飯かな?
「いいよ」
ジェシカがこたえる。
「なんでジェシカはガルムと一緒にいるの? 兄弟ってわけではなさそうだし」
「ああ、それはねガルムは私に借りがあるからなの。
私は2ヶ月前まであるクランに所属していたんだけどガルムが潰しちゃったのよね。しかも潰した理由がなんとなく気に入らなかったからっていう理由なのよ。おかしいでしょ。
私みたいな女を雇ってくれるクランなんてそうそうないし、1人で行動できる強さなんて私にはなかった。
だから私はガルムに言ったの。私が1人でも生きていけるようになるまで手伝いなさいって。
最初はガルムも断ってたんだけど、私がしつこくついて回ったらオッケーしてくれた。
まあそんな感じで今はガルムと一緒に行動してるかな。
仲間がいるっていうのはいいよ。どうでもいいことでさえ楽しくなるしね!」
そうだったんだ。ジェシカはとてもたくましいな。
私なんて逃げてばかりだ。人と関わることから逃げ続けた結果がこれだもの。簡単に騙されたり、ピンチになっても助けなんて呼べない。
「うらやましい」
私は知らぬ間に呟いていた。
ジェシカが驚いた顔をする。
しまった。人の苦労も考えないで勝手にうらやましいだなんて。考えたら分かるはずだ。私と同じくらいの年からクランに入っているジェシカが今まで苦労していないわけがない。
私は恐る恐るジェシカの顔を見た。
ジェシカは笑顔だった。
「嬉しいな。そう言ってもらえて。
私なんてろくな人生を歩んでいないから、そんなことを言われたのは初めて。そう言ってくれるとなんだか今までの人生も無駄じゃなかったんだなって思えるよ。
だって今までの全てが今の私をつくってるんだもん。
シャルルにうらやましいって言われる自分になれてよかった!」
私は息が詰まった。
そんな考え方、今までしたことなかった。
「さあ、残りの買い物も終わらせて余ったお金でアイス食べよ!」
ジェシカは私に笑顔を向けながら言った。
私は今までずっと自分の過去のことを気にしていた。でもそれは間違いなんだ。今が大切なんだ。
私達は買い物を終えてガルムと合流した。ガルムに何をしていたか聞いても教えてくれなかったが、ガルムは私が仲間に加わることを祝ってケーキを買ってきてくれていた。
次の日からは、森で修行をしたり依頼をこなしたり、村の祭りに参加したりと楽しい日々を過ごした。
しかしある事件が起こり、この楽しい日々は崩れ去ってしまう。




