救い
私は1人の男に担がれた。男が歩くたびにレッドゴリラに殴られた骨がきしむ。私は痛みと悔しさで涙が出た。
「おい、こいつ泣いてるぞ」
「お嬢ちゃん。これからもっと苦しいことが待っているんだよ。こんなことで泣いてちゃいけないよ」
男達は大声で笑う。
私は泣くことしか出来なかった。
その時だった。
「こっちの方だって。あいつらが女の子を連れて森の奥に進んでたんだよ」
「見間違いじゃないのか?」
「本当だもん」
前の茂みから声が聞こえた。ガサガサと茂みをかき分ける音がする。
「おい、やべぇぞ。どうする?」
「お前ら急いで隠れろ!」
男達は取り乱していた。他の人に見つかるなんて予期していなかったのだろう。急いで隠れようとしたが間に合わなかった。
茂みから人が出てくる。
出てきたのは私と同い年ぐらいの女の子だった。黒い髪は肩のところまで伸びていて、金色の瞳をしていた。
「見つけた!」
女の子は男達を指差して叫ぶ。
男達の表情に余裕が生まれる。当然だ。小さな女の子にこの現場を見つかったところで口封じすれば良いだけのこと。ましてやこの女の子もさらってしまえば利益は相当なものになるだろう。
「その子を離しなさい!」
女の子は叫ぶ。男達は顔を見合わせて笑う。
「できるもんならやってみろ!」
私は痛みで意識が朦朧としていたが、残りの力を振り絞って叫んだ。
「逃げて! 私は大丈夫だから」
体に激痛がはしる。もう次は叫べない。
お願いだから逃げて。
そんな願いは儚く散った。
「必ず助けるから。安心して」
女の子は私に優しく微笑みかける。
ああ、この子ともっと早く出会っていれば。
この子とならきっと友達にだってなれただろう。きっと冒険だって楽しかっただろう。きっと毎日希望を持って明日を迎えられただろう。
そんなことを今願ってもしょうがない。もうどうにもならないことだ。とにかくこの子をこの場から引き離さないと。
しかし私の体はもう1ミリも動かなかった。
「今日は本当についてるぜ!」
男はそう言って女の子に襲い掛かった。
女の子は男の攻撃を受け止めると左手から水魔法を放ち男を吹き飛ばした。
「こいつ、結構やるじゃねぇか。4人で行くぞ」
そう言って男は私を放り投げた。激痛がはしる。
しかしそれどころではなかった。男達は連携して女の子を攻撃していた。女の子は男達の攻撃をかわすが、どんどん余裕がなくなっていく。
このままじゃ危ない。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
突然背後から声をかけられた。そこには大きな男の人が立っていた。
「大変な目にあったなぁ。今回復してやるからな」
そう言うと男は腰の巾着から回復薬を取り出して私の口へと運んだ。
痛みが引いていく。
私は急いでお願いした。
「あの女の子を助けてあげてください!」
男の人は少し不満そうな顔をしたが、
「まあそうだな。苦戦しているみたいだし助けるか」
そう言ったのも束の間、男の姿がその場から一瞬で消えた。
「ちょっと! 助けない約束だったじゃない!!」
女の子が叫ぶ。
女の子の方を見ると、男が1人吹っ飛んでいた。頬を殴られたのだろうか、口を大きく開け歯が何本か折れている。
「あのお嬢ちゃんに頼まれたんだよ」
男の人は頭をかきながら言う。
「お、お前はガ・・・」
男が吹っ飛ぶ。あっという間にチームのメンバーは2人になった。
女の子と男の人は互いに背を向け相対していた男を吹っ飛ばした。
「もう! 私1人でも出来たんだから」
女の子は文句を言いながらこちらに歩いてくる。男の人は「ごめん、ごめん」と謝っていた。
「えっ! 手足の紐切ってないじゃん!
何してるのよ!!」
「あ、忘れてた」
おかしな人たち。
私は今まで耐えてきた集中力が切れ、その場で意識が途切れてしまった。




