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シャルル


「シャルル、あなたのひいお爺さんは戦争を止めた英雄なのよ」


 お婆ちゃんは寝る前にいつもこの話をしてくれた。私はこの話が大好きだった。お婆ちゃんが嬉しそうにこの話をするので私も何だか嬉しくなるのだ。


「ひいお爺さんはね、戦争中の軍隊に向かって一人で突っ込んで行ったのよ。軍隊はとても驚いたらしいわ。だって知らない人がいきなり乱入して暴れだすんですもの。でも誰も止められなかった。それほどにひいお爺さんは強かったの。


 ひいお爺さんが戦争を止めた理由は、戦争に嫌気が差したから、国が気に入らなかったからとかいろんな噂が飛び交っているけどどれも正しくないわ。


 ひいお爺さんはね、ドラゴンを食べてみたかったんですって。山脈に登ってドラゴンを狩ろうとしたんだけど国が捕らえた後だったの。だからひいお爺さんは戦争で使われているドラゴンを捕らえて食べるために軍隊に突っ込んで行ったのよ」


 お婆ちゃんは話し終わるといつもクスクス笑った。

 そして「おかしな人よね」と嬉しそうに言うのだ。

 そんなお婆ちゃんを見て私はいつも幸せな気持ちになった。


・・・・・・


 私のパパとママは冒険者だった。


「シャルル、行ってくる」


「お婆ちゃんの言うことをしっかり聞くのよ」


 私が5歳の頃、パパとママは冒険者の仲間たちと一緒にドラゴンを狩りに出かけた。

 私は誇らしかった。いつもお婆ちゃんが言っていた話に出てくるひいお爺ちゃんのようにパパとママもドラゴンを倒すんだ。


 パパとママは1年後に戻ってくるという約束をして家を出て行った。


 しかし1年たってもパパとママが帰ってくることはなかった。それからだった。周りの人達から責められるようになったのは。パパとママはドラゴン討伐のチームリーダーだったのだ。

「お前の両親のせいでお父さんが帰ってこないんだ」「なんでドラゴン討伐なんか言い出したんだ」「責任をとって死ね」そんなことを毎日言われるようになった。



 1年と半年、お婆ちゃんが倒れた。もともと病気がちだったお婆ちゃんはそれから寝たきりになった。

 それでもお婆ちゃんは


「パパとママは自分の信念を貫き通したんだ。仲間の人達だって覚悟していたはずさ。今は分からないかも知れないけどいつかわかる日が来るから、どうかパパとママを許してあげてね」

 

 と言っていた。しかしその言葉を言うお婆ちゃんは悲しそうだった。

 パパとママが家を出て2年、お婆ちゃんは亡くなった。


 私は街にいられなくなり、パパとママが残してくれたお金で冒険者となって街を出た。それからは毎日を生きるために冒険者として活動し続けた。

 幸いにも私は他の人より魔法のセンスがあり、なんとか1人で生きていくことができた。

 

 いろんなチームを転々としていた頃、あるチームと出会った。そのチームはランク7の男性冒険者が4人集まったチームだった。

 その時、私はランク5だった。


「お嬢ちゃん、ロックベアーの討伐について来てくれないかい?」


「ロックベアーならあなた達だけでも充分倒せるんじゃないですか?」


「それが通常よりも巨大なロックベアーを見かけたっていう情報が入ってるんだよ。万全を期すためにもランク5の人についてきて欲しいんだ。報酬はたんまり出すからさ。いいだろ?」


 別にお金に困っているわけではないが、お金はたくさんあっても損はしない。何よりロックベアーを倒すだけで報酬が貰えるのだ。これほど割の良い依頼はない。

 そう思って私は依頼を受けた。



「ふぅ、こんなものかな」


 私は依頼を受けたチームと共にロックベアーを狩った。5頭ほど狩ったがそれほど大きなロックベアーはいなかった。


「どこに巨大なロックベアーがいるんですか?」


「もう少し森の奥だな。そいつを狩ったら今日は終わりにしよう」


 私はその言葉を疑わなかった。

 私たちは森の奥へと進んだ。奥に進んでいるのに魔物の気配が少なくなっていく。

 少し開けた場所に出た瞬間、私が発見したのは巨大なロックベアーなどではなかった。

 そこには腕の部分が赤く、通常のゴリラよりも一回り大きいレッドゴリラがいた。


 やばい! 今の私達では太刀打ちできない。私は振り向きチームのみんなに退くように指示を出そうとした。しかしそこにはチームのみんなはいなかった。

 私は1人置いていかれた。

 

 レッドゴリラは私を見るなり大木ほどの大きさの腕で殴りつけてきた。私は光魔法で盾を作るも一瞬で壊されてしまった。立て続けに放つパンチ。盾を作り必死に逃げるも、一発のパンチが盾を貫き私に当たった。


 私は吹き飛び木に激突する。あばらが何本か折れてしまったのか痛みでうまく動くことができない。

 レッドゴリラは容赦なく迫ってきた。私は風魔法を左に放ち右へ吹っ飛んだ。


 その後レッドゴリラは無闇に突っ込んで来なかった。私の予備動作のない動きを警戒しているようだった。


 私はここぞとばかりに魔法を放った。右側には火魔法を、左側には水魔法、そして正面には光魔法を。

 左右から放たれる魔法にレッドゴリラは困惑していた。全ての魔法を弾くも、攻撃する余裕はないようだった。


 私は背後に回らせた火魔法の後に正面から光魔法の剣を飛ばした。

 レッドゴリラはそれをジャンプしてかわす。

 私はその瞬間を見逃さなかった。密かに上空に放っていた光魔法と風魔法を混ぜた魔法をレッドゴリラの首元目掛けて放った。

 レッドゴリラの首が落ちる。


 なんとか危機を乗り越えた。そう安堵したのも束の間だった。私とレッドゴリラの戦いを見ていたチームのメンバーが急に現れたのだ。


「こいつを倒すとは流石だな」


「言っただろ。レッドゴリラじゃないとこのお嬢ちゃんに傷を負わせることなんて出来ないって」


「ああ、正解だったよ」


 どういうこと? 


 チームのメンバーは私の両手両足を縛り上げる。


「こんなに戦える女を闘技場に売れば相当な額になるぞ! レッドゴリラも回収できたし最高の結果だ!!」


 まさか始めから計画していたの?


「さっさと行こうぜ! レッドゴリラの仲間が来たら大変だからな」


 怒りが湧き上がってくる。

 しかし私は抵抗しなかった。骨は折れ、魔力も尽きているのだ。抵抗したところで今の私じゃ敵わない。何より私はなんで生まれてきたのだろうという考えがずっと頭の中から離れなかったのだ。

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