ダイヤモンドダスト
シャルルは右手から火魔法を放つ。火は小さな魚になった。
小さな魚は空中を自由に泳ぐ。
観客から小さな拍手が生まれる。
シャルルは左手で観客の頭上に水魔法で川を作り出した。
嘘だろ? そんなことができるのか??
観客は盛り上がる。
しかし見せ場はここからだった。
小さな魚はなんと観客の頭上にある川を泳ぎ始めたのだ。
観客が歓声を上げる。
川の終着点は滝になっていた。魚は滝を登っていく。次第に魚は大きくなっていき、川を登りきった瞬間、龍に姿を変えた。
観客の盛り上がりは最高潮になる。
龍は観客の頭上を飛びながら氷の息を吐き出す。それは雪になり観客に降り注いだ。
その後龍は高い場所でとぐろを巻き太陽のように輝き始めた。先程の雪も龍が放つ光を受け輝く。それはまるでダイヤモンドダストのようだった。
・・・・・・
優勝はシャルルだった。シャルルは嬉しそうに優勝商品のカニを受け取る。祭りは大盛り上がりで幕を閉じた。
・・・・・・
「おいしい〜〜!!」
シャルルがカニを頬張る。
くっそー! 今回こそは勝てると思ったのに。俺は2位という結果だった。エマが3位だ。
「まあ私に勝つには10年早いわね!」
シャルルがドヤ顔をする。
・・・・・・
次の日、俺たちは朝一にモルディング村をでた。
今乗っている馬車は3つ先の村に行くらしく、そこまで乗せてもらうことにした。
エマは次の村で降りて、アブドヘルムへ向かうらしい。
馬車が止まった。
「これ、ガルムさんに渡しといてくれ。君のことも紹介してあるから」
俺はエマに手紙を渡した。
「ありがとう! ヒロトとシャルルさんと一緒に冒険ができて本当に楽しかった。またアブドヘルムによった時は私にも声をかけてね」
「当たり前だ!」
「もちろんよ!」
「本当にありがとう! またね」
そう言ってエマは馬車から降りた。
馬車が進む。俺たちはエマが見えなくなるまで手を振り続けた。
・・・・・・
「また2人になったな」
「そうね」
「今回は泣かないんだな」
「泣かないわよ!」
その時だった。
盗賊がいきなり襲ってきたのだ。俺とエマはすぐさま背中合わせになり光の壁を作る。
盗賊は光の壁に阻まれた後、森の中へ消えていった。
「やるわね、ヒロト」
「まあな」
嬉しい! やっとシャルルに認めてもらえた気がする。
その後は盗賊に襲われることなく、無事村についた。馬を休ませるために2時間ほど村に滞在することになった。
「この村は静かだな」
「今までが騒がしかっただけよ」
確かにそうかもしれない。
しかし何かがおかしい。いくら静かな村だとはいえ、村人たちの行動に違和感を感じる。
「シャルル、この村で一泊しよう」
「急に何言いだすの?」
「この村は何かおかしい。一泊して様子を見よう」
シャルルはため息をつく。
「はぁ、分かったわ」
「え、いいのか?」
「いいわよ。さあ、早く馬車の人に謝ってきて! 私は宿屋の予約をしてくるから」
びっくりした。説得にもっと時間がかかると思った。
どうしたんだろう、体調でも悪いのか?
まあ許可してくれたんだし、ここはシャルルに甘えるか。
・・・・・・
「どうしてこの村で一泊しようと思ったの?」
宿屋でシャルルが話しかけてきた。
「村人の様子がおかしいな、と思って」
「えっ、本当にそれだけ?」
「ああ」
「はぁ、明日にはこの村を出るからね」
「分かってる。
そういえば、この村はなんていう村なんだ?」
「この村に名前はないわ」
名前がない?? どういうことだ???
「100年前の話を知らないの?」
「ごめん、知らない」
「何にも知らないのね」
面目ない。
「昔、この土地では7カ国が戦争をしていたの。戦争は過激なものだったわ。血で血を洗う争いがつづいていたんだけど、ある1人のおかげでその戦争は終わりをむかえたわ。
その人は1人で国が従えていたドラゴンを倒し、戦争中の軍隊を半壊させたの。おかげで戦争は終わったんだけど、国境の村や街はどちらの領土か決めることができず、未だに名前がついていないってわけ」
「でも7カ国もあったんだろ? 全ての国が戦争をやめたのか?」
「やめたわよ。だってその人、次に戦争を始めた国は潰すって宣言したもの」
すごい人だな。
「それじゃあ領土も決められないよな」
「今までだと・・・闘技場のあった街とその次の村、そしてこの村が名前がないかな。
名前のある街や村よりは少し治安が悪いわね。何かあっても国から軍隊などが派遣されるわけじゃないから」
「じゃあ闘技場があった街の締罰隊はなんなんだ?」
「あれは慈善団体なのよ。市民の税金で動いているの。だから対応も雑だったでしょ」
そのせいで俺は剣闘士にされたのか。
「闘技場は誰が仕切ってるんだよ?」
「分からないわ。
闘技場は70年ほど前に急にできたの。誰が建てたのかは分からないのよ」
そうなのか。分からないこともあるんだな。
「で、この後どうするの?」
「そうだな、少し村を見てまわるとするよ」
「はぁ、分かった。私も一緒に行くわ」
「助かる!」




