モルディング祭
2日後、俺たちはクラト村での修行を終えて次のモルディング村へと向かっていた。
道中、森でモモンガに出会った。
かわいい、が油断はしない。こいつも危険な魔物に決まってる。
モモンガがこっちに向かって飛んできた。
「危ない!」
俺が叫ぶ。
シャルルはモモンガをキャッチする。
「どうしたの、ヒロト? エアモモンガは人懐っこいから大丈夫よ」
そう言ってシャルルはモモンガの頭を撫でた。
あ、今回はそういうパターンですか。
・・・・・・
モルディング村に着き、馬車から降りると村人らしき男の人が話しかけてきた。
「兄ちゃん達、今この村に来たのはラッキーだね」
「何かあるんですか?」
俺が尋ねると
「明日からこの村でモルディング祭が始まるんだよ。ここらへんでは結構有名なんだぜ。
優勝商品はこの村で獲れるカニだ」
シャルルが反応する。
「ここらの海は魔物が少ないんだ。だから珍しい海産物がいっぱいあるぜ。あの奥の店だ」
なんだ、店の宣伝か。急に話しかけてきたからびっくりした。
「兄ちゃん達、明日の祭りで優勝出来なかったら是非うちの店でカニを買っていってくれ」
そう言って男の人は去っていった。
最後はもう自分の店って言ってたな。面白いおっさんだった。
シャルルが急に俺とエマの肩を掴んだ。
「どうした?」
「明日の祭り、絶対優勝するわよ」
始まった。食べ物のこととなるとすぐこれだ。
「はい!」
エマが元気よく返事をする。
これは俺も参加しなくちゃいけない流れだな。修行の続きをしようと思っていたのに。
・・・・・・
俺たちは宿屋の予約を終えた後、すぐに明日の祭りの参加申し込みに向かった。
モルディング祭とは簡単に言うと、魔法で何かを作り披露する祭りらしい。
前回の優勝者の作品は水魔法で作ったドラゴンらしく、ドラゴンは観客の上を飛んだらしい。いわば魔法を使ってのパフォーマンスってことだ。
「魔法で何かを作るには魔力操作の力が必須だわ。これはいい修行にもなる。
ベスト4に入らなかったものはペナルティーを課します」
「優勝じゃなくていいのか?」
「優勝は私だからベスト4でいいわよ」
どこからその自信が溢れてくるんだ?
「それじゃあ各自で明日に備えるように」
そう言ってエマは先程話した男の人の店へ向かった。
あいつ、珍しい海産物って言葉に惹かれたな。
「ねぇ、ヒロト。ペナルティーって何かな?」
エマが心配そうに聞いてくる。
「さあ、筋トレとかじゃないか。
そんなにびびることはないと思うけどな」
「ヒロトはいいよね。魔力操作上手だもん。
私苦手なのよね、魔力操作」
「そうなのか。
じゃあちょっとだけ一緒に練習するか?」
「いいの?」
「ああ、いいぜ!」
「やったぁ!」
エマは手を挙げて喜んだ。
・・・・・・
「魔法を足から出せるか?」
「足から? そんなことできないわよ」
「やったことはあるか?」
「ないけど・・・」
「一回やってみて」
「分かった」
エマが足を少し上げる。エマの足から風が吹く。
「できた! でも靴を履いてるのになんで風が生まれんだんだろう?」
「エマが靴を体の一部と認識していたからだよ。武器に魔力を込めることだってできるだろ、それに似た感じかな」
「なるほど」
「よし、後は魔力が自分の体のどこを通っているかを意識していけば魔力操作が上達すると思う」
「ありがとう!
ヒロト、一回魔法で何か作ってくれない?」
「いいぜ! 元々何を作るか考えていたんだ。俺のをみて真似するなよ」
俺は火魔法を放った。火は集まって1匹のライオンをかたどった。そう、フレイムライオンだ! これから立髪をより細かく、リアルにしていく予定である。
エマは俺のフレイムライオンを見て固まっている。
どうやら想像していたよりも凄かったようだ。
エマは「私、練習してくる」と言って、すぐに去っていった。
我ながら上出来の作品である。
いける、これなら優勝を狙える! シャルルにひと泡ふかせられるぞ!!
流れで参加することになった祭りだが、明日が待ち遠しくなっていた。
・・・・・・
大会の参加者は俺たちを含めて8人だった。しかし村人や商人など多くの人が集まっていて、広場には人が溢れている。参加者は全員冒険者で、ランクはシャルル以外4、5だった。
順位は村長と、この村で昔から商売をしているデビッドさんの独断と偏見で決められるらしい。優勝商品はもちろんカニなのだが、普通に売っているカニよりも一回り大きく特別なカニらしい。
大会が始まった。
俺は7番だ。参加者達が魔法で様々なものを作っていく。鳥、熊、ウサギに魚など、どれも完成度が高く観客は歓声を上げる。5番目の人は氷の塔を作り出した。
歓客は息を呑む。それほどまでに素晴らしい作品だった。
この後はエマの番だ。
あの氷の塔の後はかわいそうだな。
しかしそんな気遣いはいらなかった。
エマは巨大クラーケンを作り出したのだ。
観客は歓声と悲鳴を上げる。インパクトは1番だった。
エマが俺の横を通り過ぎる時に「どう?」と笑っていってきた。
やるじゃないか! だが優勝は俺が貰う!!
遂に俺の出番になる。
よし、やるぞ!
俺は火魔法を放った。火は集まってフレイムライオンを作り出した。
できた! 立髪までばっちりだ!
フレイムライオンが完成した瞬間、観客は歓声を上げる。しかし先程のクラーケンよりも反応は薄かった。
さぁ、ここからだ!
俺はフレイムライオンを観客の頭上まで移動させた。
観客が盛り上がる。
フレイムライオンはどんどん高く登っていく。
そして吠える素振りを見せて爆発した。
ボガァン!!
爆発した煙の中から光の粒が落ちてくる。それは宝石が雪のように降ってくるようだった。
観客は今までで1番の盛り上がりを見せた。
よっしゃ! フレイムライオンの中に強度の低い光の盾を混ぜる。完璧な作戦だ!
俺はシャルルを見た。シャルルはにこやかに拍手をしていた。
なんでそんな余裕があるんだ? これ以上のものを考えてきたというのか??
シャルルは余裕の態度で、俺と入れ替わった。
祭りのラスト、シャルルの番が始まる。




