足りないもの
その後も俺たちはフレイムライオンに挑み続けた。
しかし、何度やってもフレイムライオンの連携を打開することが出来ず、その日は何も進展がないまま村へ戻った。
「おかえりなさい、2人とも」
シャルルが部屋で料理を作って待ってくれていた。
「おいしい、おいしいです! シャルルさん!!」
エマがシャルルの料理に感動する。
料理に対してうるさいシャルルだ、作ることにもこだわりがあるのだろう。実際、シャルルの料理はお世辞なしに美味い。
「ありがとう! どうだった、フレイムライオンは?」
「まあ、余裕だな。明日で倒せるよ」
「嘘ですよ。全く歯が立ちませんでした」
余計なことを言うな!
「苦戦しなくちゃ課題にならないわ」
シャルルは笑いながら言う。
「とにかく、今の自分たちに何が足りないのかをしっかり考えなさい!」
「干渉しないんじゃなかったのか?」
「う、うるさい! 今のは特別よ!」
シャルルは顔を赤くする。
エマは俺たちをニヤニヤしながら見ていた。
・・・・・・
次の日、俺とエマは今日も森へ向かった。もちろん、フレイムライオンを倒すためだ。
昨日、エマが言っていた今の俺たちに足りないものをあの後ずっと考えていたが、さっぱり分からなかった。
今日もフレイムライオンに挑み続けたが、ただただ引き返すだけだった。
「やっぱり無理だよ。あんなに陣形を整えられてちゃ勝てないに決まってるじゃん」
エマは今日もため息をつく。
「ため息をつくと幸せが逃げてくぞ」
「何それ? じゃあ私いっぱい幸せを逃してるじゃない!
幸せを戻さないと!」
エマはそう言うと、大きく息を吸い込み始めた。
まあ、エマが言うこともわかる。あそこまで構えられていたら切り崩せない。連携も完璧ときてる。1、2匹倒すだけじゃダメだ。一気に陣形が崩れるような・・・
「分かった!」
「うわっ! もう、急に大きな声を出さないでよ」
エマが怒る。
「で、何が分かったの」
「俺とエマに足りないものだ!」
・・・・・・
俺たちはフレイムライオンの群れの前に来た。
「今回の俺たちは一味違うぜ!」
俺はそう言って、木刀を取り出した。木刀に魔力を通わせ、硬くする。
そして風魔法を木刀に放った。風は木刀を中心に竜巻のように回転している。俺は風魔法を放ち続けた。竜巻はどんどん大きくなっていく。
フレイムライオンは俺を危険だと察知したのか攻撃してきた。エマが俺を守る。
「まだ準備終わらないの??」
エマはフレイムライオンと戦いながら言う。
「もう少しだ!」
俺は風魔法を放ち続ける。風は木刀を中心に1メートルほどの竜巻に成長した。俺はそれを制御し、半分の大きさにした。
「エマ! もういいぞ!!」
エマが俺の後ろに下がる。
「これでもくらえ!!!」
俺は全身に残りの魔力を通わせフレイムライオン達に向かって渾身の突きをした。
ゴォォーーーー!!!!!
竜巻が全てを蹴散らす。
よっしゃ! これで陣形も崩れただろ!!
「作戦通りだ! エマいくぞ!!」
「うん! ってあれ? フレイムライオン1匹もいなくない?」
・・・・・・
「ダメ、それ面白すぎる!」
シャルルはずっと笑っている。
俺たちは大技で陣形を崩してから、各個撃破するという作戦を立てていた。しかし大技でフレイムライオンは全て吹き飛んでいってしまったのである。
あの大技は10メートル先まで地面をえぐり、直線上にあったもの全てを吹き飛ばした。
そのことをシャルルに伝えてからシャルルはずっと笑っている。
「もういいだろ! 笑うなよ」
「だって全部吹き飛ばすって。どうせ可能な限り魔力を注ぎ込んだんでしょ」
うっ、ごもっともだ。
「まあ、放った後の戦いの為の魔力を残しておいたのは偉いと思うわ。でも全部吹き飛ばしたら作戦の意味ないじゃない」
そう言ってシャルルはまた笑い出した。
くっそー、なんか悔しい。
「はぁ、笑った。
それでそれぞれに足りないことは分かった?」
「ああ、俺には必殺技が足りなかったんだな」
「私は自分も戦うことですね」
「うん、よろしい。
ヒロトには大技も時には大切ってことに気づいて欲しかったの。隙も大きいけど戦局を一気に変えることもできるわ。まあ、必殺技でも間違いじゃないわね。その技なら」
そう言ってシャルルはまた笑った。
馬鹿にしやがって!
「エマには自分で戦う意識を持って欲しかったの。
勝てるか分からない相手とも勝負しなくちゃいけない時はいっぱいあるわ。そんな時でも諦めずに考えて、勝ちを掴まなくちゃいけない。
女性冒険者は舐められることも多いから、自分のことをしっかり主張することもこれから大事になってくるからね」
「シャルル姉さん!!!」
エマはシャルルに抱きついた。
「さあ、明日は今日のことを意識して森で修行するわよ!
そして明後日にこの村を出ましょう」
「おう!」 「はい!」




