フレイムライオン
俺たちは昼頃にコーラルの街を出た。
アブドヘルムに行くまで、エマは俺たちと一緒に冒険することになった。
「シャルルさんと一緒に冒険できるなんて嬉しいです!」
エマはそう言って喜んでいた。
今向かっている場所はクラト村という場所で、コーラルの街を訪れる際に、冒険者達がよく通るので活気あふれる村らしい。
クラト村には2時間ほどで着いた。
今回は宿屋も空いていて、俺がシングル一室、シャルルとエマがダブル一室を借りた。
宿屋で部屋の予約を終わり、外に出た時、エマがシャルルに言った。
「シャルルさん、私に修行をつけてくれませんか?」
リュードもガルムさんに言っていたな。
シャルルは「いいわよ!」と言った。
「それじゃあ早速、森に行きましょう」
・・・・・・
俺はシャルルやエマと分かれて、昨日気づいた魔力を全身に巡らせて戦う練習をした。
エマはシャルルに魔法の使い方や魔力のコントロールを教えてもらっていた。
その日は普通に終わった。
問題は次の日だった。
シャルルは俺とエマに課題を出したのだ。
「この森の奥にいるフレイムライオンの群れを倒してきなさい」
「フレイムライオンの群れなんて倒せませんよ⁉︎」
エマが驚いて言った。
「じゃあ修行は終わりね」
「そんなぁ・・・」
「期限は2日後の午後5時まで。私はこれから一切干渉しないから2人で頑張ってね」
そう言ってシャルルは村へ戻っていった。
2日も時間をくれるのか。
「フレイムライオンって強いのか?」
「ヒロトって何にも知らないのね。
フレイムライオンの群れを倒せると言われてる冒険者ランクは3なのよ」
そうなのか。ということは今回の課題をクリアすればシャルルに一歩でも近づけるってことだな!
「よし、じゃあ行くか!」
「えっ! 話聞いてた?」
俺は森の奥に向かって足を進めた。
「ちょっと待ってよ!!」
・・・・・・
いた! たぶんあいつらだな。
俺は茂みに隠れながらフレイムライオンを観察した。
フレイムライオンは思っていたより大きくはなく、メスはライオンというよりオオカミに近かった。どのライオンも尻尾が燃えている。しかし、中心にいるオスだけは違った。立髪が猛々しく燃えていて、周りにいるライオンより一回りも身体が大きい。
確かにあいつを倒すのは骨が折れそうだ。
大人が12匹と子どもが7匹か。奇襲は通じなさそうだな。
「エマはここで待っておいてくれ」
俺は木刀を取り出しそう言って、堂々と茂みから出た。エマが驚く。
ライオン達は俺に気づき、臨戦態勢をとった。
俺は木刀に魔力を込めて、構えた。沈黙が数秒続く。
ライオンが二頭、飛び出してきた。
俺はいつも通りカウンターを狙う。しかし、ライオンは違う方向から同時に攻撃を仕掛けてきた。
これではカウンターができない。
しまった!
風魔法が片方のライオンを吹き飛ばす。俺は即座にもう片方のライオンにカウンターを決める。
エマが茂みから出てきていた。
「ヒロト! 一度引くわよ!!」
エマが叫ぶ。ライオン達は次の攻撃の準備をしていた。
俺はエマに従い、ライオンに背を向けた。
ライオン達は追ってこなかった。
・・・・・・
「ヒロトって本当に何も知らないのね」
エマがため息をつきながら言う。
「ごめん」
俺は反省していた。自分の軽率な行動に。
「フレイムライオンがなんでランク3に指定されているかというと、あの連携があるからなの」
エマはもう一度ため息をつくと、
「まあ、ヒロトの実力なら一対一でフレイムライオンには負けないと思うわ。でもそんなに簡単じゃないの」
確かに、あの連携は厄介だ。今まで複数の盗賊や魔物と戦ったことはあったが、あれほど同時の攻撃はなかった。多少はタイミングをずらして攻撃するものである。そうしなければお互いを邪魔してしまう可能性があるからだ。
しかしあのライオン達は違った。全く同時だった。どうすれば打開できるんだ・・・
「フレイムライオンは倒せないわ。シャルルさんに言いに行きましょ」
エマは村へ戻ろうとした。俺がそれを止める。
「待ってくれ、あと2日もある。諦めるには早すぎる」
「早すぎるって、今の私達じゃ勝てないわ」
「そんなことは分かってる!
でも、シャルルは無意味な課題を出さない気がするんだ。きっとフレイムライオンを打開できる方法があるはず」
エマはまたため息をついた。
「はぁ、分かった。でも私は戦えないわよ」
「ありがとう、エマ」




