これから
シャルルとエマの視線が重なる。
「えっ!!」
エマが急に大きな声を出した。
「シャルルさんですか?」
エマとシャルルは知り合いなのか?
シャルルを見ると、私は知らないというように首を振った。
「冒険者ランク3のシャルルさんですよね?」
エマがシャルルに詰め寄る。
「ええ」
「すごいっ! 生シャルルさんだ!!」
生シャルル?? どういうこと?
・・・・・・
俺たちは宿屋の部屋にいる。
俺はエビフライを作り、エマとシャルルは話をしていた。話の内容は、エマがシャルルに今までどういう旅をしてきたのかを聞き、シャルルが答えるというものだった。
「レッドゴリラを1人で倒したって本当なんですか?」
「ええ、本当よ」
「すごい! どうやって倒したんですか?」
「レッドゴリラは無駄に知能が発達しているのよ。
だから一度、死角から放たれた攻撃に対して異常なほど警戒するの。他に敵が隠れているかもしれないとかね。
だから魔法を遠回りさせて死角から放つの。全て止められるけど放ち続ければレッドゴリラの注意が散漫になる。そのうち集中力に限界がきて隙を見せるから、そこをつけばいいだけよ」
「すごい・・・!」
エマは尊敬の眼差しをシャルルにむける。
「盗賊団を壊滅させたり、冒険者ランク2の人がリーダーのパーティーの勧誘を蹴った話も本当なんですか??」
「そんなこともあったわね」
シャルルを見るエマの目は輝いていた。
「エビフライ、できたぞ」
俺は机にエビフライを持っていく。
シャルルの目が輝く。
「やっと食べられるのね、エビフライ!」
シャルルの口からよだれが溢れる。
「こんなやつが本当に凄いのか?」
俺がエマに聞く。
「当たり前じゃない!
シャルルさんは女性で唯一の冒険者ランク3の冒険者なのよ! 女性の冒険者の中では有名人なんだから!!」
シャルルはエビフライを食べながらも顔を赤くした。
やっぱり褒められ慣れてないんだな。
「元々はジェシカさんっていう女性冒険者もランク3で、シャルルさんと同じくらい人気だったんだけど、1年ほど前に亡くなってしまったの」
シャルルのエビフライを食べる手が止まる。
「どうした?」
俺がシャルルに聞くと、
「ううん、なんでもない」
と、シャルルは答え、またエビフライを食べ始めた。
「でも、今までエマみたいな奴は現れなかったぞ」
「まあ、そうよね。冒険者はほとんど男だし、みんなが注目するのはランク1と2の上位陣だけだもの。
でも、私みたいなランク5以上の女性からしたらシャルルさんを知らない人はいないと言ってもいいわ!」
エマが得意げに言う。
シャルルの顔は真っ赤だった。
「そういえば、リュードもガルムさんに会って喜んでいたな」
「えっ! アブドヘルムのガルムさんに会ったの?」
エマが急に大きな声を出した。
「ああ、会ったぞ。また会いにいく約束もしてる」
「ほんとに? 私、ガルムさんに会うためにアブドヘルムへ向かっている途中なの」
「ガルムさんもすごい人なのか?」
「すごいなんてものじゃないわよ!
ガルムさんは冒険者ランク1の実力を持っているのよ」
嘘だろ! あの人そんなにすごい人なのか。
「でも、素行が悪い人だったの。だから冒険者ランクはずっと3だったわ。
そこがまたカッコいいって冒険者の間ではすごい人気だったんだけど、アブドヘルムの王様に出会って変わっちゃったらしいの。すごく優しい人になったとか。
だからアブドヘルムにはガルムさんに修行をつけてもらおうと多くの冒険者が訪ねにいくのよ」
知らなかった。そんな人と俺は普通に話していたのか。
ていうか俺、知らないことばかりだな。
「ヒロト、おかわり」
シャルルは10本以上あったエビフライを1人で食べきったようだ。空のお皿を俺に渡す。
「へいへい」
俺はエビフライをもう一度作り始めた。
・・・・・・
昨日のエビフライは好評だった。エマもシャルルも「おいしい」と言いながら食べてくれた。
少しだけ弟のことを思い出してしまった。いつも俺の料理をおいしいと言って食べてくれたな。
エマは食事が終わった後、元々自分が予約していた宿屋に帰った。
俺は森でテントを張って寝ようと、部屋を出ようとしたら、
「どうしたの? 寝ないの?」
とシャルルに止められたのだ。
俺は一瞬固まってしまったが、
「お、おう」
と言ってベッドに入った。
もちろん、隣でシャルルも横になっていた。
だから、昨日一睡もできなかったのはしょうがない。
うん、しょうがない。
「ねえ、ヒロト」
「どうした?」
「ヒロトはこれからどうするの?」
どうするのって言われても、特にしたいことなんてないしな。
「まあ、適当に旅を続けようかなと思ってるけど」
「私もついていっていい?」
どうしたんだこいつ? いつになく真剣な顔をして。
「もう少しヒロトのことを見てみたいの」
まあ、断る理由もないし、昨日のことで俺にはこの世界について知らないことがまだまだあることを知った。
シャルルがついてきてくれるのなら、これほど心強いことはない。
なにより、そんな事を言われて嬉しくないわけがない。
「ああ、いいぜ! こちらからもお願いするよ」
「ふふっ、やっぱりヒロトって変わってるのね」
シャルルは笑った。




