デート
俺は森へ向かった。試してみたいことがあったのだ。
街を出て、近くの森の中に入る。
見た感じ魔物がいた形跡はなさそうだ。ここなら大丈夫だな。
俺は魔力を全身に巡らせた。そして少しだけ多く足に魔力を集中させる。
俺は目の前の木に向かって飛び込み、蹴りを入れる。
木は真っ二つに折れた。
できた!
ただ普通に木を折っただけだが、これが今までは出来なかった。
なぜなら、今まではこの距離だとスピードがつき過ぎて蹴りを入れる動作をする前に木にぶつかってしまっていたからだ。
しかし、全身に魔力を巡らせることで、スピードと体の調節ができるようになり木を折ることができた。
これで戦闘の幅が広がるぞ!!
俺は1人でガッツポーズをしていると、
「用事ってこのこと?」
振り返るとエマがいた。
エマは息を切らしていた。
「ヒロトって女の子と付き合ったことないでしょ」
ち、ちがう! 今まで付き合おうとしなかっただけで、付き合おうと思えばいつでも付き合えた。
と、心の中で叫ぶ。言ってしまったら余計惨めな気持ちになるような気がしたから。
「じゃあ、今から私とデートしましょ!」
えっ?
「どうしたの? 固まっちゃって。
ヒロトって可愛いのね」
なにっ! 馬鹿にしやがって。
「ああ、いいぜ! デートぐらい余裕だよ。
そのかわり今日は用事があるから5時までだからな」
「ヒロトって、変わってるのね」
前にも誰かに言われた気がする。
サナは俺の手を握ってきた。
俺は顔が赤くなるのを感じる。
「どうしたの? 顔、赤いよ」
サナはニヤニヤしながら俺をみる。
くっそー! 今に見てろよ!!
・・・・・・
「ヒロト! これ可愛くない?」
エマはクラーケンのキーホルダーを持つと言った。
いや、俺たちそいつに殺されかけたじゃないか。
「かわいいね」
また顔が赤くなる。
くそっ! 恥ずかしい。
しかしサナに馬鹿にされたままなのは悔しい。
完璧なデートをして、サナにギャフンと言わせてやる。
おっ! いいのを見つけた。
「これカッコよくないか?」
「えっ、かわいい!!!」
かわいい? 俺は自分が手にしたものを見た。
俺はなまこのぬいぐるみを持っていた。
間違えた! サメのぬいぐるみを掴んだつもりだったのに。
しかし、エマの評価は結構良かった。
「かわいい・・・」
エマはなまこのぬいぐるみを触りながら言う。
そうか? なまこにくりっとした目とばつ印の口がついてるだけじゃないか。
まあ、エマが気に入っているのならいいか。
「これ買ってやるよ」
「いいの? じゃあ私はクラーケンのキーホルダーを買ってあげる。お揃いにしよ!」
でた、お揃い!
恥ずかしいが、恥ずかしがる素振りを見せてはいけない。
「分かった。お揃いな! ありがとう!」
「ふふっ!」
エマは笑っていた。
俺、おかしな事言ったかな?
その後もエマと街を観光した。エマはこの街に結構詳しくて、いろいろなことを教えてくれた。中でも、街の高台からの景色は絶景だった。
夕陽が海を照らし、帰ってくる船に影が射す。
「すごくいい場所だな」
「そうでしょ! 良かった、この景色をヒロトと見れて」
俺は高台から見る海の景色に感動していた。
船が奥の方から増えていく。きっと漁が終わったのだろう。
「そろそろ5時だな。今日は楽しかったよ、ありがとう!」
俺が言うと、サナが聞いてきた。
「ちなみに用事ってなんなの? まさか修行とか言わないわよね」
「違う、違う。知り合いにエビフライっていう料理を振る舞う約束をしてて」
「エビフライ?」
「そう、エビフライ。美味しいんだぜ」
「エビフライ・・・ 聞いたことないな。
私も、そのエビフライってやつ、食べに行ってもいい?」
まあ、シャルルがエビを大量に獲ってくるだろ。1人増えたところで変わらないか。
「ああ、いいぜ!」
「やったぁ!」
エマは無邪気に喜んでいた。
「そうと決まればエビフライの材料を買いに行くぞ!」
俺たちは高台を降りて市場へ向かった。
・・・・・・
「あとは卵だけだな」
俺はエマに手伝ってもらいながらエビフライの材料を買い集めていた。
漁から帰ってきた冒険者たちが船から下りる。市場は人で溢れかえってしまった。
「エマ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫!」
「ヒロト?」
人混みの中からシャルルが現れた。
「シャルル! 今、エビフライの材料を買ってたんだ」
「ヒロト早いよ」
人混みから抜けるようにしてエマが現れた。
「えっ、誰その女」
「えっ、ヒロトの知り合いって女の人なの⁉︎」
えっ、あんまり良くない感じ?




