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水色のガーベラ


 余はおかしくなってしまった。

 他人の為にこんなに汗を流したり、他人の辛い気持ちが自分のことのように辛く感じる。

 

 今思えば、全てノザキヒロトのせいだ。

 初めてノザキヒロトを見た時、彼は周りから馬鹿にされていた。闘技場でロックベアーと向かい合う彼は、とてもひ弱に見えた。

 ガルムが見たいと言うから来てみたが、どこが面白いのかわからなかった。

 しかし、周りの予想を覆して勝利した彼をみて気持ちが昂ったのと同時に、自分の生き様が恥ずかしくなった。自分1人では何一つできないのに、周りに威張り散らす自分の生き様が。


 この女の子の命があと少しで終わると分かった時、この子の力になりたいと思った。だが余には力がないことを思い知らされるだけだった。

 

 目の前の小さな女の子は、母親を呼んだ。


「お母さん」


 母親が部屋に入ってくる。娘が手に持つ水色のガーベラを見た瞬間、母親は泣いてしまった。


「これ、お母さんに。

 私は採りに行けなかったから、グランに採ってきてもらったの。

 お母さん、いつもありがとう」


 母親は涙を流しながら何度も頷く。

 母親は涙でぐしゃぐしゃになった顔で笑顔を作り、水色のガーベラを受け取った。


「ありがとう」


 その瞬間、少女は倒れそうになった。

 余は彼女を支え、ベッドに乗せた。


「クロエ、これは余からの贈り物だ」


 余はもう一本の水色のガーベラを渡した。


「わぁ、嬉しい」


 クロエは笑顔になる。


「グランにお願いがあるの」


「なんでも聞こう」


「お母さんを、この家じゃないところに、連れて行ってあげて欲しいの。私は、お父さんのところに行くから、1人じゃないけど、お母さんは、1人になっちゃうから、1人じゃないところに連れて行ってあげて」


 クロエは途切れ途切れに、しかしはっきりと言った。


「分かった。約束する」


「グラン大好き」


 そう言ってクロエは目を閉じた。


 クロエの握る水色のガーベラに涙が落ちて、綺麗な反射を見せる。水色のガーベラはキラキラと輝いていた。



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