スライム
昼を過ぎても水色のガーベラは見つからなかった。
リュードが呟く。
「オリビアさんの夫、白いガーベラに青色の絵具を塗ってオリビアさんに渡したんじゃないですか?」
それを聞いたガルムが怒った。
「そんなわけないだろ!! オリビアさんが認めた男の人だぞ!!!」
えっ、そんなに怒る? 王子は気にせず探している。
リュードは「すいません!」と謝ったが、ガルムの説教タイムが始まった。
いや、オリビアさんがいかに素晴らしい女性かをガルムは語り始めた。
ガルムさん、オリビアさんに惚れてるな。
でも確かに、これだけ探しても見つからないのだ。人工的に作ったんじゃないかと疑うのも分かる。
人工的???
「それだ!!!」
俺はリュードを指差して言った。ガルムが怒る。
「いくらノザキヒロトでも怒るぞ!」
「違う、違う! 水色のガーベラは作られたものだったんだってこと」
今まで俺たちの会話を無視していた王子が話しかけてきた。
「どういうことだ?」
「ガルムさん、スライムって倒せますか?」
「アニキ、スライムは倒せないって、さっき言ったじゃないですか」
「いや、倒せるぞ。凍らせればいいんだ。そして凍ったスライムを割れば・・・」
どうやらガルムさんも気づいたようだった。
「そういうことです!」
「ノザキヒロト、この森でスライムは見たか?」
「はい! 朝出会いました」
王子が俺の肩に手を置き言った。
「でかした!! すぐに連れて行ってくれ!!!」
リュードはついていけてない様子だった。
「みんな何で盛り上がってるんですか? 俺にも教えてくださいよ!!!」
・・・・・・
俺たちは朝スライムと出会った場所へ向かった。
道中、俺はリュードに水色のガーベラの正体を説明した。
「実は水色のガーベラは自然には存在しないんだ」
「えぇっ! じゃあ俺たちは今、何を採りに行ってるんですか?」
「自然には存在しないだけで、人工的に作られたんだ」
「どういうことですか?」
「スライムを苗床に混ぜたんだよ」
「スライムをですか???」
「ああ、スライムを混ぜることでガーベラの色がスライム色、水色になったんだ」
「なるほど! そういうこと。アニキ、よく分かりましたね」
「オリビアさんの夫が氷魔法を使えたってことに疑問を感じたんだよ。
聞けば氷魔法は高等技術で実践的じゃないらしい。わざわざそれを覚えたのはなんでだろうなって思って。
たぶんオリビアさんの夫は、オリビアさんに水色のガーベラを渡す為だけに氷魔法を習得したんだ」
あとは、昔店員さんが青いガーベラは人工的に作られたって言っていたのを思い出したからだけど。
「さすがアニキっす!!!」
そんな話をしていると、スライムと出会った場所に着いた。スライムはまだそこにいた。
ガルムはスライムを凍らせる。
流石だな。
奥の茂みをかき分けると、そこには水色のガーベラが10本ほど咲いていた。想像以上に綺麗なガーベラだった。水色のガーベラは半透明で透き通っている。
「よかった、残っておったか」
王子が言い、水色のガーベラを一つ摘んだ。
「スライムがずっと守っていたんですね」
俺が言うと王子はガルムに聞いた。
「あのスライムは死んでしまったのか?」
「いえ、砕かなければ自然に解凍して、また動き出すでしょう」
「そうか」
王子はほっとしたようだった。王子はもう一つ水色のガーベラを摘んだ。ガルムさんがこっそり水色のガーベラを摘むのを俺は見逃さなかった。
いつかオリビアさんに渡すのかな。
俺たちは村へと戻った。
・・・・・・
次の日、俺たちはオリビアさんとクロエの家を訪れた。
オリビアさんの目は真っ赤だった。クロエは今日で死んでしまう。それが分かっているのだ。
「その方は?」
「アニキの弟子のリュードと言います」
「少し探し物を手伝ってもらったんだ」
王子が言った。オリビアは「そう・・・」と元気なく答えた。
クロエの部屋には先に王子だけが入った。驚かせては悪いと思ったからだ。
「クロエ、水色のガーベラ見つけてきたよ」
クロエの目に少し生気が宿る。
「わぁ、綺麗・・・」
「余と一緒にこれを探してくれた者たちだ」
俺たちは部屋に入る。クロエの手は触れば折れてしまいそうなぐらい細かった。
「ありがとう!」
クロエが笑顔で言う。
俺たちは何も言えなかった。
クロエは王子にお願いをした。
「グラン、手を貸してくれる」
王子は手を貸した。クロエは王子の手をしっかり掴み立ち上がった。ふらふらとよろめく。王子はクロエを支える。
ガルムが俺たちに言った。
「俺たちは外に出ていよう」
俺もリュードも反論しなかった。
俺たちは外に出た。




